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第二章 灰色のもふもふ
治療の方法
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そうはいっても…緊張の糸が切れると、やっぱりズキズキと腕に痛みが広がってくるものだ。
…しくしくしく。
強がっていたけど…やっぱり、ちょっと痛いかもしれない。
シュナは噛まれたところを確認する。
すると右の手袋と長袖の隙間に犬歯の歯形が一か所だけついていた。それと血がじんわりと染みでているくらいか。あとは、厚手の服や手袋にガードされちょっと痣になっているだけかな。これなら大したことはない。
どうやら子犬を抱き寄せたときに服が引っ張られ、腕の皮膚が見えたときにその部分だけ運悪く噛まれたみたいだ。……これは野生の防衛本能で、子犬に悪気がないことはわかってはいる。
それに自分だって怪我をしているのに…今も一生懸命に僕の傷口を舐めてくれているのだ。まったく責めるつもりなどない。
とはいえ、この子犬だって後ろ足を怪我しているみたいだしこのままというわけにもいかない。まずは、先にできる限りの手当てをしなければ。
僕は子犬を腕から優しく引き離すと、近くの大きな岩の平らなところにゆっくりと下ろす。
「キュウ…」
大きな岩の上にちょこんとお座りをすると、子犬は僕の顔を不安そうに見上げていた。
「大丈夫だよ。傷口を確認するだけだから、ちょっとだけ我慢してね」
僕は先に、自分の腕の怪我にはポケットの裏地を裂き血止めに巻きつけておく。それから子犬の手当てに取りかかったのだ。
まずは心配はないと笑顔を向け安心させると、ゆっくりと子犬の傷の状態を確認する。
灰色な毛に血がじんわりと染みでていが、もふもふの毛の中をゆっくりとかき分け皮膚を見ると、後ろ右足を鋭利な刃物でスッパリと切られたような切り傷があった。だが幸いにも傷は一か所だけで、切断するかどうかというほどの大怪我でもない。そんなに深い傷ではないが、それでも放っておいていいものでもない。どちらにしろ手当をしなければいけない怪我だ。
こんなとき高度な治癒魔法が使えたら…と、つい項垂れてしまう。
弟のレイだったら高度な治癒魔法も使えるしこれぐらいの切り傷、あっという間に治してしまうだろう。そこまで考えて…僕は頭をぶんぶんと振る。
は! いけない…。 家族だったあの人たちとはもう関係ないんだ。そのことを考えるのはもう止めよう。今は、僕にできる最善の治療を考えるんだ。
「う~ん…」
とりあえずは僕にでも使える、初歩の治癒魔法で傷口だけ塞いでおこう。あとは、つい今しがたまで着ていた柔らかい衣装だった布きれを適度な大きさに裂いて、傷口に巻きつける。本当は添え木があればいいんだけど後で調達することも考えなくっちゃいけない。それと傷口につける薬草も必要になる。
僕は今できる手当を施しこれからのことを冷静に考え始めたのだ。
そして――できる限りの子犬の手当てが終わったら次は自分の怪我のことも考えないといけない。僕は血止めの布をほどくと、あらためて傷の状況を確認する。
右腕の肘よりも手首に近いところを噛まれているようだ。犬歯だから傷が深いのはこの際、仕方がないか…。手の甲、手首に近い部分に噛み傷がある。血はまだ少し出ているものの止まり始めているな。
裏側の静脈があるところじゃなくって本当に良かった。そこだったら、まだ出血が酷いはずだ。そして、子犬のときと同じように傷口を塞ぐだけの初歩の治療魔法を施すとまた布を巻き直したのだ。
「キャウ…?」
そんなシュナの一人百面相を見て、子犬は岩の上でさらさらと尻尾を振りながら不思議そうに小首を傾げていた。
外では吹雪になっているのか、洞窟の小さな隙間から細かい雪が風と共に入り込み闇のなかを静かに舞っていたのだ。
…しくしくしく。
強がっていたけど…やっぱり、ちょっと痛いかもしれない。
シュナは噛まれたところを確認する。
すると右の手袋と長袖の隙間に犬歯の歯形が一か所だけついていた。それと血がじんわりと染みでているくらいか。あとは、厚手の服や手袋にガードされちょっと痣になっているだけかな。これなら大したことはない。
どうやら子犬を抱き寄せたときに服が引っ張られ、腕の皮膚が見えたときにその部分だけ運悪く噛まれたみたいだ。……これは野生の防衛本能で、子犬に悪気がないことはわかってはいる。
それに自分だって怪我をしているのに…今も一生懸命に僕の傷口を舐めてくれているのだ。まったく責めるつもりなどない。
とはいえ、この子犬だって後ろ足を怪我しているみたいだしこのままというわけにもいかない。まずは、先にできる限りの手当てをしなければ。
僕は子犬を腕から優しく引き離すと、近くの大きな岩の平らなところにゆっくりと下ろす。
「キュウ…」
大きな岩の上にちょこんとお座りをすると、子犬は僕の顔を不安そうに見上げていた。
「大丈夫だよ。傷口を確認するだけだから、ちょっとだけ我慢してね」
僕は先に、自分の腕の怪我にはポケットの裏地を裂き血止めに巻きつけておく。それから子犬の手当てに取りかかったのだ。
まずは心配はないと笑顔を向け安心させると、ゆっくりと子犬の傷の状態を確認する。
灰色な毛に血がじんわりと染みでていが、もふもふの毛の中をゆっくりとかき分け皮膚を見ると、後ろ右足を鋭利な刃物でスッパリと切られたような切り傷があった。だが幸いにも傷は一か所だけで、切断するかどうかというほどの大怪我でもない。そんなに深い傷ではないが、それでも放っておいていいものでもない。どちらにしろ手当をしなければいけない怪我だ。
こんなとき高度な治癒魔法が使えたら…と、つい項垂れてしまう。
弟のレイだったら高度な治癒魔法も使えるしこれぐらいの切り傷、あっという間に治してしまうだろう。そこまで考えて…僕は頭をぶんぶんと振る。
は! いけない…。 家族だったあの人たちとはもう関係ないんだ。そのことを考えるのはもう止めよう。今は、僕にできる最善の治療を考えるんだ。
「う~ん…」
とりあえずは僕にでも使える、初歩の治癒魔法で傷口だけ塞いでおこう。あとは、つい今しがたまで着ていた柔らかい衣装だった布きれを適度な大きさに裂いて、傷口に巻きつける。本当は添え木があればいいんだけど後で調達することも考えなくっちゃいけない。それと傷口につける薬草も必要になる。
僕は今できる手当を施しこれからのことを冷静に考え始めたのだ。
そして――できる限りの子犬の手当てが終わったら次は自分の怪我のことも考えないといけない。僕は血止めの布をほどくと、あらためて傷の状況を確認する。
右腕の肘よりも手首に近いところを噛まれているようだ。犬歯だから傷が深いのはこの際、仕方がないか…。手の甲、手首に近い部分に噛み傷がある。血はまだ少し出ているものの止まり始めているな。
裏側の静脈があるところじゃなくって本当に良かった。そこだったら、まだ出血が酷いはずだ。そして、子犬のときと同じように傷口を塞ぐだけの初歩の治療魔法を施すとまた布を巻き直したのだ。
「キャウ…?」
そんなシュナの一人百面相を見て、子犬は岩の上でさらさらと尻尾を振りながら不思議そうに小首を傾げていた。
外では吹雪になっているのか、洞窟の小さな隙間から細かい雪が風と共に入り込み闇のなかを静かに舞っていたのだ。
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