包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見

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 それなのにスマホで確認した、よのぎさんへ渡したカードの明細がたったの9727円。

「もっと欲しいもの買っていいんだよ」
「買ってますよ」
 どう見てもスーパーばかりだから食材だけなのだろう。

「よのぎさん、ケーキ」
「嬉しい」
「太るなら明日の朝食べたらいい」
「七さんは?」
「僕は今食べようかな。小腹が空いた」
 激務で疲れた。

「じゃあ私も。もう太ったっていいんだもん。うわぁ、栗だ。まるごと一粒よ。うーん、おいしい」
 大きな目を更に大きくして、ぽろりと取れちゃうんじゃないかと心配になる。
 ああ、そうだ。この顔が見たくてケーキを買ったのだ。

「よのぎさん、コーヒー飲む?」
「夜だからいらないです」
 一人分なのでドリップ。

「夕飯は食べた?」
「はい。野菜スティックとキャベツしゃぶしゃぶ」
 よのぎさんは食べることを怖がっているというよりも食事の楽しさを知らない感じがする。
「栄養がないから肌がさつくのかもしれないよ。オイルもそれなりに体には必要だから」
「はい」
 ナッツとかがいいのかもしれないがアレルギーがあるかもしれない。

 ケーキを食べたら食欲が暴発して、キッチンに立っていた。ますます中年太りに拍車がかかる。
 冷凍うどんでじゃこバターパスタもどき。
「おいしそう」
 よのぎさんは匂いにつられやすい。だからバターしょう油味にした。
「少し食べる?」

 頷いたが、お皿から盗んだのは麺一本だけ。
「こんな時間に固形物食べるの何年ぶりだろう」
 節制しすぎて精神がやられる一歩手前だったのだろうと推測する。太ってはいけないといじめ続けた体が栄養を摂ることを拒んでしまっていたのではなかろうか。夜にアトリエに来たときは追い詰められた顔をしていた。その細い肩ではプレッシャーを抱えられなかったのだろう。

 今は、
「おいしい」
と微笑む。
「そう? よかった」

「器用な人ってなにをしても器用なのね。私は、この先もずっと何もできないのかな。今日だってね、建築事務所の人に家のコンセプト幾つ必要か聞かれて結局何も決められなかったわ」
 よのぎさんが胸元で長い髪を手で括って麺をすする姿がなんか好き。かわいいが集約している。
「家のことはゆっくり決めたらいいよ」
「ごめんなさい。決断力がなくて」
 そんなことでいちいち泣かなくていい。

「ほら、かわいい子は泣かないの。それに顔を触る前は?」
「手を洗う」
「はい、ティッシュ」
「ありがとう。七さん、好き」

 結婚してよかったなと思うのは冬でも寒くない。心が体を温めてくれる。薄い体でも人肌はあって、よのぎさんを包んで眠るのは至極だ。

 妻が泣かないように祈るのが夫の役目ではない。実行しなくては。
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