包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見

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 朝になって寝間着がはだけているよのぎさんを見たらそういう気分になるけれど、夫婦になったからってこんなにきれいな体を自分の好きにしていいのか葛藤する。お金を貸したから好きになってくれたのだろうか。この疑念も一生拭えないのだろう。

 週に一度は休みを取ることにして、今日はよのぎさんとスーパーへ買い物。宅配が便利でも、マンションにコンシェルジュさんがいても、荷物を開けるのが怖いとよのぎさんは言う。なんとなくわかる。有名になったとき、僕もわけのわからぬものが会社に届いた。食べ物から陰毛、使い古した歯ブラシまで。使わなかったモデルの腹いせなのか、同業の嫌がらせか。放置していたら終わったけれど、さすがに爆弾やら動物の死骸が届いたら社員が心配で警察に連絡していただろう。

 肉に野菜、米と果物。全部重い。豆腐も。カートを押しながら、よのぎさんがアイスを入れる。
「食べるんだ?」
「食べますよ。でもそれでお腹がいっぱいになっちゃうけど」
 血糖値の問題なのだろうか。

「あ、ハーブと塩も買わないと」
 終わりそうだった。メモを怠るせいでいつも何か買い忘れる。
「私行ってきますね」
「岩塩だよ」
「はーい」

 師走に入り、忙しそうだからこれがデートの代わりでいいという。新婚旅行どころかまともなデートも一度きり。
 社長なのにもかかわらず時間が作れないのは自分が悪いのだろうか。もっと社員に委ねるべきなのだろうか。

「めっちゃきれいな人がいた」
 すれ違う若い女の子が恋人と興奮気味に話す。
 きっとよのぎさんだ。あんなにきれいな人、滅多にいないもの。
「結婚指輪してた。夫が羨ましい」

 僕です。羨ましいだろう。僻むだろう。他人だったら純粋にそう思う。
 だけれど当人だから、むしろ隠れたい。これは嫉妬ではなく、自己嫌悪に近いのかもしれない。よのぎさんの笑顔の独り占めはできない。そこまで変態じゃない。

「七さん、ハーブってオレガノでよかった?」
「ああ、うん」
「あと岩塩。ピンクのもありましたよ」
「これでいい」
 人目を引くのは美人だからだけではない。前の事務所はどうしてそれを活かせなかったのだろう。よのぎさんがテレビに出るのを嫌がったのだろう。こつこつとモデルを続けるタイプだと思った。

 肌まで栄養失調だったのだろうと思う。よのぎさんですら自分を愛せなかった。
 今は健康そうだ。ストレッチは得意なよう。ヨガっぽいポーズもお手のもの。

 ポークソテーなのでローズマリーがよかった。でもうちにハーブソルトがあったからそれを塗り込む。あとはオーブンさんにお任せ。
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