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『妻の苦難がなるべく少なくなりますように』
初詣でそう祈った。人混みを避けて二日に行ったら、それもまた写真を撮られる。
『噂を払拭。羨ましいほどの歳の差愛』
写真に撮られていることを知らず、コートにマフラーでよのぎさんの顔が更に小さくなっていることに衝撃を受けた。
お正月だから許可も取らずにネットニュースに載せてしまうらしい。広報からの連絡でそれを知る。僕らのことなど気にせずに記者さんも里帰り中の広報社員も休んでほしい。
そんなときに限って僕は地味な格好で、よのぎさんの引き立て役だ。
「別にいいわ」
とスマホの記事も確認せずによのぎさんと神社をはしごする。
「あっちこっちにいってはいけないんじゃ?」
「そうなの?」
「神様も嫉妬するらしいよ」
「私と一緒ね。でもここは大黒様で商売の神様だから」
だったらあっちの芸事の神様のほうがいいのではないだろうか。向こうには根源神が、あそこの夫婦円満にもと欲深くなる。
そうだ。仕事を思い出した。
「よのぎさん、悪いけど会社に寄って年賀状だけ回収していい?」
「いいですよ」
「もうやめたいのに減らないよね。それだけの付き合になっているところもあるし」
「たくさん来るの?」
「出勤して一日が潰れる。だからせめて自分の分だけは分けておこうと思って」
「手伝いますね」
カードキーでロックを解除して鍵で開ける。両方を持っているのは僕だけで、羽切さんが会社のマスターキーを、巴さんがカードキーを持っている。二人を選定したのは単に会社から家が近いから。信頼は全員一定をなるべく心掛けている。
「人がいないと寒いね。すぐエアコンつけるから」
コートが脱げないほど空気がひんやり。
「主の七さんがいないからでしょ。ほら、あったかい」
よのぎさんが背中から抱きつく。家だと何も思わないのに会社だとすごく悪いことをしている気分になる。
家に持ち帰って分けようと思ったが7センチほどの束だ。
「よのぎさん、このデスク使って。会社、僕個人、他の社員にわけて」
「本当にすごい量。他の社員さんも個人ごとに分ける?」
「面倒でなければ」
「はい。七さん、ここに転送されて戻ってきたもの置きますね」
「うん。あ、この繊維問屋潰れたんだった。いろいろわがまま聞いてくれるところだったのに。これも住所不明か」
倒産ならまだいいほうだ。知り合いが夜逃げとか耳にしたくないことも稀に耳にする。
「私、こんなことくらいしかできないけど七さんの役に立てるの嬉しい」
よのぎさんが機敏に動く。
「手、切らないでね」
「あっ。言われた傍から」
よのぎさんは血が少なさそうだから勿体ない。
「そんなに深くなさそうだけど絆創膏貼って。確かこの棚に、あった」
薬箱から絆創膏を渡す。
「そういうところもちゃんと会社なのね」
「指で針を刺したり、頭痛持ちもいるし。そういえば昔、薬箱の中に盗聴器が入っていたことがあって、薬を運んでくれる人や社員を疑って嫌な思い出だよ」
「本当にそんなことってあるのね」
最近はデザインを盗まれるという話は聞かなくなった。人を引きずり下ろすよりも自分で頑張ったほうがいいとわかっている人たちが残る世界なのだ。
よのぎさんが年賀状の仕分けを再開する。楽しそうに仕事をする。よのぎさんがいるだけで会社の空気が一変。
「よのぎさん、ちょっと他の作業するからそれ任せていい?」
「うん」
「帰りにディナーでもしよう」
メールのチェックはしない。それは仕事始めの事務員さんに任せる。
初詣でそう祈った。人混みを避けて二日に行ったら、それもまた写真を撮られる。
『噂を払拭。羨ましいほどの歳の差愛』
写真に撮られていることを知らず、コートにマフラーでよのぎさんの顔が更に小さくなっていることに衝撃を受けた。
お正月だから許可も取らずにネットニュースに載せてしまうらしい。広報からの連絡でそれを知る。僕らのことなど気にせずに記者さんも里帰り中の広報社員も休んでほしい。
そんなときに限って僕は地味な格好で、よのぎさんの引き立て役だ。
「別にいいわ」
とスマホの記事も確認せずによのぎさんと神社をはしごする。
「あっちこっちにいってはいけないんじゃ?」
「そうなの?」
「神様も嫉妬するらしいよ」
「私と一緒ね。でもここは大黒様で商売の神様だから」
だったらあっちの芸事の神様のほうがいいのではないだろうか。向こうには根源神が、あそこの夫婦円満にもと欲深くなる。
そうだ。仕事を思い出した。
「よのぎさん、悪いけど会社に寄って年賀状だけ回収していい?」
「いいですよ」
「もうやめたいのに減らないよね。それだけの付き合になっているところもあるし」
「たくさん来るの?」
「出勤して一日が潰れる。だからせめて自分の分だけは分けておこうと思って」
「手伝いますね」
カードキーでロックを解除して鍵で開ける。両方を持っているのは僕だけで、羽切さんが会社のマスターキーを、巴さんがカードキーを持っている。二人を選定したのは単に会社から家が近いから。信頼は全員一定をなるべく心掛けている。
「人がいないと寒いね。すぐエアコンつけるから」
コートが脱げないほど空気がひんやり。
「主の七さんがいないからでしょ。ほら、あったかい」
よのぎさんが背中から抱きつく。家だと何も思わないのに会社だとすごく悪いことをしている気分になる。
家に持ち帰って分けようと思ったが7センチほどの束だ。
「よのぎさん、このデスク使って。会社、僕個人、他の社員にわけて」
「本当にすごい量。他の社員さんも個人ごとに分ける?」
「面倒でなければ」
「はい。七さん、ここに転送されて戻ってきたもの置きますね」
「うん。あ、この繊維問屋潰れたんだった。いろいろわがまま聞いてくれるところだったのに。これも住所不明か」
倒産ならまだいいほうだ。知り合いが夜逃げとか耳にしたくないことも稀に耳にする。
「私、こんなことくらいしかできないけど七さんの役に立てるの嬉しい」
よのぎさんが機敏に動く。
「手、切らないでね」
「あっ。言われた傍から」
よのぎさんは血が少なさそうだから勿体ない。
「そんなに深くなさそうだけど絆創膏貼って。確かこの棚に、あった」
薬箱から絆創膏を渡す。
「そういうところもちゃんと会社なのね」
「指で針を刺したり、頭痛持ちもいるし。そういえば昔、薬箱の中に盗聴器が入っていたことがあって、薬を運んでくれる人や社員を疑って嫌な思い出だよ」
「本当にそんなことってあるのね」
最近はデザインを盗まれるという話は聞かなくなった。人を引きずり下ろすよりも自分で頑張ったほうがいいとわかっている人たちが残る世界なのだ。
よのぎさんが年賀状の仕分けを再開する。楽しそうに仕事をする。よのぎさんがいるだけで会社の空気が一変。
「よのぎさん、ちょっと他の作業するからそれ任せていい?」
「うん」
「帰りにディナーでもしよう」
メールのチェックはしない。それは仕事始めの事務員さんに任せる。
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