包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見

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「どうしましょう? 羽切さんが入院だなんて」

 旗本さんが頭を抱える。僕が頼りないから、女性陣の精神的主柱はずっと羽切さんの役割なのだ。

 社長組でない巴さんも事務員さんも早めに出社してくれた。
「とりあえず、僕は病院へ。羽切さん、一人で心細いだろうから」
「先生、面会は13時以降の決まりですって」
 旗本さんが言う。

 なんと、羽切さんは彼女に助けに求めてきたという。もっと勤続年数の長い付き合い人もいるはず。というか、僕に連絡をくれると思っていた。孤独死は嫌だねとほんの少し前まで話し合っていたのに。
 裏切ったつもりはない。寄り添えなかったことは確かだ。
 僕よりもどんと構えていて、トラブルは適宜対処してくれて、おおらかな人柄にいつも助けられた。
 宇崎もいないうえに、羽切さんもコレクションに来れないなんて。


「ごめんなさいね」
 病室で見た彼女はいつもよりも歳老いて見えた。もう、おばさんなのだ。僕もおじさん。

「お互いに歳だから」
「腎臓に腫瘍ができていて、検査の結果によっては手術らしいです。そうだ先生、入院の保証人になってくれませんか?」
「それはいいけど」
 それよりも来月のコレクションは? と聞いてしまいたい僕は人間として間違っているのだろう。恋人だったら羽切さんの体を一番に心配する。

「手術じゃなくても海外は無理です」
 羽切さんがはっきりと言った。

「そうだろうね。今は体のことだけ考えて」
「はい」
「無理をさせたかな?」
 仕事でのという意味だった。羽切さんは黙々と自分の仕事をしてくれた。僕よりは年下でも深夜まで、自分の仕事が終われば誰かを手伝っていた。

「私、会社辞めましょうか?」
 羽切さんの発言に息を飲む。

「冗談だろ?」
「先生について20年。コレクションについて行けない日が来るなんて」
「そういうときもある。今までがラッキーだったんだ」
「今年は奥様も行くんでしょう?」
「ああ」
「私、こんな気持ちのまま働いていいのかしら」
 化粧をしていない彼女はかなり弱々しく見えた。女の人はお化粧で強さを補っているのかもしれない。

「病気で弱気になっているだけだよ。入院中にゆっくり考えて」
 15年くらい前までは若いし、悪い子でもなかったから付き合おうかと考えたこともある。だけれど仕事の付き合いに留めた。歳を取ってから羽切さんはカバっぽいし、僕はゴリラのようで、なんとなく異種のような気がして男女の仲を避け続けた。仕事のうえでは大事な人。そう思うほど羽切さんを傷つけていたのかもしれない。
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