包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見

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 秋冬物だから茶色多めになってしまった。きっと向こうの新聞にはその点をつつかれるだろう。上げ足を取る感じではなくて、
『秋だからって茶色多すぎ』
 と正面から批評される。最近の若者もそうだ。正論をわざわざ言いたがる。

 一点一点を作っているときには気づかない。ショーだから統一性を持たせるためということにしよう。

 全部の服のチェックをしているときにインターホンが鳴った。もう真夜中。社員は全員帰ったはず。誰かが急に思い立って戻ってきたのだろうか。黒田くんかもしれない。
「こう縫い直したほうがいい」
 と思って眠れなくなりそうなのは彼くらいだ。

 モニターを見たらよのぎさんがいた。顔を近づけても顔が小さい。
「どうしたの? 鍵開けるね」
「はい」

 午後一時、きれいな人は出歩かないで。
「よのぎさん、どうしたの?」
「お疲れさまです。お夜食作ってきました」
「ありがとう。でも、いいのに。いつもなら寝る時間だよ」
「旦那様が頑張ってるから妻も頑張るの。ちゃんとタクシーで来ましたよ」
「タクシー運転手がびっくりしちゃうよ」

 サランラップでくるんだサンドイッチ。
「夜だからノンカフェインのお茶にしましょう。あ、ほうじ茶もいいのよ」
 仕事場は戦場だ。そこによのぎさんがいるだけで、あったかい。妻がストレス解消なんて言ったらまた叱られるのかな。

 老眼鏡、拡大鏡、メガネを外したりまたかけたりして目が痛い。
「よのぎさん、これ8?」
「3ですね」
「目がかすんでちっとも見えやしない」
「年の離れた人との結婚が増えているのはそういう利点もあるからですねかね?」
 保護欲ともまた違う。

 よのぎさんが同じ結婚指輪をしてくれているだけで嬉しい。だからって、愛はその22万円ではない。僕の指は号数の問題でプラス1万。両方を足しても安いくらいだよ。

「よのぎさん、これは6?」
「5です。真面目な七さん素敵です。でもお邪魔だから帰ります」
「せっかく作ってくれたんだ、一緒に食べて。もう少しで終わるから家に帰ろう。心配」
「大丈夫ですって」
 なにかが起こってからでは遅いのだ。残りの人生は、できるだけ後悔を少なくしたい。

「サンドイッチおいしい」
 お世辞ではなかった。
「ツナときゅうり挟んだだけよ」
「おいしいよ」
 よのぎさんと一緒に食べるだけで幸せだ。口の端についたマヨネーズを舐めてしまいたい。

 指で拭うと恥ずかしそうに俯いて、
「すいません」
 と謝る。いいんだよ、君はかわいいから口の端になにかつけてようが、髪が乱れていようが、どうでもいい。どうしてこんなにかわいい人が結婚をしてくれたんだろう。同じものを食べて飲み込むだけで涙が滲む。
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