包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見

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 ホテルに朝食がなくて、外で400円程度のワンプレートを食べた。パンとエッグだけ。
 席に座っていても注文を取りに来ない。スーパーのレジのようなところで注文をしなくてはいけないらしい。旗本さんが一緒でよかった。

「粗野な味」
 と旗本さんは言った。
「懐かしい味がする」
 よのぎさんが頷く。たまにこういう味にも安心する。

「去年まではこのシーズンは忙しかったですか?」
 旗本さんがよのぎさんに聞いた。
「そうね。肌荒れを化粧で誤魔化して、辛いって誰にも言えなくて、自分が負のスパイラルの中にいることにも気づかなかった。まさか仕事を辞めて、憧れの人と結婚してるなんて去年は考えもしなかったけど」
 とよのぎさんが僕を見て微笑む。

 朝食を取り、コンビニで野菜ジュースだけ調達。

 地下鉄のAの前でよのぎさんと別れた。
「どこででも一人で生きていけそうな人ですね」
 と旗本さんは言うけれど、そうではない。よのぎさんは一人だとごはんも作らないし、自分に無頓着。あのまま仕事をしていたら自分を追いつめて自死していたんじゃないだろうか。そう思うとぞっとする。

 今では二人でいることが当たり前で、幸せも当然のように感じているが、本当はとっても幸福なことなのだ。


 事務所で来れなくなったモデルの代わりを探す。急病は仕方がない。髪がイメージ通りにならないは知ったこっちゃない。
 なるべく最新の写真をもらっているはずなのにがらりと顔が変わっていたりする。
「こっちに向かって歩いて」
 頭が仕事モードに切り替わらない。時差ボケの頭が地下鉄の階段に吸い込まれるよのぎさんのことしか考えない。
「サンキュー。ネクスト」
 キャスティングチームの電話が鳴りっぱなし。彼らのためにも、
「もう決めた」
 と言いたい。

 よのぎさんの友達の写真を送ってもらう。さすがはよのぎさん。
『9センチのヒールを履いて私とこの身長差です』
 よのぎさんより薄い顔。よのぎさんと同じくらいの顔の小ささ。よのぎさんとって比べてしまってごめんなさい。
 彼女を使うにしてもあと一人。
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