包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見

文字の大きさ
120 / 174

119

しおりを挟む
 スマホで近くの安い民宿のようなところを予約した。
 現地に着いたら予想より古くてびっくり。

「和室だ」
 よのぎさんがお茶を淹れてくれる。

 部屋の匂いが古さを伝える。
「他のところにする?」
「ううん。七さんとお布団初めて。早く夜にならないかしら」

 よのぎさんにも好きになった人くらいいただろう。告白できなかったのは肌を見せられなかったからなのか、自信がなかったのか。きれいなのにな。同じ年齢くらいだったら自分のことで一杯でよのぎさんを気に掛けられなかったかもしれない。それなりに人生経験は積んだほうだ。おじさんでよかった。

 平日だから他の客もいない。
 料理はおいしかった。それを食べて部屋に戻ったら布団が敷かれてあった。

「一組でいいのにね」
 よのぎさんがうんと甘い声で言い、浴衣に着替える。しゅるしゅると帯の音が耳に残る。

「布団がひとつだとどっちが濡れたほうで寝るかでケンカになる」
「そうなの?」
「外国の女の人は『昨日は私が濡れた側に寝たから今日はあなたね』みたいなことを平気で言う」
「つまり、七さんは外国の人とお付き合いしたことあるんだ?」
「あれは、付き合っていたというより騙された。ショーに出て、しばらくしたら連絡も取れなくて」
 遥か昔のことだから笑って話せる。
「そう。失恋?」
「大人の付き合いかな」
「そんな付き合いしたくない」
 あのときの自分に大馬鹿野郎と伝えたい。将来にはこんな幸せが待っているとも。
「全くだ」
 よのぎさんが濃いお茶を淹れ直してくれた。
 しかしながら、僕が若ければよのぎさんは子どもだ。未来を教えられても口説けない。

 古い畳の匂い、君のうしろに見える古い部屋までなんだかきれい。
 これはきっと今まで頑張ってきた分のご褒美だ。だとしたら、これからはどうやって補填したらいいのだろう。加齢に邪魔されて頑張れなくなるときがそのうちやってくる。

 まだ雨の音がする。変な形のお風呂に別々に入った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホストと女医は診察室で

星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。

雨の日にやさぐれお姉さんを拾ったと思ったら胃袋も心も掴んでくるスーパーお姉さんだった

九戸政景
恋愛
新人小説家の由利美音は、ある日の夜に一人の女性を拾う。太刀川凛莉と名乗る女性との共同生活が始まる中、様々な出会いを果たしながら美音は自身の過去とも向き合っていく。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。 でも今、確かに思ってる。 ―――この愛は、重い。 ------------------------------------------ 羽柴健人(30) 羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問 座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』 好き:柊みゆ 嫌い:褒められること × 柊 みゆ(28) 弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部 座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』 好き:走ること 苦手:羽柴健人 ------------------------------------------

処理中です...