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23 王立学院へ
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「もうすぐ王立学院だな……」
俺は馬車に揺られながら、ルミナイト王都にある国立学院へと向かっていた。
領地改革の一環として、学院の教育体制を視察するためだ。
もちろん、ただ視察するだけじゃない。
将来有望な人材がいれば、今のうちから将来はローゼルバイト家で働かないか、とスカウトするつもりだった。
せっかく【鑑定】があるんだから、有能な人間はどんどん登用していきたい。
……前のディオンなら、そんなことは考えもしなかっただろう。
家柄と権力にものを言わせ、平民を見下し、自分の欲望のままに生きていた。
その結果が、ゲーム本編の没落ルートだ。
だから、俺は同じ道は歩まない。
王立学院で、未来のローゼルバイトの要となるような人材を発掘できるかもしれない。
そう思うと、自然と心が湧き立つ。
「――着いたか」
ほどなくして、馬車は王立学院に到着した。
現代日本でいえば、高校と大学の一貫校といったところだ。
「さすがにルミナイトで最大の学院だけあって大きいな……」
中央の本校舎、そして魔法研究棟、剣技訓練場、図書棟や各種資料館、大庭園や運動場、そして貴族の館も顔負けの豪華な学生寮。
日本の大学と比べても、かなり規模が大きくて小さな町くらいならスッポリ入ってしまいそうなくらい広大な敷地だ。
学生の大半は貴族だけど、中には能力を認められて特待生として入ってくる平民もいる。
俺は学内をしばらく歩き回った。
方々から学生たちの活気が伝わってくる。
誰もが生き生きとした顔つきで、【鑑定】してみるとAランクの能力を持っている者もチラホラと見えた。
人材の宝庫だ。
「……っていうか、ディオンもいちおうここに合格してたんだよな。やる気なさ過ぎて自主退学したいみたいだけど」
俺はため息をついた。
勿体ない。
実に勿体ない。
今からでも復学したい気持ちもあるけど、今の俺には領地運営があるから、そんな暇はない。
と、前方に剣技訓練場が見えてきた。
にぎやかな声が聞こえてくる。
ちょっと覗いてみるか。
ローゼルバイト家を護衛する騎士隊には、既にバルゴという天才騎士がいるわけだけど、優秀な騎士はいくらいたって構わない。
俺は訓練場に足を踏み入れた。
ちょうど実技試験を行っているらしく、剣術科の生徒同士が木剣で打ち合っていた。
俺のような学外からの見学者らしき姿も見える。
俺と同じく自分の家に騎士隊にスカウトしたいということで来ているのか、あるいは誰かの親族なのか――。
「さすがにバルゴたちに比べれば少し落ちるか……それでも動きはなかなか鋭いな」
生徒たちを【鑑定】してみる。
大半は剣術AランクかBランクで、ローゼルバイト家の騎士隊と比べても、そこまで大きな差はなさそうなほど優秀だ。
Sランクは――さすがに、いないか。
と、
「きゃあっ……!」
悲鳴が聞こえてきた。
前方の通路に誰かが倒れている。
「あいたたた……」
一人の女子生徒が軽く顔をしかめていた。
その側には薬草らしきものが散乱している。
どうやら薬草を運ぶ途中に転んだらしい。
……といっても、転びそうな障害物は特にないんだけどな。
「大丈夫か?」
俺は彼女の元に歩み寄った。
小柄な少女だった。
栗色の髪を肩まで伸ばし、そばかすの目立つ地味な顔立ちをしている。
貴族令嬢らしくない、あか抜けない雰囲気だった。
もしかしたら平民かもしれない。
なにげなく【鑑定】を発動する。
****
名前:ウェンディ・ラミル
植物魔法:S
****
「なんだと……!?」
俺は呆然と彼女を見つめる。
ウェンディ・ラミル。
それはこのゲーム【花乙女の誓約】のヒロイン――つまり『主人公』だ。
俺は馬車に揺られながら、ルミナイト王都にある国立学院へと向かっていた。
領地改革の一環として、学院の教育体制を視察するためだ。
もちろん、ただ視察するだけじゃない。
将来有望な人材がいれば、今のうちから将来はローゼルバイト家で働かないか、とスカウトするつもりだった。
せっかく【鑑定】があるんだから、有能な人間はどんどん登用していきたい。
……前のディオンなら、そんなことは考えもしなかっただろう。
家柄と権力にものを言わせ、平民を見下し、自分の欲望のままに生きていた。
その結果が、ゲーム本編の没落ルートだ。
だから、俺は同じ道は歩まない。
王立学院で、未来のローゼルバイトの要となるような人材を発掘できるかもしれない。
そう思うと、自然と心が湧き立つ。
「――着いたか」
ほどなくして、馬車は王立学院に到着した。
現代日本でいえば、高校と大学の一貫校といったところだ。
「さすがにルミナイトで最大の学院だけあって大きいな……」
中央の本校舎、そして魔法研究棟、剣技訓練場、図書棟や各種資料館、大庭園や運動場、そして貴族の館も顔負けの豪華な学生寮。
日本の大学と比べても、かなり規模が大きくて小さな町くらいならスッポリ入ってしまいそうなくらい広大な敷地だ。
学生の大半は貴族だけど、中には能力を認められて特待生として入ってくる平民もいる。
俺は学内をしばらく歩き回った。
方々から学生たちの活気が伝わってくる。
誰もが生き生きとした顔つきで、【鑑定】してみるとAランクの能力を持っている者もチラホラと見えた。
人材の宝庫だ。
「……っていうか、ディオンもいちおうここに合格してたんだよな。やる気なさ過ぎて自主退学したいみたいだけど」
俺はため息をついた。
勿体ない。
実に勿体ない。
今からでも復学したい気持ちもあるけど、今の俺には領地運営があるから、そんな暇はない。
と、前方に剣技訓練場が見えてきた。
にぎやかな声が聞こえてくる。
ちょっと覗いてみるか。
ローゼルバイト家を護衛する騎士隊には、既にバルゴという天才騎士がいるわけだけど、優秀な騎士はいくらいたって構わない。
俺は訓練場に足を踏み入れた。
ちょうど実技試験を行っているらしく、剣術科の生徒同士が木剣で打ち合っていた。
俺のような学外からの見学者らしき姿も見える。
俺と同じく自分の家に騎士隊にスカウトしたいということで来ているのか、あるいは誰かの親族なのか――。
「さすがにバルゴたちに比べれば少し落ちるか……それでも動きはなかなか鋭いな」
生徒たちを【鑑定】してみる。
大半は剣術AランクかBランクで、ローゼルバイト家の騎士隊と比べても、そこまで大きな差はなさそうなほど優秀だ。
Sランクは――さすがに、いないか。
と、
「きゃあっ……!」
悲鳴が聞こえてきた。
前方の通路に誰かが倒れている。
「あいたたた……」
一人の女子生徒が軽く顔をしかめていた。
その側には薬草らしきものが散乱している。
どうやら薬草を運ぶ途中に転んだらしい。
……といっても、転びそうな障害物は特にないんだけどな。
「大丈夫か?」
俺は彼女の元に歩み寄った。
小柄な少女だった。
栗色の髪を肩まで伸ばし、そばかすの目立つ地味な顔立ちをしている。
貴族令嬢らしくない、あか抜けない雰囲気だった。
もしかしたら平民かもしれない。
なにげなく【鑑定】を発動する。
****
名前:ウェンディ・ラミル
植物魔法:S
****
「なんだと……!?」
俺は呆然と彼女を見つめる。
ウェンディ・ラミル。
それはこのゲーム【花乙女の誓約】のヒロイン――つまり『主人公』だ。
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