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45 土壌改良の進捗について
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ひんやりとした朝の空気が意識を覚醒させていく。
「馬車の用意が整いました、ディオン様」
メイドのルーシアが一礼する。
「ありがとう。じゃあ、行ってくる」
俺は彼女に礼を言うと、屋敷の前に停められた馬車のところまで行った。
――王都から戻り、一日が経っていた。
今日は畑の視察である。
ローゼルバイト領の痩せた土地や貧しく疲弊した民たち。
その状況を改善するため、休んでいる暇はない。
馬車でやって来たのは、領内の農業地帯である。
以前、この辺りは見るからに痩せた土地がまるで乾いた粘土のようで、ひび割れがあちこちに走っていた。
けれど、今は違う。
土の色からして変わっているし、どうやら灌漑のルートを見直したり、肥料の配合を変えたり……と工夫がなされているようだ。
おそらく、それを為したのは土壌改良作業のリーダーに任命した彼女だろう。
と、
「おーい、ディオン坊や。朝から視察とは、えらい熱心じゃないかい?」
鮮やかな赤毛を揺らしながら、一人の女が走ってきた。
ムチムチした体に作業着を着た彼女は、肩に鍬を担いでいる。
「クリスティナか」
クリスティナ・ゼルバート。
この辺りの農民たちのリーダー格として、土壌改良を任せている。
年齢は三十代半ばくらいだが、年齢不詳の外見は美魔女のような雰囲気があった。
農業の才はAランクであり、人望もA+。
この付近ではもっとも農業の才能に秀で、人望も高いことからリーダーにはうってつけの人材だと判断したのだ。
で、今日は彼女を中心に行っている土壌改良の進捗を確認しに来たのだった。
「畑の様子はどうだ?」
「だいぶマシになってきたよ。耕作地の中でも、南西の一角は手ごたえがある。ただ、灌漑の設備が……ほら、これ」
クリスティナが指差したのは、ひびの入った水路だった。
錆びついたパイプが水を漏らし、ぬかるんだ地面が悪臭を放っている。
「漏水しててさ。いくら土地を改良しても、これじゃ水がちゃんと行き渡らないよ」
「……分かった。部品の補充と職人の手配をしておこう」
「話が早くて助かるよ」
「土壌改良の仕事については君に一任している。他にも必要なものがあれば言ってくれ」
俺は微笑み交じりに言った。
「太っ腹だねぇ。そういう男は好きだよ」
言いながら、クリスティナがすり寄ってきた。
色っぽい彼女に迫られると、さすがにドキッとしてしまい、俺は頬が熱くなるのを自覚しながら体を離した。
「つれないねぇ」
「君はちょっと距離感が近すぎるんだ」
俺は苦笑した。
「誰にでもこうじゃないよ」
と、流し目を送るクリスティナ。
もしかして男を誘惑する才能もあるんじゃないか……?
ふとそんなことを考えて【鑑定】してみる。
まあ、以前にも【鑑定】はしているんだが――。
「……えっ?」
クリスティナ――農業の才:A+、人望:S。
「ランクが上がってる……?」
どういうことだ?
才能が磨かれて、以前よりも高ランクになったってことか?
基本的に同じ人間を何度も【鑑定】しないから気付かなかった。
だとすれば、他の人間もそれぞれ『成長』している可能性がある――。
「馬車の用意が整いました、ディオン様」
メイドのルーシアが一礼する。
「ありがとう。じゃあ、行ってくる」
俺は彼女に礼を言うと、屋敷の前に停められた馬車のところまで行った。
――王都から戻り、一日が経っていた。
今日は畑の視察である。
ローゼルバイト領の痩せた土地や貧しく疲弊した民たち。
その状況を改善するため、休んでいる暇はない。
馬車でやって来たのは、領内の農業地帯である。
以前、この辺りは見るからに痩せた土地がまるで乾いた粘土のようで、ひび割れがあちこちに走っていた。
けれど、今は違う。
土の色からして変わっているし、どうやら灌漑のルートを見直したり、肥料の配合を変えたり……と工夫がなされているようだ。
おそらく、それを為したのは土壌改良作業のリーダーに任命した彼女だろう。
と、
「おーい、ディオン坊や。朝から視察とは、えらい熱心じゃないかい?」
鮮やかな赤毛を揺らしながら、一人の女が走ってきた。
ムチムチした体に作業着を着た彼女は、肩に鍬を担いでいる。
「クリスティナか」
クリスティナ・ゼルバート。
この辺りの農民たちのリーダー格として、土壌改良を任せている。
年齢は三十代半ばくらいだが、年齢不詳の外見は美魔女のような雰囲気があった。
農業の才はAランクであり、人望もA+。
この付近ではもっとも農業の才能に秀で、人望も高いことからリーダーにはうってつけの人材だと判断したのだ。
で、今日は彼女を中心に行っている土壌改良の進捗を確認しに来たのだった。
「畑の様子はどうだ?」
「だいぶマシになってきたよ。耕作地の中でも、南西の一角は手ごたえがある。ただ、灌漑の設備が……ほら、これ」
クリスティナが指差したのは、ひびの入った水路だった。
錆びついたパイプが水を漏らし、ぬかるんだ地面が悪臭を放っている。
「漏水しててさ。いくら土地を改良しても、これじゃ水がちゃんと行き渡らないよ」
「……分かった。部品の補充と職人の手配をしておこう」
「話が早くて助かるよ」
「土壌改良の仕事については君に一任している。他にも必要なものがあれば言ってくれ」
俺は微笑み交じりに言った。
「太っ腹だねぇ。そういう男は好きだよ」
言いながら、クリスティナがすり寄ってきた。
色っぽい彼女に迫られると、さすがにドキッとしてしまい、俺は頬が熱くなるのを自覚しながら体を離した。
「つれないねぇ」
「君はちょっと距離感が近すぎるんだ」
俺は苦笑した。
「誰にでもこうじゃないよ」
と、流し目を送るクリスティナ。
もしかして男を誘惑する才能もあるんじゃないか……?
ふとそんなことを考えて【鑑定】してみる。
まあ、以前にも【鑑定】はしているんだが――。
「……えっ?」
クリスティナ――農業の才:A+、人望:S。
「ランクが上がってる……?」
どういうことだ?
才能が磨かれて、以前よりも高ランクになったってことか?
基本的に同じ人間を何度も【鑑定】しないから気付かなかった。
だとすれば、他の人間もそれぞれ『成長』している可能性がある――。
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