不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

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第1章 勇者の帰還

23 暴走族退治2

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「殺されたいらしーな」
「やっちまうか」

 へらへら笑いながら、数人の男たちが木刀や鎖などを手に近づいてくる。

 ──【近接格闘・レベル5】を発動。
 ちなみにレベルは念のために今までの3から5まで上げてある。

 俺は連中を見据えた。
 隙だらけだ。

「死ねよ!」

 叩きつけられる木刀を、俺は最小限の動きで身をひねって避ける。

「がはっ」

 カウンターで打ちこんだ拳が、そいつを吹っ飛ばした。
 さらに体を半回転。

「ぐはっ」

 回し蹴りで鎖を持った男を倒す。

 地面を蹴って間合いを詰め、迎撃態勢を整える前の彼らに、三人まとめて拳と蹴りを浴びせてKOした。

───────────────────────────────────
 経験値20を取得。
 経験値31を取得。
 経験値12を取得。
 経験値43を取得。
 経験値14を取得。
───────────────────────────────────

 ステータスを表示しっ放しにすると、そんな文字がずらずらっと並んだ。

 ちなみに戦闘経験値が手に入る条件は、相手を殺すか、戦闘不能にするかのどちらか。
 前者の方が多くのポイントを得られ、後者はその三分の一のポイント取得になる。

 経験値にばらつきがあるのは、相手の強さに差があるからだろう。

「な、なんだ、こいつ……」
「ひいい……」
「どうした? お前たちは気に食わないことがあると、すぐに暴力を振るってきたんだよな? 俺も同じことをしているだけだぞ?」

 おびえる暴走族たちに歩み寄る俺。

「か、囲んじまえ!」

 バイクから降りてきた暴走族たちが俺をぐるりと包囲した。
 金属バットや木刀などを手に向かってくる。

「おら、逃げ場はねーぞ!」
「いや、ある」

 ──スキル【ジャンプ】を発動。
 俺は大きく跳びあがり、攻撃から逃れた。

 そのまま包囲網の外側に着地。
 手当たり次第に殴り、蹴り、次々に倒していく。

 ──しばらくして、百人を超える暴走族たちは全員が地面に伸びてしまった。

「これに懲りて暴走行為はやめろよ。また繰り返すなら、俺が成敗しに来るからな」

 と、釘を刺す。

「バイク自体に乗るなとは言わないけど、騒音が出るような部品は全部処分するんだ。いいな?」
「は、はいい……」

 さすがにこれだけの力の差を見せつけると、全員おとなしいもんだ。

 しょせん暴力を振りかざすような奴は、より強い暴力には弱い。
 異世界でそんな光景はさんざん見てきたからな。

 もちろん、これは俺自身への戒めでもある。

「次にやったらバイクごとぶっ飛ばす」
「い、いやいやいやっ、バイクだけは勘弁してくださいぃぃっ」

 暴走族は青ざめて叫んだ。
 まあ、バイク自体に罪はないので、本気で壊そうとは思わないけど。



 こうして『怒羅愚那阿ドラグナー』を壊滅させた俺は家路についた。

「ふう……さすがにこの数を相手にすると、けっこう疲れるな」

 ただ、経験値はかなり手に入った。

 俺の基本レベルは一気に17まで上昇。
 スキル取得やスキルレベルアップに割り振りできる経験値ポイントも、合計で3000くらい入った。

 普段、通学のときに貯まる経験値が100前後だから、その30倍くらいだ。
 とりあえず【近接格闘】をレベル13まで上げた。

 スキルの最大レベルは基本的に20なので(もっと上げる方法もあるが、今は説明を割愛する)、かなり上がった感じだ。
 さらに派生スキルとして【武器格闘】と【狙撃】も取得した。

【武器格闘】は徒手空拳の【近接格闘】と違い、武器を使った格闘において使用するスキル。
【狙撃】は主に弓を使うときのスキルだけど、たとえば投石なんかにも使える。

 その辺の小石を拾って投げつけるのも、スキル攻撃として放てるわけだ。
 これで戦い方のバリエーションはかなり広がったな。

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