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第8章 勇者の運命
13(最終話) 夏瀬彼方
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俺は呆然とその場に立っていた。
「……そうだ、まだやることがある」
当初の目的の、達成。
それは新たな『門番』を生み出し、魔界と人間界につながる道を閉じることだ。
できれば、ファルセリアとの通路も閉じたいところだが──。
「どうやって新たな『門番』を生み出せばいい……?」
最初の計画では、アリアンたちが準備した高位魔族を新しい『門番』にする手はずだった。
アリアンたちの命令を聞くように調整されているというその魔族は、当然俺には呼び出せない。
あらかじめ、もっと情報を得ておくべきだったか……。
と、
『「門番」の完全消失を確認」』
『新たな「門番」を指定してください』
異空間の中で、声が響いた。
「新たな『門番』って言われても、すぐには無理だ」
俺は声に対して返答する。
「少し待ってもらえないか。高位魔族を用意すればいいんだよな?」
一度ここから出て、今後現れた魔族を手なずけて──いや、時間がかかりすぎるし、不確実か。
どうすればいい……?
俺自身で『門』を閉じることができたら楽なんだけどな……。
『意思確認。新たな「門番」は個体名:夏瀬彼方でよろしいでしょうか?』
『よろしければ、承認の意思を』
「えっ?」
新たな『門番』って俺自身がなってもいいのか?
っていうか、そんな存在になっても大丈夫なのか。
まさか、俺もさっき戦った化け物みたいになっちゃうんじゃ……?
「やっぱり高位魔族を探してくるか……」
迷う。
いや、でもモタモタしていたら、レグルドの仲間か、ファルセリアから新手が来るかもしれない。
今は千載一遇のチャンスではある。
どうする──。
脳裏に雫たちオカ研メンバーの顔が浮かぶ。
俺は逡巡の末、顔を上げた。
ええい、なるようになれ!
「分かった。俺を『門番』にしてくれ」
『最終意思確認。個体名:夏瀬彼方にスキル【門番】を委譲します』
「『門番』ってスキル名だったのか……!?」
周囲に鮮烈な黄金の輝きがあふれた。
その光が俺の胸元に吸いこまれる。
「っ……!」
分かる。
分かるぞ。
俺の中に、新たな『力』が宿ったのが。
誰に教わったわけでもなく、本能的に悟る。
この『力』の使い方を。
「スキル【門番】を起動。魔界と人間界、ファルセリアと人間界の世界間通路をそれぞれ施錠、封鎖。今後、俺から別途の命令があるまで封鎖状態を維持せよ」
ヴ……ン!
音と同時に、周囲が激しく揺らいだ。
「『扉』が閉じたな。これで今後は──人間界に魔物やファルセリアの連中が現れることはないはずだ」
感覚的に分かる。
遺跡にある扉も、あるいは世界のあちこちに点在しているかもしれない他の遺跡にも──人間界にあるすべての『扉』は、たった今閉じられた。
そのはずだ。
後で遺跡に行って確認してみよう。
「これでひと安心ってことか」
まあ、『扉』を閉じる前にこの世界にやって来た魔族や魔獣が残っているかもしれないから、そいつらを見つけたら倒す必要があるか。
とはいえ、一つの決着はついた。
『一周目』の人生で勇者パーティとして過ごした連中は、全員が討たれた。
「これでやっと──」
『二周目』の人生を、平和に始められるんだろうか。
今度こそ、勇者としてではなく、単なる高校生の夏瀬彼方として──新しい人生を気ままに生きることが。
「やっと、これからは……!」
俺は自然と微笑みを浮かべ、一歩を踏み出した。
本当の意味で、新たな人生への一歩を。
「……そうだ、まだやることがある」
当初の目的の、達成。
それは新たな『門番』を生み出し、魔界と人間界につながる道を閉じることだ。
できれば、ファルセリアとの通路も閉じたいところだが──。
「どうやって新たな『門番』を生み出せばいい……?」
最初の計画では、アリアンたちが準備した高位魔族を新しい『門番』にする手はずだった。
アリアンたちの命令を聞くように調整されているというその魔族は、当然俺には呼び出せない。
あらかじめ、もっと情報を得ておくべきだったか……。
と、
『「門番」の完全消失を確認」』
『新たな「門番」を指定してください』
異空間の中で、声が響いた。
「新たな『門番』って言われても、すぐには無理だ」
俺は声に対して返答する。
「少し待ってもらえないか。高位魔族を用意すればいいんだよな?」
一度ここから出て、今後現れた魔族を手なずけて──いや、時間がかかりすぎるし、不確実か。
どうすればいい……?
俺自身で『門』を閉じることができたら楽なんだけどな……。
『意思確認。新たな「門番」は個体名:夏瀬彼方でよろしいでしょうか?』
『よろしければ、承認の意思を』
「えっ?」
新たな『門番』って俺自身がなってもいいのか?
っていうか、そんな存在になっても大丈夫なのか。
まさか、俺もさっき戦った化け物みたいになっちゃうんじゃ……?
「やっぱり高位魔族を探してくるか……」
迷う。
いや、でもモタモタしていたら、レグルドの仲間か、ファルセリアから新手が来るかもしれない。
今は千載一遇のチャンスではある。
どうする──。
脳裏に雫たちオカ研メンバーの顔が浮かぶ。
俺は逡巡の末、顔を上げた。
ええい、なるようになれ!
「分かった。俺を『門番』にしてくれ」
『最終意思確認。個体名:夏瀬彼方にスキル【門番】を委譲します』
「『門番』ってスキル名だったのか……!?」
周囲に鮮烈な黄金の輝きがあふれた。
その光が俺の胸元に吸いこまれる。
「っ……!」
分かる。
分かるぞ。
俺の中に、新たな『力』が宿ったのが。
誰に教わったわけでもなく、本能的に悟る。
この『力』の使い方を。
「スキル【門番】を起動。魔界と人間界、ファルセリアと人間界の世界間通路をそれぞれ施錠、封鎖。今後、俺から別途の命令があるまで封鎖状態を維持せよ」
ヴ……ン!
音と同時に、周囲が激しく揺らいだ。
「『扉』が閉じたな。これで今後は──人間界に魔物やファルセリアの連中が現れることはないはずだ」
感覚的に分かる。
遺跡にある扉も、あるいは世界のあちこちに点在しているかもしれない他の遺跡にも──人間界にあるすべての『扉』は、たった今閉じられた。
そのはずだ。
後で遺跡に行って確認してみよう。
「これでひと安心ってことか」
まあ、『扉』を閉じる前にこの世界にやって来た魔族や魔獣が残っているかもしれないから、そいつらを見つけたら倒す必要があるか。
とはいえ、一つの決着はついた。
『一周目』の人生で勇者パーティとして過ごした連中は、全員が討たれた。
「これでやっと──」
『二周目』の人生を、平和に始められるんだろうか。
今度こそ、勇者としてではなく、単なる高校生の夏瀬彼方として──新しい人生を気ままに生きることが。
「やっと、これからは……!」
俺は自然と微笑みを浮かべ、一歩を踏み出した。
本当の意味で、新たな人生への一歩を。
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