転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

文字の大きさ
208 / 234
陰謀編 プレイステッド領

人質、魚を貪り食う

しおりを挟む
ガラの悪そうなおっさんが運んでくると思っていた食事は、きっちりと執事服を着た兄さんでも絶対領域を見せびらかすメイドでもなく、白衣を着た爺さんが持ってきた。なんで?
そして、テーブルに食事を並べると静かにワゴンを押して部屋を出て行った。なんで?

「……気にしてもしょうがないか……。飯でも食おう」

懸念していたことは三食の食事がちゃんと提供されるかということ。貴族って朝と夜しか食べないとか、昼食の代わりにお茶の時間がやたらと多いとか、夜はパーティーで酒を飲んで食べるとか、いろいろあるからさぁ、プレイステッド辺境伯家がウェ~イウェ~イのパーリータイプだったら、昼食ないかもと危惧していた。なんせ、俺はダイエットの途中。三食バランスよく食べる必要がある! ……プレイステッド辺境伯領には海があるから、新鮮な魚料理に期待もしていた。

テーブルに並べられた皿に注目! パンが二つある。黒パンでカッチカチの固さではなく、ふわふわのパンだ。もっちりも欲しいけど、ヘクターが焼いたパンじゃないとふわふわもっちりは再現できないもんな。果実水が入ったコップ。ワインじゃないんだ。柑橘系の果実水でサッパリとした飲み心地だ。……アルコールじゃないんだ。しょぼん。メインは魚! やったあ、やったあ! でもムニエル。刺身じゃない、塩焼きじゃない。魚のムニエルにクリームソースがたっぷり……カロリー増し増しじゃない。小ぶりな皿にサラダもあるけど……カロリーが……。

「あ、ここにいたら運動できないじゃないか! ど、どうしよう」

ランニングもウォーキングもできない。筋トレは器具がないからスクワット程度。プランクもできるけど、俺は地味なトレーニングは好きじゃない。飽きてしまう。しかも、こんな殺風景な部屋で黙々と筋トレするのは、辛い。

「とりあえず、食いながら考えよう。いただきます」

どうせ、考える時間はいっぱいあるんだし。俺はフォークとナイフを持ち、魚にいざ入刀。


























プレイステッド辺境伯家。

現当主はそろそろ引退すれば? と噂される年齢ではあるがバリバリの現役である。海の町を治めるだけあって小麦色の肌にパンッと弾ける筋肉。大柄で顔も厳つい海の男だ。愛する妻との間に二人の息子もおり、はたから見れば羨ましい人生を歩いているとも……。

「辺境伯様。また海で魔獣が暴れております」

こういう報告は毎日ある。暴れているのが魔獣か海賊か山賊かの違いで、ほぼプレイステッド辺境伯家の騎士たちはヒッャハーとばかりに剣を振るっていた。暖かい気候のせいか、広大な海原を眺めているせいか、プレイステッド辺境伯家の騎士たちは自由だ。規律も不敬ギリギリのラインでしか守れない。プレイステッド辺境伯の紋章が刻まれた鎧や武具を持っていなければ、彼らこそが海賊で山賊だと間違われるだろう。それだけ猛々しいということだ。

この国に二つしかない辺境伯家。もう片方のウェントブルック辺境伯家の騎士たちは騎士道とはこういうものだという見本のような騎士ばかりなのに。

それでもプレイステッド辺境伯領の領民は、自分たちを守ってくれる騎士たちが大好きだ。賞金首ばりの顔つきの辺境伯様も大好きだ。そして、そんな騎士たちの先頭を走る次期辺境伯様も大好きだった。

……そんな領民に愛される辺境伯家だが、辺境伯様の二人の息子の一人、ラファエル・プレイステッドは領民の軽い口にも上らないミステリアスな男だ。生まれたばかりに前辺境伯夫人の手により、王都へと連れられ養育されたとか、幼少のころに天に召されて影武者がいるのだとか、噂には事欠かない人物である。

実際は、前辺境伯夫人に育てられ、父母兄とはやや疎遠であること。前辺境伯夫人の妄執により捻くれて育ったこと。前辺境伯夫人に心酔する騎士たちがその周りを守り、辺境伯様の命令にも背くことなど……プレイステッド辺境伯としては頭の痛い存在になっている。

何度か関係改善を試みたが、すべてラファエルによって拒絶され、今はプレイステッドの海が見渡せる丘の上の屋敷で生活していた。ラファエルを第一とする前辺境伯夫人に仕えた時代の使用人が仕切る屋敷で、彼は任されたプレイステッド家の仕事と個人で営む商会の仕事を静かにこなしていると思われていた。

まさか、その屋敷に出入りする商人や領民がプレイステッド辺境伯家に弓弾く者たちで、虎視眈々とその地位を狙い反逆の炎が燃やされていたとは知らず。しかも、その屋敷の一角にオールポート伯爵家の白豚……もとい伯爵様その人が囚われているとは誰も気づかなかった。

コトン。

お気に入りの臙脂色のインクで丁寧に手紙を書いた。これは大事な手紙だから、とってもとっても大事な手紙だから。自分と運命共同体のあの人への手紙だから、すぐに確実に届けてもらわなきゃ。ふふふ、あいつが適任だ。あいつならあの人も僕がどれだけ大事な駒を手にしたか理解できるだろう。

「ねぇ、ハリソンを呼んでくれる? 手紙を届けてほしいんだ」

従者に命じると、彼はちょっと鼻白んでから部屋を出ていった。新参者に風当たりが強いのはしょうがない。しかも彼は主人を裏切ったのだから。

「お呼びですか?」

「ハリソン、手紙を届けにいってくれる? 王都まで」

はい、と差し出した手紙には、僕の美しい字であの人の名前が書かれている。
ルーカス・ウェントブルック、と。
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜

なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。 藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!? 「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」 ……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。 スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。 それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。 チート×獣耳×ほの甘BL。 転生先、意外と住み心地いいかもしれない。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

処理中です...