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社交シーズン秋①
伯爵、詐称に怯える
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税務報告が無事に済み、兄上と別れて……いや、お茶でもどうですか? とお誘いはしたが、ハーディング侯爵はお忙しいようで従者たちに攫われるようにして去っていった。頑張れ、兄上。
そして、白豚は屋敷に戻り、作戦会議である。
なんの? 決まっている、セシル・オールポートの貞操を守ろうっていう会議だっ!
「ハリソン、騎士からの情報はどうだった?」
実は、我々が王宮へ税務報告へ行くときに随行していたハリソンは、王国騎士団の訓練場へと足を運び、情報収集に勤めていた。誰の? 決まっているだろう、俺のじゃない、セシル君の元カレである、ルーカス・ウェントブルック副騎士団長についてだ!
ガリガリと後ろ頭を掻き、興味のなさそうな顔で、ハリソンはやる気なく報告をする。おい、お前の主人の貞操がかかっているんだぞ。もっと、真面目にやれ!
「へいへい。ルーカス副団長は人望もあり、騎士団の中で最強と恐れられています。あと、なんだっけ? ああ、兄である辺境伯との仲も良好で、再三、領地に戻るよう使者が訪れているようです」
「……そんなことはどうでもいいんだよっ。そのルーカスって、まだセシルのことを好きなのか?」
人格者で人から好かれていようが、俺は好きじゃない。恋愛対象ではない。男にいろいろとやられるのはイヤだ。俺が知りたいのは、そのルーカスに新しい恋人がいるかどうかだ。
「で、どうだ? そんなにスペックが高い男なら、付き合っている奴の一人や二人。十人や三〇人もいてもおかしくないだろう?」
充実した性生活を送っているから、若いときの恋愛はいい思い出として、忘れててくれないかな?
「知りませんよ、そんなことは。未だに独身ですが、騎士は独身の奴も多いですからね。セシル様をまだ思っているかどうかなんてわかりません」
「かーっ、使えねぇなっ」
ハリソン、お前、騎士たちの間では、ちょっとは名前が知られてんだろう? 下ネタで盛り上がって恋バナの一つでもしてこいよっ。
「セシル様はウェントブルック副団長とヨリを戻したいんですか?」
ディーンの質問に、俺はマッハの速さで首を横に振る。バカ、バカバカバカ、お前。なんて恐ろしいことを口にするんだっ。
「その反対だっ! 俺はそのルーカスって人の記憶もないし、今は領地経営に全力で取り組みたいし。だからといって、そのルーカスって奴が昔のことで恨み節をぶつけてきたら謝らなきゃならないし。そんなこんなで記憶がないことがバレたらややこしいだろーっ」
だから、俺はセシル君の元カレとは一切接触しないで、逃げ切りたいのだ。へい君たち、アンダースタン?
ベンジャミンとディーンは互いに顔を合わせて、コテリと首を傾げる。
「セシル様。今回の夜会はほとんどの貴族たちが出席します。参加が免除となっているのは辺境伯や遠方の者、少々財力が足りない者です」
セシル君はサボっていたけどな。
「親父……執事長の言う通りです。つまり、学園で親しかった者が参加するということ。セシル様が警戒するのはウェントブルック副団長だけでなく、当時の友人関係では?」
「へ?」
そ、そういえば、おっさん王子がセシル君にも友人がいたと言っていたな。おっさん王子は抜けているボンボン育ちだから誤魔化せているが、他の友人たちはどうだろう? いやぁ、バレるよね? むしろ外見も白豚と化しているから別人だと疑われるのでは?
「オールポートの屋敷で会ったのに元カレ……いやルーカス副団長もセシルだと気づかなかったし。むしろ記憶喪失がバレるよりも、セシル・オールポート伯爵の名前詐称で糾弾されるかもしれん」
自分で言っていて、ちょっとショック。マジか……。しかし、中身が異世界産の魂なので、詐称と騒ぎ立てられたら、正々堂々と自分がセシルだと言い切る自信もないぞ。
「セシル様。ハーディング侯爵家に使いを出し、当時の手紙の内容から、セシル様と交流のあった方をリストアップしてもらいます」
ベンジャミンはペコリと礼をすると、ススーッと部屋を出て行った。う~む、デキる執事は違うね。
「セシル様。夜会まで日にちがあまりありません。ハーディング侯爵家からセシル様の友人リストが届いたら、お勉強ですよ?」
「ほへ? な、なんの勉強をするんだ?」
俺……オールポート家の税務報告作成で頭がショートするほど働いたんだけど……。
「もちろん、お友達である方の爵位、領地、関係のある貴族。オールポート家との関係に利があるかどうか、ですね」
ニッコリと笑うヴァスコの背中に悪魔の羽が見えた気がした。
その日の夜。
とりあえず、元カレであるルーカス副団長の実家のあれこれを頭に入れておくことにする。
ウェントブルック辺境伯。
この国にある二つの辺境伯のうちの一つ。もう一つのほうは海に面した領地であり、ほとんどが海側からの脅威に対する防備がメインの役目だ。
ウェントブルック辺境伯は、まずは他国との国境と面しているので、単純に侵略行為からの防衛。そして、広大な森を有していて、そこから溢れる魔獣の討伐。人と魔獣という戦い方も違う脅威から国を護り続けているウェントブルック辺境伯の騎士団は最強だと憧れられている。
その対極にあるのが王国騎士団で、こちらは王都の治安と王家の方々を護衛する役目。滅多に人と剣を交わすこともないし、魔獣討伐なんかしないから、最弱騎士団とか、お飾り騎士団とか、影で笑われている。実際、所属には貴族子息が多いし、見目がいいのが揃っているらしいぞ。
その最弱騎士団を、たった一人で鍛えなおし、遠方の魔獣討伐にも遠征できる騎士たちを育てたのが、ルーカス・ウェントブルックだ。
いやぁ、同性ながら惚れちまうね! 俺は遠慮しておくけど。
そして、白豚は屋敷に戻り、作戦会議である。
なんの? 決まっている、セシル・オールポートの貞操を守ろうっていう会議だっ!
「ハリソン、騎士からの情報はどうだった?」
実は、我々が王宮へ税務報告へ行くときに随行していたハリソンは、王国騎士団の訓練場へと足を運び、情報収集に勤めていた。誰の? 決まっているだろう、俺のじゃない、セシル君の元カレである、ルーカス・ウェントブルック副騎士団長についてだ!
ガリガリと後ろ頭を掻き、興味のなさそうな顔で、ハリソンはやる気なく報告をする。おい、お前の主人の貞操がかかっているんだぞ。もっと、真面目にやれ!
「へいへい。ルーカス副団長は人望もあり、騎士団の中で最強と恐れられています。あと、なんだっけ? ああ、兄である辺境伯との仲も良好で、再三、領地に戻るよう使者が訪れているようです」
「……そんなことはどうでもいいんだよっ。そのルーカスって、まだセシルのことを好きなのか?」
人格者で人から好かれていようが、俺は好きじゃない。恋愛対象ではない。男にいろいろとやられるのはイヤだ。俺が知りたいのは、そのルーカスに新しい恋人がいるかどうかだ。
「で、どうだ? そんなにスペックが高い男なら、付き合っている奴の一人や二人。十人や三〇人もいてもおかしくないだろう?」
充実した性生活を送っているから、若いときの恋愛はいい思い出として、忘れててくれないかな?
「知りませんよ、そんなことは。未だに独身ですが、騎士は独身の奴も多いですからね。セシル様をまだ思っているかどうかなんてわかりません」
「かーっ、使えねぇなっ」
ハリソン、お前、騎士たちの間では、ちょっとは名前が知られてんだろう? 下ネタで盛り上がって恋バナの一つでもしてこいよっ。
「セシル様はウェントブルック副団長とヨリを戻したいんですか?」
ディーンの質問に、俺はマッハの速さで首を横に振る。バカ、バカバカバカ、お前。なんて恐ろしいことを口にするんだっ。
「その反対だっ! 俺はそのルーカスって人の記憶もないし、今は領地経営に全力で取り組みたいし。だからといって、そのルーカスって奴が昔のことで恨み節をぶつけてきたら謝らなきゃならないし。そんなこんなで記憶がないことがバレたらややこしいだろーっ」
だから、俺はセシル君の元カレとは一切接触しないで、逃げ切りたいのだ。へい君たち、アンダースタン?
ベンジャミンとディーンは互いに顔を合わせて、コテリと首を傾げる。
「セシル様。今回の夜会はほとんどの貴族たちが出席します。参加が免除となっているのは辺境伯や遠方の者、少々財力が足りない者です」
セシル君はサボっていたけどな。
「親父……執事長の言う通りです。つまり、学園で親しかった者が参加するということ。セシル様が警戒するのはウェントブルック副団長だけでなく、当時の友人関係では?」
「へ?」
そ、そういえば、おっさん王子がセシル君にも友人がいたと言っていたな。おっさん王子は抜けているボンボン育ちだから誤魔化せているが、他の友人たちはどうだろう? いやぁ、バレるよね? むしろ外見も白豚と化しているから別人だと疑われるのでは?
「オールポートの屋敷で会ったのに元カレ……いやルーカス副団長もセシルだと気づかなかったし。むしろ記憶喪失がバレるよりも、セシル・オールポート伯爵の名前詐称で糾弾されるかもしれん」
自分で言っていて、ちょっとショック。マジか……。しかし、中身が異世界産の魂なので、詐称と騒ぎ立てられたら、正々堂々と自分がセシルだと言い切る自信もないぞ。
「セシル様。ハーディング侯爵家に使いを出し、当時の手紙の内容から、セシル様と交流のあった方をリストアップしてもらいます」
ベンジャミンはペコリと礼をすると、ススーッと部屋を出て行った。う~む、デキる執事は違うね。
「セシル様。夜会まで日にちがあまりありません。ハーディング侯爵家からセシル様の友人リストが届いたら、お勉強ですよ?」
「ほへ? な、なんの勉強をするんだ?」
俺……オールポート家の税務報告作成で頭がショートするほど働いたんだけど……。
「もちろん、お友達である方の爵位、領地、関係のある貴族。オールポート家との関係に利があるかどうか、ですね」
ニッコリと笑うヴァスコの背中に悪魔の羽が見えた気がした。
その日の夜。
とりあえず、元カレであるルーカス副団長の実家のあれこれを頭に入れておくことにする。
ウェントブルック辺境伯。
この国にある二つの辺境伯のうちの一つ。もう一つのほうは海に面した領地であり、ほとんどが海側からの脅威に対する防備がメインの役目だ。
ウェントブルック辺境伯は、まずは他国との国境と面しているので、単純に侵略行為からの防衛。そして、広大な森を有していて、そこから溢れる魔獣の討伐。人と魔獣という戦い方も違う脅威から国を護り続けているウェントブルック辺境伯の騎士団は最強だと憧れられている。
その対極にあるのが王国騎士団で、こちらは王都の治安と王家の方々を護衛する役目。滅多に人と剣を交わすこともないし、魔獣討伐なんかしないから、最弱騎士団とか、お飾り騎士団とか、影で笑われている。実際、所属には貴族子息が多いし、見目がいいのが揃っているらしいぞ。
その最弱騎士団を、たった一人で鍛えなおし、遠方の魔獣討伐にも遠征できる騎士たちを育てたのが、ルーカス・ウェントブルックだ。
いやぁ、同性ながら惚れちまうね! 俺は遠慮しておくけど。
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