転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

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領地経営編③

領主、熊と狼と戯れる

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俺は悟った。

もう……終わりや……。だって、腕が六本もあって体長三メートル超える熊がさ、「ガオーッ!」「ガオーッ!」って吠えているんだよ? しかも魔獣って強力個体は魔法が使えるというラスキン博士の講義を証明するように、あの熊の周りにビュンビュンと風を切る音が纏わりついていて……。

さっきから、枝やら葉っぱやらが風に切られて、空に舞ってるんだよおおおおぉぉっ!

「ひいーっ、俺、死んだぁーっ」

ガバッと手で頭を庇ってその場にしゃがみこむ俺と、その俺を守るようにブランドンたちが囲む。

「セシル様、しっかりしてください。鉱山夫たちを呼んできますから、輿に乗って避難してください」

ディーンの冷静な言葉に俺の頭も少しは冷えてきたが、それでもチラリと覗き見る熊の魔獣の猛々しさよ……。あれ? ハリソンとレナードたちはどうした?
ひょこと首を伸ばして右左右と視線をキョロキョロさせる俺に、ブランドンが眉を下げて言葉をかけてくる。

「どうしました? また腰が抜けてしまいましたか?」

「まだ抜けてない! いや、ハリソンとレナードはどうした?」

一応あれでも俺の護衛と領民なのでな、心配するだろうよ。しかし、俺の質問にブランドンはうぐっと唇を噛みしめ頭痛が痛いと顔を顰めて、熊のやや後方を顎で指す。
んむ? なんかぴょこぴょこ動いているな……って、ハリソンとレナードか? なにやってんの? もしかして凶悪熊の後ろから攻撃しかけてんの?

「バカか、あいつら」

しかも、楽しそうに「そっちだレナード」や「ハリソン、避けろ」とかきゃいきゃい騒ぎながら剣を振るっている。嘘だろう? あいつらには恐怖心というものがないのか?

「ちっ、ハリソン団長め。鉱山夫たちも熊の討伐に夢中でこっちの呼びかけに応じません」

ディーンの忌々しげなセリフにブランドンがため息を一つ吐いて、いざとなったらハーディング家の騎士たちで輿を担ぐと約束してくれた。

「いやいや、ハリソンやレナード。鉱山夫たちが熊と戯れているなら、ラスキン博士はどうした?」

爺を放って熊と遊んでじゃないよ! あれでもうちの国で有名な先生なんだから。オールポート領預かり中に万が一があったら大変でしょう? ちゃんと護衛しておけよ、レナード。俺、ちゃんと頼んだよね? ラスキン博士のこと任せたよって。

キィーッとヒステリーをおこしている俺の目の前にスウーッと腕が伸びてその手の先がある場所を指す。この細い腕はメイか?

「ラスキン博士なら、あそこに。一心不乱に熊のスケッチをしています」

「はあああああぁぁぁ?」

なにやってんの? 爺、マジでなにやってんの?

「昨日、タロウとハナコのスケッチができなかったと悔やんでおられたので、本日はちゃんとスケッチブックなどをご用意いたしました」

ペコリとメイが頭を下げ、スススーッと後ろの定位置へ下がっていく。え? メイの手配でスケッチブックを用意してあげたの? だから、ラスキン博士は、魔獣の観察とばかりに風魔法の攻撃が四方八方に打ちまくられている中、呑気に熊の絵を描いてんの?

「はああああぁぁっ、バカか、こいつら」

このままだと、オールポート家の生け造りができちゃうでしょ!

「どうしますか? 俺たちだけでも撤退します?」

「そりゃしたいけど……。ヒッャハーしている奴らを置いていくわけにはいかんだろう。ラスキン博士もいるし……」

ここにいては、いつ熊野郎の風魔法の余波が飛んでくるかわからない。俺の体は人様よりふくよかなため、狙ってなくても攻撃が当たってしまうかもしれない。

「セシル様、危ないっ」

ドンッとディーンに突き飛ばされて、コロンと転がる俺。いや、やめれ。俺はこの体勢から起き上がるのは厳しいいいいぃぃっ。コロンコロンと左右に転がり、ブランドンの手を借りて体を起こすと、俺を突き飛ばしたディーンの腕から血が滴り落ちていた。

「ディーン!」

「だ、大丈夫です。ちょっと切れただけです」

ハーディング家の騎士の一人がディーンの血止めをし、神経とかが傷つけられていないか確かめてくれている。
はわわわっ、ディーンが怪我をしてしまった。これは、マズい。早くここから離れなければいけない!

アオーンッ! アオーンッ!

「ひいいいいっ、今度はなんだ!」

突然の狼の遠吠えにヤケになって叫ぶと、ブランドンが声のした方へ手を翳して目を眇めてみる。

「セシル様。昨日の狼……コホン。タロウとハナコです」

「なに?」

ブランドンの視線の先には、一際大きな黒い狼が威厳たっぷりに立っていて、傍若無人に暴れる熊を睥睨していた。そのやや後ろに寄り添うように白い狼、その後ろには群れの子分狼たちが勢ぞろいだ。

「グルッ?」

タロウはこちらに視線を投げて、コテンと首を傾げた、うわーっ、かわいい。あのもふもふの毛に顔を埋めてみたーい! 俺の邪心が届いてしまったのか、タロウはフイッと顔を熊に戻してしまった。

さて、これで俺たちと熊とタロウたちの三竦み状態になったわけだが……タロウたちと協力して熊を倒すことはできるだろうが?
腕を組んでう~むと考えること、暫し。考えたってわからないから、行動あるのみだよな!

俺は熊と戯れているバカモノたちを呼び戻すことにした。
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