転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

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恋愛編① 冬ごもり

セシル、親友を感じる?

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ひょい……。ひょいひょい……。

「無視かよっ」

俺は持っているタオルを床に叩きつけた。

ヴァゼーレから連れてきた魔獣狼じゃなかった、神獣に格上げされた狼タロウとハナコの子ども。ブルーグレーの毛並みが美しい赤ちゃん狼だが、俺にくっついて離れないというかわいいムーブをかましてきた。
そりゃ、俺も絆されるわけで、しょーがないから遊んでやるかと、タオルを仔狼の前でヒラヒラとさせたが、つまらなさそうに視線を寄越すと、フンッと鼻を鳴らして伏せの状態……昼寝に突入しやがった。

なんでだよっ。ヒラヒラとしたタオルに興味津々で前足でちょんちょん突いてみたり、小さな体でジャンプして飛びついてみたりするでしょう?

「それは猫です。その仔は狼……犬系? つまり、ヒラヒラしたものに興味はないです」

ディーンにサクッと突っ込まれた。くそっう、いいじゃないか、仔猫のようにぴょんぴょんしても! かわいいじゃないか! 俺はそのかわいい動画ばりの癒しが欲しい!

「ルーカス副団長のことで、その仔に八つ当たりをしないでください」

「ちがうわっ」

プリプリと頬を膨らまし、ヴァゼーレに来るときにも泊まった村の俺専用のテントの中、分厚い敷物の上にコロンと横になる。行儀は悪いが、この太ましい体では、床に直接座ると足に負担がかかる。膝が壊れてしまうので、コロンと横臥するのが一番いいのだ。
ふすふすと俺の胸で匂いを嗅いで満足するとぽてぽてと歩き、俺の腹まで移動する毛玉。

「どうすっかなぁ、こいつ」

「お屋敷で飼うのでは?」

自分で淹れた紅茶を味わい、俺の目の前でトビー特製の焼き菓子を頬張るディーン。お前、まだ持ってたのか? さては、隠し持っていたな?

「飼うって、こいつは神獣の子どもだし。ラスキン博士に預かってもらうほうがいいかな?」

「ガウッ」

「……。セシル様、こいつはイヤだって訴えてます」

無表情で言うな。俺にだってわかるわ。……タロウとハナコだけでなく、こんな仔狼まで人語を理解しているだと? 本当に神獣なんじゃないの?

「う~ん、シャーロットちゃんたち狼大丈夫かな?」

この世界に犬アレルギーがあるかどうかわからんが、単純に犬が苦手という人もいるだろう。俺は仔狼の頭や顎まわりをわしゃわしゃと撫でてやる。

「犬じゃないでしょ。狼でしょ。苦手でも克服してもらうか、必要最低限の接触になるよう立ち回ってもらうしかありません。なにせ、もう預かってしまったので」

そうだよね。今さら、やっぱり返しますってタロウとハナコに言ったら、めちゃくちゃ怒られるもんね。そのまま仲違いしてしまうと、魔石を採掘するときに邪魔されるかもしれないから、俺たちの友好の印にこの仔は大切に預からないと。

「じゃあ……名前か?」

キラリーンと光った俺の右目にディーンがイヤな顔を向けた。なんだよーっ。

「タロウとハナコとかですか? なんですか、あの名前。やめてあげてくださいよ。タロウ……かわいそうです」

「はあっ? 覚えやすくて呼びやすくて最高だろうがっ」

チビとかポチとかよりもいいでしょう? ディーンの奴はセンスがないなーっ。わーははははっ、安心しろ、仔狼よ。俺がマーベラスでゴージャス名前を付けてやろう。
別に、ヴァゼーレを出発して最初に宿泊するこの村に暇つぶしのものがないから、仔狼の名前を考えることで時間をつぶそうとしているわけではない。絶対にない。

「ジロウ」

つーん。こいつ……俺に尻を向けやがった。ディーンも半眼で俺を睨んでいる。
だ……だめ? お父さんとお揃い感があっていいと思うんだけど……だめ?

「えっ、えっとだなぁ……。あ、ハチとか……」

つーん。じとーっ。

「うぐっ。じゃあ、カッコイイ名前で、ジャステス!……だめ? んっと、エクスカリバーは剣の名前だし……流行っていたのは、モカとかココアとか」

つーん、つーん。ガブガブって甘噛みすんなっ。ディーンは主人を絶対零度の視線で射殺さない!

俺はふーっとため息を吐くと、仔狼の小さな体をひょいと持ち上げて、顔を突き合わせた。

「どんな名前がいいんだよ。あっ……と、タクミとか?」

それは前世の俺の名前だ。しかし……仔狼の尻尾が嬉し気にブンブンと振られている。体を持ち上げている手にバシバシッ当たるからバレているぞ。でも……さすがに「タクミ」はなぁ……。

「マシになったみたいですが、気に入ったわけではなさそうですよ」

ディーンの言葉に仔狼の顔をまじまじと見ると、一部グルルッと歯をむき出して不満を表していた。だから、なんでだよっ。

「タクミ繋がりだと……リヒト……なんてね?」

ハハハ、イッツ、ジョーク! と笑い飛ばそうとしたら、仔狼は「キャウン」とかわいく吠えて、ペロペロと俺の顔を舐め回し始めた。

「うわっ、やめろ。くすぐったい、やめろ」

「その名前が、すごく気に入ったみたいですね」

「キャン!」

そうなの? 俺の親友の名前だけど、いいの?

「リヒト?」

「キャン」

なあにと小首を傾げて、あざとかわいく返事をする仔狼。そして、この名前付けから、この仔狼リヒトは、理人かと思うような行動を取るようになる。まるで理人が「気づけ」と俺を急かしているようだった。

「まさかね?」

ここは異世界。理人とは世界で隔てられ交わることはない。
俺は拓海の姿ではなく、セシル・オールポート伯爵としてものすごいデブの姿で過ごしている。自虐で言っているが白豚だ。ブヒブヒ。
もし、理人の魂が同じ世界に来たとしても、このセシルが拓海だとは気づきまい。

「キャウン?」

仔狼のリヒトが、俺をバカにするように鳴いた。こいつ……厳しい躾が必要だな!
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