転生したら悪役令嬢の白豚パパでした!?~うちの子は天使で元恋人は最強騎士です?オーラを見極め幸せを掴め!~

緒沢利乃

文字の大きさ
151 / 234
恋愛編② ウェントブルック領

セシル、寝正月求む

しおりを挟む
明けましておめでとうございまーす! ……という挨拶は異世界ではしないらしい。なに、それ? 新しい年を迎えるのに、いつもと同じでいいの? かわいいシャーロットちゃんやトレヴァー君にお年玉をあげなくてもいいの? 朝からお酒飲んで騒いで、コタツでうたた寝とかのぐうたらなお正月は?

「セシル様。お体の具合でも悪いのですか?」

「……なんでもない。気にするなベンジャミン」

正月の朝から洋食を食べる俺。辛い……けど、俺、正月にレトルトカレー食ってたわ。

「お父様?」

「うぅ~ん。ほら、俺は記憶がないから、新しい一年を迎えるのに……いつもと同じ朝だなぁと思って」

俺のやんわりとした探りにベンジャミンの眉がピクリと動いた。

「……そうですね。セシル様はご自身の記憶と常識もお忘れになってしまっていましたね」

「なんか、引っ掛かる言い方だが、まぁいい。一年の始めってこんなモン?」

いや、ジャコモの作るダイエット食は今日も美味いけども。お正月と言えばお餅! お餅とお雑煮とお節なのだよ、日本人は!

「特には? 雪も降っていますし、ほとんどは田舎に帰省し家族とゆっくり過ごすぐらいです。さすがに王家の方々も今日は仕事をせずにお過ごしかと」

「ふむ」

異世界の正月、イベントとしてはユルいな。でも、サレルノでは去年と違って屋根のあるちゃんとした家の暖かい部屋で過ごせているというし、ヴァゼーレでは閉山の憂いもなくなり町も新しく整備されると喜んでいると聞いた。オールポート領としては、とても幸先の良い一年のスタートが切れたと思えばいいか?

どうせ、お餅だ日本酒だお節だと願ったところでないものはないし、あってもダイエット中の白豚伯爵の口に入れるモノでもないしな。

「じゃあ、我が家もゆっくりと過ごすとするか」

使用人たちの中でも主要の使用人たちは帰る家がもうないと、帰省する者もいないし。レナードたちは根なし草だからと騎士団の寮に滞在している。ハーディング侯爵家の皆様もゆっくりと家族団欒しているだろう。

セシル君の中で目覚めた異世界産の魂は、去年一年働きづめだったので、ゆっくりとお休みすることにしたのだ。



























だから、休むって決めたじゃん。

春の社交シーズンの前にサレルノの視察をこまめに行い、父上とヴァゼーレの町の整備と魔道具師たちの招致に集中すると、やることは山盛りいっぱいなのよ。春の社交シーズンにはシャーロットちゃんも連れていくし。王都に行ったら、おっさん王子が出てくるだろうしね。
だから、休めるときに休みたいの、俺は。

「なんでここにいる、ルーカス副団長」

ルーカス・ウェントブルック王国騎士団副団長……。お前、冬まつりのあと王都に帰っていったよね? あれから、一週間ぐらいしか経ってないんだけど、どうした? 忘れ物か? だったら早く取って帰れ!

冬まつり……。領都クレモナではトビーたちが作った限定スイーツが人気を呼び、ヘクターが焼いたシュトレンのようなパンが売れに売れた。ホテルでのディナーや趣向を凝らした客室は一部の耳聡い貴族たちが押し寄せ大盛況。賑やかなお祭り騒ぎの中で、静謐で厳かな佇まいの大聖堂は祭のメイン会場だ。

俺はまず、大聖堂までの小道の脇に小さな灯りの魔道具を等間隔に設置した。足元暗いと危ないから。そうしてぼんやりとした灯りに照らされた道を進むと白い布と蝋燭の灯りで彩られた大聖堂(改築済)が現れる! んで、周りの木々もそのままだと寒々しいので、イルミネーションみたいに小さな赤と青とか緑とかに光る紐状の魔道具を作らせて飾らせた。ちゃんとチカチカするように設定してもらったぞ!

ふふふ……この厳粛であり尊い雰囲気の大聖堂ならば、敬虔な祈りの場としてチャラい恋人たちの永遠の愛プークスクスみたいな祈りは捧げられないだろう。
そう、思ったんだけど……。ちゃんと家族でお祈りに来てたり共白髪の微笑ましい老夫婦とかもいらっしゃったりしたのですが……無念! 恋人たちにも大好評でした……。ちっ、爆ぜろリア充がっ。

そんなムードたっぷりな中、ルーカスと手を繋いで大聖堂を訪れた俺を慈愛溢れる微笑みで迎えてくれたリベリオ大司教様は、とてもありがたい説法を聞かせてくれた。

おっかしいなぁ。ほぼ、俺の戦略どおりに進んでいたのに、結果が俺の望みとやや斜め方向に違うんだが……。
大聖堂でシャーロットちゃんたちと合流して、トビーの店の個室でスイーツを堪能して大満足で帰ってきた翌日、ルーカスは王都へ帰っていった。

なのに……なぜここにいる?

「セシル。会いたかったよ」

ふわっと微笑むな! ふわっと顔を綻ばせるな! さてはお前、自分の顔面偏差値の高さを認識していないな? バカめっ、そういう無意識は危険な行動に繋がるので、俺ってカッコイイって百回大声で言って、世間の皆様から冷たい目で見られてしまえっ!
やっべぇ、頭の中で叫んでいるだけなのに、呼吸が荒くなってきちまったぜ。ゼーハーゼーハー。

「俺はルーカスがここに来た理由を聞いている」

伯爵様の威厳たっぷり攻撃だ! どうだ!

「セシル……。どうか俺と一緒にウェントブルック領に来てほしい」

「へ?」

ウェントブルック領ってお前の実家。お前の実家は辺境伯家。辺境伯って文字通り国の辺境を守る貴族。王都から近いオールポート領から、ものすっごく離れた領地なのでは?

「え? ええーっ!」

なんで俺がそんな僻地にお前と一緒に行かなければならんのだーっ!
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜

なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。 藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!? 「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」 ……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。 スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。 それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。 チート×獣耳×ほの甘BL。 転生先、意外と住み心地いいかもしれない。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

処理中です...