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嵐は突然に
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チュンチュンと、小鳥が囀る音で目が覚める俺。
いってぇー……。
頭がズキズキして、胸がムカムカする。
完全に二日酔いだな……久しぶりの二日酔いだ。
しばらくベッドの中でゴロゴロしたあと、気合を入れてもぞもぞと起き上がる。
「あれ?」
ここは俺が泊まっている宿の俺が借りている部屋。
でも俺には、部屋に戻ってきた記憶が無い。
昨日はどうしたんだっけ……。
うーん、とベッドの上で胡坐をかき腕を組んで考えてみる。
しかし、頭が痛い。
昨日の出来事を思い出す前に、俺はグイッとポーションを飲んで体調回復に努める。
「……あ、効いてきた……かな?」
重苦しい痛みが頭の奥からスウーッと消えていき、胸のムカつきも収まり、腹の虫が「くうっ」と可愛く鳴った。
そして、思い出す昨日の俺……。
「あーっ!」
ガバッと両腕で頭を抱え込んで、その場にしゃがむ。
そうだ、そうだよっ。
俺は昨日、二人の男に対して【人生の選択】が出ちゃったんだ。
よりにもよって、仕事先の上司と、俺のささやかな癒し枠が、「抱く」か「抱かれる」かの相手だなんて。
しかもペット枠の可愛い系男子が、肉食系男子で俺の味見をしてきたなんて……。
「俺、元の世界に戻りたい……」
わっと顔を両手で覆って、ちょっと泣いた。
でも、その後すぐに宿屋の食堂に移動したけど。
だって、腹が減ったんだもん。
昨日のことは、後でゆっくり考えよう。
宿屋の一階の食堂の隅の席で、もきゅもきゅと朝ご飯を食べる。
ここの料理は本当に美味い。
あんな恰好のヤローが作っているけど、そんなことは関係ない。
美味しいは正義なのだ。
「ねえ、アオイちゃん。知ってる?サブマスの話」
コトンとテーブルに、おかわりのパンとソーセージの皿を置いてくれた、宿屋のキッチン担当マッチョオネエは、俺の向かいの席に許しもなく座ると憂い顔で話かけてきた。
「サブマスって、イリヤさんですか?」
最近は俺のケツを守るためにも、避けて避けまくっているから会ってはないんだよな?
どうかしたのか? イリヤさん。
できれば、新人冒険者に標的を移して、俺のことは忘れていて欲しいんだが……。
「あらっ! 知らないのね? あんなに熱心に口説かれてたのにアオイちゃんってば逃げまくるから。あんなにイイ男はそうそういないわよー」
「ハハハ……ハハ……はあーっ」
日本人秘技の愛想笑いで誤魔化すが……男に対してイイ男なんて価値はないんだよ……ってこの世界は男しかいねぇーじゃねぇかっ!
「イリヤさんね、今日の朝早くに暴漢に襲われたらしいわよ? 怪我もしたみたい。凄い強い人なのに、怪我を負わされるなんて相手も相当強いと思うわ」
「へ? 襲われたんですか?」
「ええ。家からギルドに行く間で。暴漢には逃げられたから、今頃ギルド総出で追いかけてると思うわ。ギルドも面子があるもの」
「イリヤさんはサブマスでも、ギルマス代理ですもんね……」
「それもあるけど、イリヤさんは……って、たーいへん! アタシが余計なことをアオイちゃんに教えたら怒られちゃうわ。うふふ」
うふふと可憐に笑い声を残して、マッチョオネエはキッチンへと戻っていった。
うふふ、てなんだよっ!
似合わない可愛い言動があんたの筋肉を裏切ってんだよっ!
ちくせう。
せっかく、美味いご飯を食べていたのに。
気分を少々害してしまった。いや、筋肉は悪くない。あの、俺とイリヤさんをどうにかしようと企むにやけ顔が悪いんだ!
でも……イリヤさん。
怪我をしたのか……。大丈夫なのかな? 酷い傷なのかな?
この世界に来てからの少ない知り合いだからか、ちょっと気になってしまう。
ご飯食べ終わったら、ギルドに行ってみようかな。
俺も一応は冒険者だしな……。
そして、ソワソワと落ち着かない気持ちを隠して、足早に宿屋を出てギルドへ向かおうとした俺の耳に、さらに衝撃的な噂話が入ってきた。
「おいおい! 聞いたか? 今度はAランク冒険者のジンが襲われたって。しかも相手も一人だったらしいぞ?」
「は? 高ランク魔獣討伐をソロで受けるジンだろう? 襲った奴なんて瞬殺でやられるだろう?」
「それが、ジンに一太刀浴びせて、まんまと逃げたらしいぜ。しかもそいつは無傷で、だ!」
「マジか!」
「襲われたのもついさっきのこと。明るいお天道さまの下で凶行に及んだ奴の正体は誰なんだろうな?」
……通り過ぎたおっさんたちの会話で、俺はピキーンと固まってしまった。
ジンが襲われて、怪我をした?
なんだなんだ! なんだっていうんだ!
イリヤさんに続きジンまで襲われるなんて!
「と、とにかく、ギルドに行こう……」
イリヤさんもジンも怪我をしたらしいけど、誰も怪我の程度は教えてくれない。
どうか……とうか……。
「無事だよな……?」
ギルドに向かう俺の足は、いつの間にか小走りから全力疾走に変わっていた。
いってぇー……。
頭がズキズキして、胸がムカムカする。
完全に二日酔いだな……久しぶりの二日酔いだ。
しばらくベッドの中でゴロゴロしたあと、気合を入れてもぞもぞと起き上がる。
「あれ?」
ここは俺が泊まっている宿の俺が借りている部屋。
でも俺には、部屋に戻ってきた記憶が無い。
昨日はどうしたんだっけ……。
うーん、とベッドの上で胡坐をかき腕を組んで考えてみる。
しかし、頭が痛い。
昨日の出来事を思い出す前に、俺はグイッとポーションを飲んで体調回復に努める。
「……あ、効いてきた……かな?」
重苦しい痛みが頭の奥からスウーッと消えていき、胸のムカつきも収まり、腹の虫が「くうっ」と可愛く鳴った。
そして、思い出す昨日の俺……。
「あーっ!」
ガバッと両腕で頭を抱え込んで、その場にしゃがむ。
そうだ、そうだよっ。
俺は昨日、二人の男に対して【人生の選択】が出ちゃったんだ。
よりにもよって、仕事先の上司と、俺のささやかな癒し枠が、「抱く」か「抱かれる」かの相手だなんて。
しかもペット枠の可愛い系男子が、肉食系男子で俺の味見をしてきたなんて……。
「俺、元の世界に戻りたい……」
わっと顔を両手で覆って、ちょっと泣いた。
でも、その後すぐに宿屋の食堂に移動したけど。
だって、腹が減ったんだもん。
昨日のことは、後でゆっくり考えよう。
宿屋の一階の食堂の隅の席で、もきゅもきゅと朝ご飯を食べる。
ここの料理は本当に美味い。
あんな恰好のヤローが作っているけど、そんなことは関係ない。
美味しいは正義なのだ。
「ねえ、アオイちゃん。知ってる?サブマスの話」
コトンとテーブルに、おかわりのパンとソーセージの皿を置いてくれた、宿屋のキッチン担当マッチョオネエは、俺の向かいの席に許しもなく座ると憂い顔で話かけてきた。
「サブマスって、イリヤさんですか?」
最近は俺のケツを守るためにも、避けて避けまくっているから会ってはないんだよな?
どうかしたのか? イリヤさん。
できれば、新人冒険者に標的を移して、俺のことは忘れていて欲しいんだが……。
「あらっ! 知らないのね? あんなに熱心に口説かれてたのにアオイちゃんってば逃げまくるから。あんなにイイ男はそうそういないわよー」
「ハハハ……ハハ……はあーっ」
日本人秘技の愛想笑いで誤魔化すが……男に対してイイ男なんて価値はないんだよ……ってこの世界は男しかいねぇーじゃねぇかっ!
「イリヤさんね、今日の朝早くに暴漢に襲われたらしいわよ? 怪我もしたみたい。凄い強い人なのに、怪我を負わされるなんて相手も相当強いと思うわ」
「へ? 襲われたんですか?」
「ええ。家からギルドに行く間で。暴漢には逃げられたから、今頃ギルド総出で追いかけてると思うわ。ギルドも面子があるもの」
「イリヤさんはサブマスでも、ギルマス代理ですもんね……」
「それもあるけど、イリヤさんは……って、たーいへん! アタシが余計なことをアオイちゃんに教えたら怒られちゃうわ。うふふ」
うふふと可憐に笑い声を残して、マッチョオネエはキッチンへと戻っていった。
うふふ、てなんだよっ!
似合わない可愛い言動があんたの筋肉を裏切ってんだよっ!
ちくせう。
せっかく、美味いご飯を食べていたのに。
気分を少々害してしまった。いや、筋肉は悪くない。あの、俺とイリヤさんをどうにかしようと企むにやけ顔が悪いんだ!
でも……イリヤさん。
怪我をしたのか……。大丈夫なのかな? 酷い傷なのかな?
この世界に来てからの少ない知り合いだからか、ちょっと気になってしまう。
ご飯食べ終わったら、ギルドに行ってみようかな。
俺も一応は冒険者だしな……。
そして、ソワソワと落ち着かない気持ちを隠して、足早に宿屋を出てギルドへ向かおうとした俺の耳に、さらに衝撃的な噂話が入ってきた。
「おいおい! 聞いたか? 今度はAランク冒険者のジンが襲われたって。しかも相手も一人だったらしいぞ?」
「は? 高ランク魔獣討伐をソロで受けるジンだろう? 襲った奴なんて瞬殺でやられるだろう?」
「それが、ジンに一太刀浴びせて、まんまと逃げたらしいぜ。しかもそいつは無傷で、だ!」
「マジか!」
「襲われたのもついさっきのこと。明るいお天道さまの下で凶行に及んだ奴の正体は誰なんだろうな?」
……通り過ぎたおっさんたちの会話で、俺はピキーンと固まってしまった。
ジンが襲われて、怪我をした?
なんだなんだ! なんだっていうんだ!
イリヤさんに続きジンまで襲われるなんて!
「と、とにかく、ギルドに行こう……」
イリヤさんもジンも怪我をしたらしいけど、誰も怪我の程度は教えてくれない。
どうか……とうか……。
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ギルドに向かう俺の足は、いつの間にか小走りから全力疾走に変わっていた。
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