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カケスの町に通うことになった。
仕事だ。でも人は殺さないし、傷つけたりしなくてもいいらしい。
いや、その方が難しい。
なんで、俺に人の護衛? 違うな……「守れ」とは命じられていない。
監視……だろうか? とりあえず、不味いことをしないように見張れと言われた。
でも、そいつは気配に敏いし強いから、ただ見張ればいいと言われても、骨が折れる仕事だった。
本当に、俺には向いていない命令だと思った。
上は、「たまには、お前にも易しい任務を与えないとな」と言っていたから、この仕事は善意なんだろう……と思いたい。
サクッと殺したり、傷つける方が簡単なんだが……。
だが、それを告げると、みんなが痛ましい顔で俺を見る。
いやいや、お前らだって似たような任務ばかりだろうが?
なんだが、その場が居た堪れなくて、命令どおりカケスの町に来て奴を見張り、何日か毎に王都に戻り上に報告する。
それは単純な毎日で……、生きているか死んでいるかわからない毎日になってしまった。
今日はしくじった。
監視対象が数日前からイライラしていて、いつもの距離からだと気づかれてしまうようになった。
遠目は利くが、唇を読みにくく何を話しているのかわかりづらい。
なんでも、王都からきた冒険者と揉めているらしい。
そして、誰かを探してやたら無駄にカケスの町を歩き回りやがる。
何回か見失ってしまった。
夜も更けて、ようやく奴が家に帰ったのを見届けた俺は、朝から何も食べていないことを思い出す。
任務の特質上、何日か食べなくても大丈夫だが、思い出したら腹が減ってきた。
でも……すごく疲れている。
ちょっと、繁盛している宿屋の裏の繁みの中に座り、ひと休みをしよう。
体力はまだあるし、なんだったらあと数日は食べなくても動けるが……慣れない任務で精神が疲弊している。
「ふうーっ」
いっそのこと、監視対象を闇に葬ってしまおうか?
いやいや、そんなことしたら同僚全員から命を狙われる立場になる……が、それも面白いかもしれない。
俺がやや危ない思考に没入していた頃、繁みを掻き分け覗き込む痩せた男と目が合った。
何かを話しかけられたが、動揺していて返事が返せない……けど、腹は鳴った。
「これ、喰う?」
男から差し出された屋台の皿を受け取り、ガツガツと食べ始める。
腹は減っているけど、そうじゃなくて、何かを口に詰め込まないと、何かを言ってしまいそうになった。
男は、再び屋台に買い物に行き、なぜか俺の隣に座り食事を始めた。
え? なんで?
困惑する俺。でも口には何かを詰め込み咀嚼する俺。
男は、あれこれと皿を差し出し、食べ物を分けてくれ、飲み物もくれた。
こいつ、こんなに人が好すぎて大丈夫か? カモられないか?
でも……隣に座るぬくもりが珍しくて不思議な気分になる。
ひととおり食べたあと、逡巡したがペコリと頭を下げてお礼をして、その場を去った。
後で思い起こして、一般人の前で屋根を渡って去った失態に悶絶したが……。
その男とは、何度か宿屋の裏で会い、屋台の飯を食った。
いや……、その男がその宿に泊まっていることも、冒険者であることも、ビビビ草の採取の達人のことも、アルカサル侯爵家の依頼を受けていることも、調べて調べ尽くした。
ただ、こうしてたまに隣に座って短い時間でも共有できれば、それで良かった。
満たされた。幸せ? だったと思う。
あの日……あの男が酒に酔って泣きながら、俺に愚痴るまでは……。
イリヤ・クルムロフ
ジン・シュヴァンガウ
ルイ・レドニツェ
こいつらが、男を苦しませ悲しませている。
俺の監視対象も混じっているが、仕方ない。
こうなったら男の心の安寧と俺のためにも死んでもらおう。
監視対象で良かった。護衛対象だったら、殺すことはできなかった。
問題は、高ランク冒険者たちの実力だが……、殺るしかないだろう。
もうひとりは簡単に殺れるから後回しにして、強い順に手をかけていこう。
待ってろよ。すぐにお前を悩ます奴等は綺麗に片付けてやる。
だから、そばにいてくれ。
俺のそばに。
仕事だ。でも人は殺さないし、傷つけたりしなくてもいいらしい。
いや、その方が難しい。
なんで、俺に人の護衛? 違うな……「守れ」とは命じられていない。
監視……だろうか? とりあえず、不味いことをしないように見張れと言われた。
でも、そいつは気配に敏いし強いから、ただ見張ればいいと言われても、骨が折れる仕事だった。
本当に、俺には向いていない命令だと思った。
上は、「たまには、お前にも易しい任務を与えないとな」と言っていたから、この仕事は善意なんだろう……と思いたい。
サクッと殺したり、傷つける方が簡単なんだが……。
だが、それを告げると、みんなが痛ましい顔で俺を見る。
いやいや、お前らだって似たような任務ばかりだろうが?
なんだが、その場が居た堪れなくて、命令どおりカケスの町に来て奴を見張り、何日か毎に王都に戻り上に報告する。
それは単純な毎日で……、生きているか死んでいるかわからない毎日になってしまった。
今日はしくじった。
監視対象が数日前からイライラしていて、いつもの距離からだと気づかれてしまうようになった。
遠目は利くが、唇を読みにくく何を話しているのかわかりづらい。
なんでも、王都からきた冒険者と揉めているらしい。
そして、誰かを探してやたら無駄にカケスの町を歩き回りやがる。
何回か見失ってしまった。
夜も更けて、ようやく奴が家に帰ったのを見届けた俺は、朝から何も食べていないことを思い出す。
任務の特質上、何日か食べなくても大丈夫だが、思い出したら腹が減ってきた。
でも……すごく疲れている。
ちょっと、繁盛している宿屋の裏の繁みの中に座り、ひと休みをしよう。
体力はまだあるし、なんだったらあと数日は食べなくても動けるが……慣れない任務で精神が疲弊している。
「ふうーっ」
いっそのこと、監視対象を闇に葬ってしまおうか?
いやいや、そんなことしたら同僚全員から命を狙われる立場になる……が、それも面白いかもしれない。
俺がやや危ない思考に没入していた頃、繁みを掻き分け覗き込む痩せた男と目が合った。
何かを話しかけられたが、動揺していて返事が返せない……けど、腹は鳴った。
「これ、喰う?」
男から差し出された屋台の皿を受け取り、ガツガツと食べ始める。
腹は減っているけど、そうじゃなくて、何かを口に詰め込まないと、何かを言ってしまいそうになった。
男は、再び屋台に買い物に行き、なぜか俺の隣に座り食事を始めた。
え? なんで?
困惑する俺。でも口には何かを詰め込み咀嚼する俺。
男は、あれこれと皿を差し出し、食べ物を分けてくれ、飲み物もくれた。
こいつ、こんなに人が好すぎて大丈夫か? カモられないか?
でも……隣に座るぬくもりが珍しくて不思議な気分になる。
ひととおり食べたあと、逡巡したがペコリと頭を下げてお礼をして、その場を去った。
後で思い起こして、一般人の前で屋根を渡って去った失態に悶絶したが……。
その男とは、何度か宿屋の裏で会い、屋台の飯を食った。
いや……、その男がその宿に泊まっていることも、冒険者であることも、ビビビ草の採取の達人のことも、アルカサル侯爵家の依頼を受けていることも、調べて調べ尽くした。
ただ、こうしてたまに隣に座って短い時間でも共有できれば、それで良かった。
満たされた。幸せ? だったと思う。
あの日……あの男が酒に酔って泣きながら、俺に愚痴るまでは……。
イリヤ・クルムロフ
ジン・シュヴァンガウ
ルイ・レドニツェ
こいつらが、男を苦しませ悲しませている。
俺の監視対象も混じっているが、仕方ない。
こうなったら男の心の安寧と俺のためにも死んでもらおう。
監視対象で良かった。護衛対象だったら、殺すことはできなかった。
問題は、高ランク冒険者たちの実力だが……、殺るしかないだろう。
もうひとりは簡単に殺れるから後回しにして、強い順に手をかけていこう。
待ってろよ。すぐにお前を悩ます奴等は綺麗に片付けてやる。
だから、そばにいてくれ。
俺のそばに。
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