【再々掲】男だけの異世界に転移しちゃった! 異世界人生は2択で進む「抱く」「抱かれる」さあ、どっち?

緒沢利乃

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走れ!

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俺は走っている。
ひたすら、走り続けている。

なんで、偉い奴の屋敷は高台に建てるんだ!
宿屋から冒険者ギルドまで走って、今度はギルドからアルカサル侯爵家まで全力疾走している、俺。
息が苦しいし、胸が痛いし、嫌な予感で全身から冷や汗が噴き出している。

無事でいてくれ! 襲われた二人よりも圧倒的に弱いアンタは、アイツに敵わない。
俺は俺のせいで、誰かが傷つくのは御免だし、アンタがいなくなったらまだ幼い侯爵様がどうなるか……。

「……っ! 間に合え」

気のせいか、目の前に聳える屋敷の上の空に、どんより漂う黒い雲が渦巻いているように見えた。





「ダメーッ!!」

叫んだ!
もう、喉の奥から力いっぱい叫んで、血が出るかと思った。

屋敷の門を顔パスで通った後、屋敷に入ることなく裏庭へと回る。
ルイさんの唯一の趣味というか、ストレス発散として庭いじりがある。
いつも朝食後、侯爵様が家庭教師から勉強を教わっている間、裏庭にこっそりと作った家庭菜園の世話をしているのだ。
なぜ知っているかって? 俺も手伝っているからだ!
イチゴを栽培しているのだよ、ふふふ。

裏庭に回った俺は、尻餅を付いているルイさんを目にした途端に叫んだ。
アイツの凶行を止めるために。

俺の制止の声を聴き、ルイさんに飛び掛かろうとしていた奴はピタッと動きを止め、俺の方へ怖々と視線を向けた。
そこには、ギルドで聞いた犯人の容貌そのままのアイツがいた。
ここ数日、俺が癒しとして餌付けしていた男が……。






宿屋からギルドまで、全力疾走して着いた俺は、息切れをしたままギルドの扉を開けた。
そこには、朝の混雑の時間もとうに過ぎたのに、大勢の冒険者たちがひしめき合っていた。

ひそひそと声を潜めてイリヤさんとジンの容態を話す人たちや、大声で憤りながら犯人への呪詛を叫ぶ人、その喧噪に飲まれながらも知り合いの受付職員を見つけることができた。

「……あのぅ……」

俺に気づいた彼は、目を大きく見開いた後、俺の腕を掴みギルドの隅へと誘導する。

「アオイさんもイリヤさんのことを聞いたんですね?」

俺はコクリと頷く。

「イリヤさんは左腕を少し切られただけで軽傷です。ジンさんともお知り合いでしたよね? 彼は咄嗟に剣で応戦したので怪我はありません。防具がやられたみたいですけど……」

「そう、なんですね……。はぁーっ、みんな襲われた噂はしていても怪我の具合は教えてくれなかったので」

良かった……と言っていいのか、とりあえず軽傷で済んだみたいだ。

「……イリヤさんが怪我をしたのは、僕のせいなんです。丁度、襲われた現場に居合わせて、僕が不注意に声を出してしまったので、イリヤさんの気が逸れてしまったのです」

しょんぼりする彼の肩をポンポンと叩く。
いや、俺だったらその場で気を失うか、イリヤさんを置いて逃げるかだから、君のことを悪くは言えません。

「ん? じゃあ、犯人を見たんですか?」

「はい。でも黒のローブを深く被っていて身体的特徴はほとんど分からないです。あんまり背は高くなくて細身でした。僕が声を上げたときにこちらを見たんですが、黒っぽい巻き毛に……目が……赤かったかな?」

ん? 黒い巻き毛に赤眼。
背が高くなく細身で黒いローブ?

「あと、身軽でした。イリヤさんを襲ったときもそうでしたが、逃げるときもひょいひょいと木と木を飛んで渡って、家の屋根伝いに逃げて行きましたから」

そして、忍者も真っ青な身のこなし……。
それって……。

「ジンさんを襲った奴も同じみたいです。ジンさんの証言と一致してます。かなりの手練れみたいですが、冒険者ではないみたいで……。ジンさんも知らない奴だって言ってました」

「……イリヤさんは?」

「それが、イリヤさんは顔を見なかったからわからないって。そんなことないと思うんだけどなぁ」

受付職員の彼は、ちょっと不満気な顔で呟く。

俺は冷や汗がタラタラと垂れてきていた。
彼の目撃証言は俺の最近の癒し枠と同一人物で、襲われたのがイリヤさんとジンさん。

俺は昨日、奴に何を言ったかな?
酒を飲んでベロベロに酔っぱらって、彼らに困っていることを愚痴った気がする。
でも、餌付けしていただけの俺のために、高ランク冒険者とギルドのサブマスを襲うだろうか……、いやアイツならやりそう。
だって、なんかちょっと世間離れしているというか、アホな子オーラがあったというか……。

「どうしました? アオイさん?」

「……ううん。なんでもない。教えてくれてありがとう。二人が無事で安心したよ」

俺はぎこちなく笑って、その場を離れる。
ギルドから出て……深呼吸をひとつして……走った。

やばい!
俺の不安が的中するならば、次に狙われるのはアルカサル侯爵家のルイさんだ。
だって、昨日俺が話した男は三人、イリヤさんとジンと、ルイさんだ。
ふたりは冒険者だから強くてアイツの攻撃を躱すことができた。

でも、ルイさんは?
無理だろう……普通の人だし……ということは、このままだと凶刃に倒れてこの世とおサラバしてしまう。
まずい、まずいまずい!

俺は、走る。
アイツの凶行を止めなければ!
そして、止めた後……俺はこのカケスの街を出て行こう!







こんなヤバイ状況にも関わらず【人生の選択】はピクリとも反応しない。
つくづく厄介なスキルを貰ってしまったものだ……。

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