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真相⑦
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「ふっふっふっふ……殿下、やっと2人きりになれましたわね……」
興奮しているように鼻息を荒くし、目の前の男の隣ですり寄る。結婚前なのにはしたないかなーと思ったが、これも目的の為、常識を一旦心の棚に置く。
見よ、私のキモデブスっぷりを!
白くて綺麗な指に、私の太い指を絡ませる。恐怖しかなかった顔に、嫌悪感が加わる。疑われそうな予感がしたので先手にふっと沈んだ表情で俯いた。
「殿下……わたくしはずーっと、辛かった……!」
セレナの真似をしてポツリと言ったら、一瞬だけその顔が気まずそうに歪む。
更に追い打ちをかけてやる。
「殿下に婚約破棄をされただけで打ちのめされたのに、偶然町中でお会いしたルルさんには“婚約破棄された中古品と婚約する人なんていないでしょう?”などと言われて……」
「何!」
カッと怒りを露わにするが、今更感しかない。
――男爵令嬢ねぇ……
自滅したらしいが、マリアンヌも会う機会があれば尻の10発や20発、ひっぱたいてやろうと思っている。
一度ひどい目にあっただけで、チャラになったと思っていたら大間違いだ。―とここでハッと現実に戻る。今の私はキモデブス。
「うふふ……殿下、ではいつにしましょうか」
ニタア、と笑って見つめてやれば、美丈夫な顔が更に引きつる。
「い、いつって?」
「イヤですわ、わたくし達の結婚式に決まっております♪」
クネクネしながら熱っぽく見てやると、今度は両腕をこすりだした。鳥肌になっている。この調子で、どんどん行こう。
今度は両方の頬を手で押し上げるようにした。
「一生の思い出ですもの。殿下とバージンロードを歩くのが楽しみです。子供は何人欲しいですか? 私は……」
「セ……」
「はい?」
「セレナ、私は……」
“やっぱり無かった事に”とか言おうとしているね? と気付いたマリアンヌはそこでえぐるように言った。
「“もう次はない”」
「え?」
キョトンとした王太子に、更ににじり寄って言ってやる。
「“次はない”と……仰られませんでしたか? 国王ご夫妻に」
グッと、言葉を詰まらせた。
どうやら台本通りに、王宮では進めて頂けたようだ。
公爵を通し、国王陛下に渡した台本。みんなで考えて作ったものだ。
マリアンヌが覚えているのは……。
王妃様『そなたは王家の者で、王太子です。本来なら一度決めた事をひっくり返すなど、人の上に立つ者のする事ではありません。
王家や貴族にとって、婚約は義務です。それを個人の都合で破棄しただけでも顰蹙ものなのに、その乾かぬ舌でもう一度結び治せなどとあるまじき行いです』
ここで王太子が反論したら
国王様『騙されたというなら騙される方にも多少の責はある。次期王としての教育を受けているのにも関わらず騙されたのなら、そなたに隙があったからだ』
王妃様『とにかく、肝に銘じておきなさい。次はありません』
こんな感じ、だったかな。
土壇場で裏切って真相を暴露されたら困るな、と思ってたら何と、宰相閣下が味方になってくれた。
『いざとなったらこの老骨が、ぼけたフリをしてでも止めて見せる!』って太鼓判を押してくれたそうで。感謝しつつも、この問題がどれだけ皆の悩みの種だったかが分かった。
「次はない、という事は私と再婚約したらもう、別の令嬢と婚約出来ない! という事ですのよ」
ふふふ……効果バッチリね、もう恐怖しかない、って顔で固まる王太子に、マリアンヌは手応えを感じた。だがこんなもんじゃ足りない。マリアンヌは座ったままの体勢で王太子との距離を詰め、彼を押し倒すようにしてのしかかった。
「ひっ!」
「さぁ殿下、熱い口づけを致しましょう! んーっ!!」
両手で彼の顔を挟むと、最高のキモデブス顔を作った。目を瞑りタラコ状に唇を尖らせると、ガタガタ震える顔に近づけていく。
もう少しのところで、
「む、無理だー!!!」
渾身の力で突き飛ばされた。
「きゃあん!」
「よ、用を思い出した!! 失礼する」
バタバタと走り去る足音……。
「1,2,3,4……」
しかし彼は屋敷から出られない。公爵と一緒に王太子が入室した次には使用人達が迷路を作成している。
「……10」
そろそろ行くか、とマリアンヌは立ち上がる。
部屋を出ると、予想通り廊下の向こう、まだ追いつける距離に背中が見える。
「お待ちになって、殿下ぁ……!!」
本日最高に気持ち悪い声で叫ぶと……。
ズダダダダ……!
その背中に向かって、走り出した。
興奮しているように鼻息を荒くし、目の前の男の隣ですり寄る。結婚前なのにはしたないかなーと思ったが、これも目的の為、常識を一旦心の棚に置く。
見よ、私のキモデブスっぷりを!
白くて綺麗な指に、私の太い指を絡ませる。恐怖しかなかった顔に、嫌悪感が加わる。疑われそうな予感がしたので先手にふっと沈んだ表情で俯いた。
「殿下……わたくしはずーっと、辛かった……!」
セレナの真似をしてポツリと言ったら、一瞬だけその顔が気まずそうに歪む。
更に追い打ちをかけてやる。
「殿下に婚約破棄をされただけで打ちのめされたのに、偶然町中でお会いしたルルさんには“婚約破棄された中古品と婚約する人なんていないでしょう?”などと言われて……」
「何!」
カッと怒りを露わにするが、今更感しかない。
――男爵令嬢ねぇ……
自滅したらしいが、マリアンヌも会う機会があれば尻の10発や20発、ひっぱたいてやろうと思っている。
一度ひどい目にあっただけで、チャラになったと思っていたら大間違いだ。―とここでハッと現実に戻る。今の私はキモデブス。
「うふふ……殿下、ではいつにしましょうか」
ニタア、と笑って見つめてやれば、美丈夫な顔が更に引きつる。
「い、いつって?」
「イヤですわ、わたくし達の結婚式に決まっております♪」
クネクネしながら熱っぽく見てやると、今度は両腕をこすりだした。鳥肌になっている。この調子で、どんどん行こう。
今度は両方の頬を手で押し上げるようにした。
「一生の思い出ですもの。殿下とバージンロードを歩くのが楽しみです。子供は何人欲しいですか? 私は……」
「セ……」
「はい?」
「セレナ、私は……」
“やっぱり無かった事に”とか言おうとしているね? と気付いたマリアンヌはそこでえぐるように言った。
「“もう次はない”」
「え?」
キョトンとした王太子に、更ににじり寄って言ってやる。
「“次はない”と……仰られませんでしたか? 国王ご夫妻に」
グッと、言葉を詰まらせた。
どうやら台本通りに、王宮では進めて頂けたようだ。
公爵を通し、国王陛下に渡した台本。みんなで考えて作ったものだ。
マリアンヌが覚えているのは……。
王妃様『そなたは王家の者で、王太子です。本来なら一度決めた事をひっくり返すなど、人の上に立つ者のする事ではありません。
王家や貴族にとって、婚約は義務です。それを個人の都合で破棄しただけでも顰蹙ものなのに、その乾かぬ舌でもう一度結び治せなどとあるまじき行いです』
ここで王太子が反論したら
国王様『騙されたというなら騙される方にも多少の責はある。次期王としての教育を受けているのにも関わらず騙されたのなら、そなたに隙があったからだ』
王妃様『とにかく、肝に銘じておきなさい。次はありません』
こんな感じ、だったかな。
土壇場で裏切って真相を暴露されたら困るな、と思ってたら何と、宰相閣下が味方になってくれた。
『いざとなったらこの老骨が、ぼけたフリをしてでも止めて見せる!』って太鼓判を押してくれたそうで。感謝しつつも、この問題がどれだけ皆の悩みの種だったかが分かった。
「次はない、という事は私と再婚約したらもう、別の令嬢と婚約出来ない! という事ですのよ」
ふふふ……効果バッチリね、もう恐怖しかない、って顔で固まる王太子に、マリアンヌは手応えを感じた。だがこんなもんじゃ足りない。マリアンヌは座ったままの体勢で王太子との距離を詰め、彼を押し倒すようにしてのしかかった。
「ひっ!」
「さぁ殿下、熱い口づけを致しましょう! んーっ!!」
両手で彼の顔を挟むと、最高のキモデブス顔を作った。目を瞑りタラコ状に唇を尖らせると、ガタガタ震える顔に近づけていく。
もう少しのところで、
「む、無理だー!!!」
渾身の力で突き飛ばされた。
「きゃあん!」
「よ、用を思い出した!! 失礼する」
バタバタと走り去る足音……。
「1,2,3,4……」
しかし彼は屋敷から出られない。公爵と一緒に王太子が入室した次には使用人達が迷路を作成している。
「……10」
そろそろ行くか、とマリアンヌは立ち上がる。
部屋を出ると、予想通り廊下の向こう、まだ追いつける距離に背中が見える。
「お待ちになって、殿下ぁ……!!」
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ズダダダダ……!
その背中に向かって、走り出した。
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