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公爵家の人達2
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「私はマリーよ」
「あたしはリリアンだ。よろしくな、新入り!」
言い終わり様にベシッとリリアンさんに背中を叩かれた。そしてへへっ、って感じに笑いかけて下さる。
……ちょっとだけ師匠に似ているな。女性らしさより頼もしさを感じるあたりが。
それに私は、失礼にならないようにと心がけながら、何とか初日の挨拶をした。
「チヨ・ケーチャーと申します。よろしくお願いします」
何とか皆様と一緒に、あちこちの片付けをした後。
お風呂を使われることになった旦那様と、そのお手伝いをされるアントニオさんとお別れし、私は侍女様達と改めて顔合わせをする事になった。これからお食事の支度をするので厨房での会話となる。
広さだけ見たら、男爵家の厨房と変わらない。けれど魔道具師だけに、“これ、どうすれば使えるの?”的なものがあちこちに置かれている。それらはココに来る以前――両親に拾われる前、自分がいた場所――で見たものと似ていて、操作したい気持でうずうずしてしまう。……いけない、今は目の前の事に集中しなくては。
そんな浮ついた私に気付いたように、年配の侍女様はコホン! と大きめに咳払いをして、私の意識を向けた。
「わたくしは侍女頭のマーサです。不慣れな間は、屋敷内の仕事はわたくしに付いて覚えてもらいます。ただ護衛については、執事のアントニオさんに訊いて下さい」
「はいマーサ様、よろしくお願いいたします」
侍女頭になられるなら、それなりに爵位のある家柄の方なのだろう。そう思って礼を返した。……けど、秒で訂正された。
「……“様”ではなく“さん”程度で結構ですよ。……と申しますか……。先程見た通り、貴女が思っているよりもこの公爵邸はちょっと……いえ、かなり! 違いますからね! まさか初日にあんな事が起こるなんて!」
「……てかさー、旦那様が修復魔法かけてくれりゃあ一気に終わんだよな」
頭痛を耐えるようにマーサさ……んが言われるのに、けっ、って吐き捨てるように、リリアンさんが言う。それに対し
「仕方ないでしょう? “細かいトコにまで魔力を送るのは実践だけでたくさんだ”って言われたら頷くしかないじゃない。こちらは魔導師の事情なんて分からないのだから」
と、冷静にマリーさんは歯止めをした。
ちなみにマリーさんは紫紺色の髪に薄紫の瞳を持つ、色白の美女だ。その顔は常に無表情で、感情が全く読めない。ミドルネームは話さなかったけどひょっとしたら高位貴族なのかも知れない。
……まぁ、公爵家の使用人ならありえるかな。
と、色々と考えていたら、リリアンさんが探るように、私に視線を合わせてきた。
「なぁ、お前……旦那様と以前、会った事あるのか?」
「あたしはリリアンだ。よろしくな、新入り!」
言い終わり様にベシッとリリアンさんに背中を叩かれた。そしてへへっ、って感じに笑いかけて下さる。
……ちょっとだけ師匠に似ているな。女性らしさより頼もしさを感じるあたりが。
それに私は、失礼にならないようにと心がけながら、何とか初日の挨拶をした。
「チヨ・ケーチャーと申します。よろしくお願いします」
何とか皆様と一緒に、あちこちの片付けをした後。
お風呂を使われることになった旦那様と、そのお手伝いをされるアントニオさんとお別れし、私は侍女様達と改めて顔合わせをする事になった。これからお食事の支度をするので厨房での会話となる。
広さだけ見たら、男爵家の厨房と変わらない。けれど魔道具師だけに、“これ、どうすれば使えるの?”的なものがあちこちに置かれている。それらはココに来る以前――両親に拾われる前、自分がいた場所――で見たものと似ていて、操作したい気持でうずうずしてしまう。……いけない、今は目の前の事に集中しなくては。
そんな浮ついた私に気付いたように、年配の侍女様はコホン! と大きめに咳払いをして、私の意識を向けた。
「わたくしは侍女頭のマーサです。不慣れな間は、屋敷内の仕事はわたくしに付いて覚えてもらいます。ただ護衛については、執事のアントニオさんに訊いて下さい」
「はいマーサ様、よろしくお願いいたします」
侍女頭になられるなら、それなりに爵位のある家柄の方なのだろう。そう思って礼を返した。……けど、秒で訂正された。
「……“様”ではなく“さん”程度で結構ですよ。……と申しますか……。先程見た通り、貴女が思っているよりもこの公爵邸はちょっと……いえ、かなり! 違いますからね! まさか初日にあんな事が起こるなんて!」
「……てかさー、旦那様が修復魔法かけてくれりゃあ一気に終わんだよな」
頭痛を耐えるようにマーサさ……んが言われるのに、けっ、って吐き捨てるように、リリアンさんが言う。それに対し
「仕方ないでしょう? “細かいトコにまで魔力を送るのは実践だけでたくさんだ”って言われたら頷くしかないじゃない。こちらは魔導師の事情なんて分からないのだから」
と、冷静にマリーさんは歯止めをした。
ちなみにマリーさんは紫紺色の髪に薄紫の瞳を持つ、色白の美女だ。その顔は常に無表情で、感情が全く読めない。ミドルネームは話さなかったけどひょっとしたら高位貴族なのかも知れない。
……まぁ、公爵家の使用人ならありえるかな。
と、色々と考えていたら、リリアンさんが探るように、私に視線を合わせてきた。
「なぁ、お前……旦那様と以前、会った事あるのか?」
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