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旦那様にないもの
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「……これで全部?」
「はい」
旦那様にご指摘され、私は頷く。
今目の前のテーブルには、私の愛用している武器がずらりと置かれている。大きい物が1本に、小さい投擲用のものが10本。旦那様は興味深そうに、それらを眺めた。
「ずいぶん変わった形のものだね……」
「クナイといいます」
クナイは、両方に刃のある先の方が尖った角錐型の武器だ。
男爵家の物置で、サビだらけになっていたのを見つけたものだ。お父さんに見せたら古いスコップに見えたようで、見せたら思い切りイヤな顔をされてしまった。
『そんな汚らしいモノ、捨ててしまえ! それかお前が好きなように使え!』
と言われたので、ありがたく磨いて使っている。結構、色々使えて便利。
「……“鑑定”」
武器の上に手をかざして、旦那様が瞳を伏す。ポウッとそこだけ明るくなって、何も無い空間に透明なボードのような物が浮かび上がった。
鑑定魔法。言葉通り、物質や生き物の持つ性質を知る事が出来る。とはいえ、魔力を持たない人間には無縁のものだけど。
そして鑑定が終わったら。旦那様はふわっとした笑みでこう仰った。
「……この武器は完全に無属性なのだね。魔力付与をしてあげよう」
「…………え?」
一瞬、耳を疑う。魔力付与が出来る魔力持ちはあまりいない。旦那様はオールマイティだからきっと出来るんだろうけど……きっと、それなりに値も張る。
ゴクッと息を飲んだ。私はタダでさえ借金のカタに来ている身だ。いくらかかるのか……。
「そんな顔しなくても、私を守る為のものだから無償だよ」
よほど動揺して見えたのか、クスクスと旦那様は笑いながら言って下さった。
つくづく、高位貴族って違うんだなと思う。きっとお父さんなら給金から差し引くだろう。自分達もタダではないという理由から。無償なんて絶対に言わない。
……すごい人、って本当にいるんだな。
天才(天災?)級の魔法使いで、お金持ちで、……こんなに、綺麗で。
師匠といい、旦那様といい……こんな方々に巡り会えるなんて、すごくラッキーかも知れない。
でも……。やっぱり不思議だ。
「だ、旦那様は……どうして、こんなに良くして下さるのですか?」
だって生活用品は全部用意して下さって、住み込みだから3食キッチリ頂けて。
更に驚いたのはここ、お勉強までさせてもらえる。教師役は私以外の全員が日替わりで務めている。アントニオさんは読み書きと算術、マーサさんはマナーやお茶の入れ方みたいに。マリーさんとリリアンさんはまだ未体験。
私の問いに、
「ウチで働く子達が阿呆ばかりだと恥だから。本当ならちゃんと教育されている貴族のお嬢さんを雇うとこだけど、この家じゃ無理だからね」
「あー……」
そのお答えで、納得、してしまった。
ほぼ毎日のように、何かが起こるこのお屋敷。
昨日もお庭に突如現れた巨大アオムシと戦闘する羽目になったばかり。……旦那様、なぜキャベツを巨大化なんてされたんですか!?
アオムシに見下ろされる恐怖を心底感じた使用人達に、彼は平然と言ってのけた。
『好物が大きくなったらたくさん食べられるだろう? お茶目な願いじゃないか』
しれっと言ってのけた旦那様に全員で、
『規模を考えてして下さい!(×5)』
と言い返したのは新しい記憶だ。
うん。色々揃った旦那様の、唯一持ってないもの、あったな。
……………常識だ。
「はい」
旦那様にご指摘され、私は頷く。
今目の前のテーブルには、私の愛用している武器がずらりと置かれている。大きい物が1本に、小さい投擲用のものが10本。旦那様は興味深そうに、それらを眺めた。
「ずいぶん変わった形のものだね……」
「クナイといいます」
クナイは、両方に刃のある先の方が尖った角錐型の武器だ。
男爵家の物置で、サビだらけになっていたのを見つけたものだ。お父さんに見せたら古いスコップに見えたようで、見せたら思い切りイヤな顔をされてしまった。
『そんな汚らしいモノ、捨ててしまえ! それかお前が好きなように使え!』
と言われたので、ありがたく磨いて使っている。結構、色々使えて便利。
「……“鑑定”」
武器の上に手をかざして、旦那様が瞳を伏す。ポウッとそこだけ明るくなって、何も無い空間に透明なボードのような物が浮かび上がった。
鑑定魔法。言葉通り、物質や生き物の持つ性質を知る事が出来る。とはいえ、魔力を持たない人間には無縁のものだけど。
そして鑑定が終わったら。旦那様はふわっとした笑みでこう仰った。
「……この武器は完全に無属性なのだね。魔力付与をしてあげよう」
「…………え?」
一瞬、耳を疑う。魔力付与が出来る魔力持ちはあまりいない。旦那様はオールマイティだからきっと出来るんだろうけど……きっと、それなりに値も張る。
ゴクッと息を飲んだ。私はタダでさえ借金のカタに来ている身だ。いくらかかるのか……。
「そんな顔しなくても、私を守る為のものだから無償だよ」
よほど動揺して見えたのか、クスクスと旦那様は笑いながら言って下さった。
つくづく、高位貴族って違うんだなと思う。きっとお父さんなら給金から差し引くだろう。自分達もタダではないという理由から。無償なんて絶対に言わない。
……すごい人、って本当にいるんだな。
天才(天災?)級の魔法使いで、お金持ちで、……こんなに、綺麗で。
師匠といい、旦那様といい……こんな方々に巡り会えるなんて、すごくラッキーかも知れない。
でも……。やっぱり不思議だ。
「だ、旦那様は……どうして、こんなに良くして下さるのですか?」
だって生活用品は全部用意して下さって、住み込みだから3食キッチリ頂けて。
更に驚いたのはここ、お勉強までさせてもらえる。教師役は私以外の全員が日替わりで務めている。アントニオさんは読み書きと算術、マーサさんはマナーやお茶の入れ方みたいに。マリーさんとリリアンさんはまだ未体験。
私の問いに、
「ウチで働く子達が阿呆ばかりだと恥だから。本当ならちゃんと教育されている貴族のお嬢さんを雇うとこだけど、この家じゃ無理だからね」
「あー……」
そのお答えで、納得、してしまった。
ほぼ毎日のように、何かが起こるこのお屋敷。
昨日もお庭に突如現れた巨大アオムシと戦闘する羽目になったばかり。……旦那様、なぜキャベツを巨大化なんてされたんですか!?
アオムシに見下ろされる恐怖を心底感じた使用人達に、彼は平然と言ってのけた。
『好物が大きくなったらたくさん食べられるだろう? お茶目な願いじゃないか』
しれっと言ってのけた旦那様に全員で、
『規模を考えてして下さい!(×5)』
と言い返したのは新しい記憶だ。
うん。色々揃った旦那様の、唯一持ってないもの、あったな。
……………常識だ。
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