モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの

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あの日の出会い2~公爵令嬢・アンナマリー・カトレア

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 「……?」
ガタン、と大きく揺れたと思ったら急に馬車が止まった。同時に、窓からの光が弱くなった事に気付く。
「ど、どうしたのかしら……?」
2人も気付いたようで、不安そうに顔を見合わせた。わたくしは窓から顔を出し、馭者に訊く。
「どうしたの? 来た時と道が違うようだけど」
 来た道を帰っているだけだから、もうとうに学園に着いている筈。なのに今いるのは日も差さない暗い脇道だ。
――道を間違えたのだと、思った。
 きっとこの馭者が新米で、あまり道に詳しくなく、このような場所に来てしまった。――そんな答えが来るのだと。
 それにわたくしは笑って、そんな事もあるわね、と返す。そして道を教えて上げればいい――そうなるのだと、思っていた。
 思っていた、のに……。


「お、お嬢様方……も、申し訳、ありません……!」
わたくしが見たのは、青い顔をした彼だった。
今にも死にそうな顔で、涙すらうかべながらわたくしを見る。
 気がつけば馬車の前後を、複数の男達に挟まれていた。どれも着崩した服装に、屈強な体つきをした一目見ただけで無法者だと分かる者達。
――わたくし達は……罠にかかったの?


 そして今。わたくし達は、床の上に縛られたまま転がされている。口に布を入れられてるから声も出せない。
 サリー嬢もパンジー嬢も同じ状態で、青い顔をして震えている。きっとわたくしも同じなのだろう。
 せめて……と、どうにか体を動かし、3人で身を寄せ合った。
 どうしてこうなったのでしょう? わたくし達はただ、合宿から帰ろうとしていただけなのに……。
 あの後わたくし達が連れて来られたのは、小さいけど小綺麗なコテージだった。大きな窓はカーテンが閉められ、家具は布で覆われている。季節の間だけ使われる別荘かも知れない。
「怯えなくてもいいんだぜ? オジョウサマ方」
男達の1人が、わたくし達に近付いてきた。顔の真ん中に大きい傷がある、いかつい顔つきの男。
“怯えなくても”などと言われて安心出来る訳が無い。
「大人しくしてりゃ、命までは取らねぇからな」
「あ、あの……」
 割って入ってきた声は馭者の物だった。先程から変わらない、青い顔のままで言う。
「や……約束通り、妻と娘は返していただけるの、ですね……?」
「おうおう、すぐに返してやるよ。この取引が終わってからな」
「そ、そんな……」
 返答を聞いた馭者は絶望して、その場にへたり込んだ。……彼を脅迫して従わせたのね、家族を人質に取るなんて卑怯な。
 湧き上がる怒りを必死に抑え込んでいると、
「なぁに……。親馬鹿で評判のカトレア公だ。娘の命を引き換えなら、要求をのむさ」
「!?」
 いきなりお父様の名前が出て、息を飲んだ。
これは営利誘拐ではない。わたくしを人質にとって、お父様に何かを要求するつもりなのだ。
 お父様にご迷惑をおかけするなんて絶対にいけない。
何とかここから出なくては。それが出来なければせめて、この状況を伝えないと。
 辺りを見回してみる。窓の外はすっかり暗くなって、この家以外の明かりは1つも見えない。
 このまま……何も出来ず、皆も助けられず…?
……ダメよ。弱気になっては。公爵令嬢の誇りにかけて、このような卑劣な者達の思い通りにはさせない。
 そうだわ、落ち込みそうになったら空を見れば良いって、ばあやが言ってたわ。空はここからだと無理だけど、せめて上を見ましょう。
 と、天井を見上げて――。
「!!」
 出かかった悲鳴を、かろうじて止めた。
 薄暗い天井の梁につかまるようにして、子供がわたくし達を見下ろしていたからだ。
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