25 / 42
再会と義姉の近況
しおりを挟む
「三ツ目熊を、5体…………!」
討伐内容を見た受付嬢・ベッキーさんの顔が青く引きつる。
「昨日一日でそれって……! チヨちゃんあなた、本当に虐待されていないわよね!?」
ああ……ここでも旦那様の悪評の影響が……。
まぁ私も、実際にお会いするまでは信じていたのだから何も言えないが。
ここは『冒険者ギルド』。言い換えると、短期単発仕事斡旋所……とでも言うのか。ここに登録したら、誰でもお仕事をもらえる。……そう、誰でも。
内容は家の掃除から魔獣の討伐まで様々、だ。年齢制限もないので子供の私でも登録出来たけど、素性の分からない者でも登録出来る事から、あまり良く思っていない人もいる(犯罪歴のある人の場合は、登録は出来るけど見張りがつく。期間は罪によって様々)。
でもそれとは別に、買い取りも受け付けているので、私と旦那様が討伐した三ツ目熊を持って訪れたのだ。
「旦那さーいえ、わが主、クラウディア公が、私に防御魔法を付与して下さったので出来ただけです」
「それにしたって……! 三ツ目熊なんて、大人でも5.6人で討伐するのよ? それを……」
「ベッキー、そいつを普通のガキと一緒にするなよ」
屈強な男の人がそこで、口を挟む。
短く刈り上げた銀髪に、赤に近い茶色の瞳。彫刻で作られた像のような目鼻立ちのハッキリした顔。旦那様とはまた違う美形だ。
「シドさん」
「チヨ、また派手に暴れたらしいな」
シドさんは私を見ると、口元だけちょっと綻ばせた。
彼は私と同じ、冒険者のシドさん。
同じといっても私はB級、彼はA級と差があるけど、以前師匠とパーティ組んだ時から、顔を見たら声をかけて下さる。強面で無口な為、近寄りがたい印象があるけど、話してみれば優しい。
「ところでチヨは、ケーチャー家の養女なんだよな?」
「? はい、そうですが……」
お義姉さんの知り合いなのかな?
「……つまりアイリス嬢は義理の姉なのか?」
「そうですが……姉をご存じなのですか?」
もしかしたらシドさんは、お義姉さんの攻略対象なのだろうか?
A級冒険者も将来有望な異性に違いないし、カッコいいから不思議では無い。
「それなんだがな……」
「チヨちゃん!」
シドさんの声が途中で遮られた。
声の方を向くと、いかにもお嬢様な装いの超が3つ位付きそうな美少女が満面笑顔で私の前に立っている。その後ろにも同じ歳くらいの女性が2人。殺伐としたギルドに、そこだけ花が咲いたようだ。
私はこの方々を知っている。けど、
「あ、アンナマリー嬢……?」
どうしてご令嬢が、私の名前を……?
呆然と呟くと、カトレア嬢はぱあっと華やいだ笑顔になる。
「覚えてくれたの? 嬉しいわ。でも今度からは“アンナお姉様”って呼んでね♪」
…………はいー?
討伐内容を見た受付嬢・ベッキーさんの顔が青く引きつる。
「昨日一日でそれって……! チヨちゃんあなた、本当に虐待されていないわよね!?」
ああ……ここでも旦那様の悪評の影響が……。
まぁ私も、実際にお会いするまでは信じていたのだから何も言えないが。
ここは『冒険者ギルド』。言い換えると、短期単発仕事斡旋所……とでも言うのか。ここに登録したら、誰でもお仕事をもらえる。……そう、誰でも。
内容は家の掃除から魔獣の討伐まで様々、だ。年齢制限もないので子供の私でも登録出来たけど、素性の分からない者でも登録出来る事から、あまり良く思っていない人もいる(犯罪歴のある人の場合は、登録は出来るけど見張りがつく。期間は罪によって様々)。
でもそれとは別に、買い取りも受け付けているので、私と旦那様が討伐した三ツ目熊を持って訪れたのだ。
「旦那さーいえ、わが主、クラウディア公が、私に防御魔法を付与して下さったので出来ただけです」
「それにしたって……! 三ツ目熊なんて、大人でも5.6人で討伐するのよ? それを……」
「ベッキー、そいつを普通のガキと一緒にするなよ」
屈強な男の人がそこで、口を挟む。
短く刈り上げた銀髪に、赤に近い茶色の瞳。彫刻で作られた像のような目鼻立ちのハッキリした顔。旦那様とはまた違う美形だ。
「シドさん」
「チヨ、また派手に暴れたらしいな」
シドさんは私を見ると、口元だけちょっと綻ばせた。
彼は私と同じ、冒険者のシドさん。
同じといっても私はB級、彼はA級と差があるけど、以前師匠とパーティ組んだ時から、顔を見たら声をかけて下さる。強面で無口な為、近寄りがたい印象があるけど、話してみれば優しい。
「ところでチヨは、ケーチャー家の養女なんだよな?」
「? はい、そうですが……」
お義姉さんの知り合いなのかな?
「……つまりアイリス嬢は義理の姉なのか?」
「そうですが……姉をご存じなのですか?」
もしかしたらシドさんは、お義姉さんの攻略対象なのだろうか?
A級冒険者も将来有望な異性に違いないし、カッコいいから不思議では無い。
「それなんだがな……」
「チヨちゃん!」
シドさんの声が途中で遮られた。
声の方を向くと、いかにもお嬢様な装いの超が3つ位付きそうな美少女が満面笑顔で私の前に立っている。その後ろにも同じ歳くらいの女性が2人。殺伐としたギルドに、そこだけ花が咲いたようだ。
私はこの方々を知っている。けど、
「あ、アンナマリー嬢……?」
どうしてご令嬢が、私の名前を……?
呆然と呟くと、カトレア嬢はぱあっと華やいだ笑顔になる。
「覚えてくれたの? 嬉しいわ。でも今度からは“アンナお姉様”って呼んでね♪」
…………はいー?
109
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
落ちこぼれ公爵令息の真実
三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。
設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。
投稿している他の作品との関連はありません。
カクヨムにも公開しています。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる