27 / 42
再会と義姉の近況~2~
しおりを挟む
時は少し遡り――
「あの時は助けてくれてありがとう。貴女には感謝しかないわ」
アンナマリー嬢がにこやかに微笑む。続くように、
「本当にありがとう! あなた、とても強いのね!!」
「貴女が彼らをやっつけてくれなかったら、どうなっていたか……!」
ご学友だというご令嬢達からも、感謝のお言葉を頂いた。
「い、いえ、そんな……っ、皆様がご無事なら、それで……」
ストレートに伝わってくるお気持ちに、どもりどもりな答えしか出来ない。
と言うか、今私が置かれている状況がまず、普通では無いのもある。
――どうして今、こんな状況に……?
まず私は、長椅子の真ん中に座っている。ご令嬢達を立ちっぱなしにしては失礼だと、どこからか職員さん達が持ってきてくれた。良い素材で作られていてふかふかで汚してしまわないか心配になる。
そんな私の隣に座っているのがアンナマリー・カトレア公爵令嬢。王子様の婚約者だそうで。いくつも縦ロールに巻いて、腰まで流したブロンドの髪が特徴。旦那様のと少し違う感じの青い瞳で、大人びた顔立ちをされている。
その反対の隣のご令嬢は、
「ふふっ、チヨちゃんは慎ましいのね♪」
パンジー・ディーア侯爵令嬢。赤い髪をポニーテールにまとめている緑の瞳を持ったご令嬢。白い頬はふっくらとしてて落ち着いた、と言うよりはおっとりした感じの方だ。……どこかで逢った事があるように思うのは、気のせいかな?
そして私の対角の位置には、
「あんなに強かったら、私なら自慢するのにな~」
と、オレンジがかったキラキラした目で見つめる黒髪のご令嬢は、サリー・ピグモンド伯爵令嬢。確か今、有力な貿易関係の商会がピグモンドだ。この方がそこのご令嬢だとしたら……納得だ。全身から漲る鉄の意志が、彼女から感じられる。
……と、しばしご令嬢達を観察していた私を、
「チヨちゃんはクラウディア公の侍女なのね?」
え? と思って振り向くと、カトレア嬢が何故か痛ましげな目で見ていた。
それを引き金に、パンジー嬢とサリー嬢が急に怒った顔で身を乗り出す。
「聞いたわよ! ケーチャー男爵家の借金の返済の為ですって? どう考えてもアイリス嬢が行くところでしょうそこは!」
「そうよ! 自分達が作った借金なのに自分は安全な場所にいて、貴女みたいな子供を働きに出すなんて何考えてるのか!」
「“善意で引き取った子供”ってあちこちに吹聴しているくせに、実際に追い詰められたらそんな扱いでしょう? みーんな呆れているわ、“どの口がそう言ったのか”って」
「…………」
それはお義姉さんが“乙女ゲームのヒロイン”で、侍女になるなんてシナリオがなかったから。
そしてお義父さん達がそれを信じているから、私が奉公に出ることになった。
……なんて言っても信じてもらえないだろう。ここは無難な答えにしておく。
「私は……」
お義母さんに言われていた言葉を言うことにした。
“この子が可哀相だから引き取ってあげた”
“森の中に置き去りにされた可哀相な子供だから”
だから義両親達の為に働くのは当然なんだ、と。
でも、そこでビシッとサリー嬢が指を突き上げる。
「それよ! 聞いててもどこか変だな? って思ったの。お母様達だっておかしい、って言ってたわ。“善意で引き取った”子供がどうして、公に出る時はあんなにみすぼらしいのかって。」
――みすぼらしいとは、義母が着るようにと与えたくれたあのドレスのことか。まぁ確かにかなり体に合わなくなっていたっけ。
しかし……と、私はケーチャー男爵家の事を思い返した。
久しくお会いしていないけど、どうしているだろう? まぁ私がいなくても変わりは無いだろうけど……。
「義姉の事をご存じなんですか?」
私が訊いたら、
「ご存じって、そりゃあ……」
「……サリー様」
何か言いかけたサリー嬢を、パンジー嬢が袖を引っ張って止める。と、サリー嬢もハッとした様に口を押さえた。
「義姉が、何か……」
「良いのよ。気にしないで。……ところで、今日はチヨちゃんにお話があって来たの」
「私に?」
何だろう? きょとんとした私に、アンナマリー嬢は優雅に微笑む。
「ええ。……チヨちゃん、あなた……私の義妹になる気はない?」
「あの時は助けてくれてありがとう。貴女には感謝しかないわ」
アンナマリー嬢がにこやかに微笑む。続くように、
「本当にありがとう! あなた、とても強いのね!!」
「貴女が彼らをやっつけてくれなかったら、どうなっていたか……!」
ご学友だというご令嬢達からも、感謝のお言葉を頂いた。
「い、いえ、そんな……っ、皆様がご無事なら、それで……」
ストレートに伝わってくるお気持ちに、どもりどもりな答えしか出来ない。
と言うか、今私が置かれている状況がまず、普通では無いのもある。
――どうして今、こんな状況に……?
まず私は、長椅子の真ん中に座っている。ご令嬢達を立ちっぱなしにしては失礼だと、どこからか職員さん達が持ってきてくれた。良い素材で作られていてふかふかで汚してしまわないか心配になる。
そんな私の隣に座っているのがアンナマリー・カトレア公爵令嬢。王子様の婚約者だそうで。いくつも縦ロールに巻いて、腰まで流したブロンドの髪が特徴。旦那様のと少し違う感じの青い瞳で、大人びた顔立ちをされている。
その反対の隣のご令嬢は、
「ふふっ、チヨちゃんは慎ましいのね♪」
パンジー・ディーア侯爵令嬢。赤い髪をポニーテールにまとめている緑の瞳を持ったご令嬢。白い頬はふっくらとしてて落ち着いた、と言うよりはおっとりした感じの方だ。……どこかで逢った事があるように思うのは、気のせいかな?
そして私の対角の位置には、
「あんなに強かったら、私なら自慢するのにな~」
と、オレンジがかったキラキラした目で見つめる黒髪のご令嬢は、サリー・ピグモンド伯爵令嬢。確か今、有力な貿易関係の商会がピグモンドだ。この方がそこのご令嬢だとしたら……納得だ。全身から漲る鉄の意志が、彼女から感じられる。
……と、しばしご令嬢達を観察していた私を、
「チヨちゃんはクラウディア公の侍女なのね?」
え? と思って振り向くと、カトレア嬢が何故か痛ましげな目で見ていた。
それを引き金に、パンジー嬢とサリー嬢が急に怒った顔で身を乗り出す。
「聞いたわよ! ケーチャー男爵家の借金の返済の為ですって? どう考えてもアイリス嬢が行くところでしょうそこは!」
「そうよ! 自分達が作った借金なのに自分は安全な場所にいて、貴女みたいな子供を働きに出すなんて何考えてるのか!」
「“善意で引き取った子供”ってあちこちに吹聴しているくせに、実際に追い詰められたらそんな扱いでしょう? みーんな呆れているわ、“どの口がそう言ったのか”って」
「…………」
それはお義姉さんが“乙女ゲームのヒロイン”で、侍女になるなんてシナリオがなかったから。
そしてお義父さん達がそれを信じているから、私が奉公に出ることになった。
……なんて言っても信じてもらえないだろう。ここは無難な答えにしておく。
「私は……」
お義母さんに言われていた言葉を言うことにした。
“この子が可哀相だから引き取ってあげた”
“森の中に置き去りにされた可哀相な子供だから”
だから義両親達の為に働くのは当然なんだ、と。
でも、そこでビシッとサリー嬢が指を突き上げる。
「それよ! 聞いててもどこか変だな? って思ったの。お母様達だっておかしい、って言ってたわ。“善意で引き取った”子供がどうして、公に出る時はあんなにみすぼらしいのかって。」
――みすぼらしいとは、義母が着るようにと与えたくれたあのドレスのことか。まぁ確かにかなり体に合わなくなっていたっけ。
しかし……と、私はケーチャー男爵家の事を思い返した。
久しくお会いしていないけど、どうしているだろう? まぁ私がいなくても変わりは無いだろうけど……。
「義姉の事をご存じなんですか?」
私が訊いたら、
「ご存じって、そりゃあ……」
「……サリー様」
何か言いかけたサリー嬢を、パンジー嬢が袖を引っ張って止める。と、サリー嬢もハッとした様に口を押さえた。
「義姉が、何か……」
「良いのよ。気にしないで。……ところで、今日はチヨちゃんにお話があって来たの」
「私に?」
何だろう? きょとんとした私に、アンナマリー嬢は優雅に微笑む。
「ええ。……チヨちゃん、あなた……私の義妹になる気はない?」
106
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢扱いで国外追放?なら辺境で自由に生きます
タマ マコト
ファンタジー
王太子の婚約者として正しさを求め続けた侯爵令嬢セラフィナ・アルヴェインは、
妹と王太子の“真実の愛”を妨げた悪役令嬢として国外追放される。
家族にも見捨てられ、たった一人の侍女アイリスと共に辿り着いたのは、
何もなく、誰にも期待されない北方辺境。
そこで彼女は初めて、役割でも評価でもない「自分の人生」を生き直す決意をする。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
令和日本では五十代、異世界では十代、この二つの人生を生きていきます。
越路遼介
ファンタジー
篠永俊樹、五十四歳は三十年以上務めた消防士を早期退職し、日本一周の旅に出た。失敗の人生を振り返っていた彼は東尋坊で不思議な老爺と出会い、歳の離れた友人となる。老爺はその後に他界するも、俊樹に手紙を残してあった。老爺は言った。『儂はセイラシアという世界で魔王で、勇者に討たれたあと魔王の記憶を持ったまま日本に転生した』と。信じがたい思いを秘めつつ俊樹は手紙にあった通り、老爺の自宅物置の扉に合言葉と同時に開けると、そこには見たこともない大草原が広がっていた。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。
まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。
泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。
それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ!
【手直しての再掲載です】
いつも通り、ふんわり設定です。
いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*)
Copyright©︎2022-まるねこ
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
魔法使いとして頑張りますわ!
まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。
そこからは家族ごっこの毎日。
私が継ぐはずだった伯爵家。
花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね?
これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。
2025年に改編しました。
いつも通り、ふんわり設定です。
ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m
Copyright©︎2020-まるねこ
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる