モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの

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再会と義姉の近況~2~

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 時は少し遡り――

 「あの時は助けてくれてありがとう。貴女には感謝しかないわ」
アンナマリー嬢がにこやかに微笑む。続くように、
「本当にありがとう! あなた、とても強いのね!!」
「貴女が彼らをやっつけてくれなかったら、どうなっていたか……!」
ご学友だというご令嬢達からも、感謝のお言葉を頂いた。
「い、いえ、そんな……っ、皆様がご無事なら、それで……」
ストレートに伝わってくるお気持ちに、どもりどもりな答えしか出来ない。

 と言うか、今私が置かれている状況がまず、普通では無いのもある。
 ――どうして今、こんな状況に……?

 まず私は、長椅子の真ん中に座っている。ご令嬢達を立ちっぱなしにしては失礼だと、どこからか職員さん達が持ってきてくれた。良い素材で作られていてふかふかで汚してしまわないか心配になる。
 そんな私の隣に座っているのがアンナマリー・カトレア公爵令嬢。王子様の婚約者だそうで。いくつも縦ロールに巻いて、腰まで流したブロンドの髪が特徴。旦那様のと少し違う感じの青い瞳で、大人びた顔立ちをされている。
 その反対の隣のご令嬢は、
「ふふっ、チヨちゃんは慎ましいのね♪」
パンジー・ディーア侯爵令嬢。赤い髪をポニーテールにまとめている緑の瞳を持ったご令嬢。白い頬はふっくらとしてて落ち着いた、と言うよりはおっとりした感じの方だ。……どこかで逢った事があるように思うのは、気のせいかな?
 そして私の対角の位置には、
 「あんなに強かったら、私なら自慢するのにな~」
と、オレンジがかったキラキラした目で見つめる黒髪のご令嬢は、サリー・ピグモンド伯爵令嬢。確か今、有力な貿易関係の商会がピグモンドだ。この方がそこのご令嬢だとしたら……納得だ。全身から漲る鉄の意志が、彼女から感じられる。
……と、しばしご令嬢達を観察していた私を、
「チヨちゃんはクラウディア公の侍女なのね?」
え? と思って振り向くと、カトレア嬢が何故か痛ましげな目で見ていた。
それを引き金に、パンジー嬢とサリー嬢が急に怒った顔で身を乗り出す。
「聞いたわよ! ケーチャー男爵家の借金の返済の為ですって? どう考えてもアイリス嬢が行くところでしょうそこは!」
「そうよ! 自分達が作った借金なのに自分は安全な場所にいて、貴女みたいな子供を働きに出すなんて何考えてるのか!」
「“善意で引き取った子供”ってあちこちに吹聴しているくせに、実際に追い詰められたらそんな扱いでしょう? みーんな呆れているわ、“どの口がそう言ったのか”って」
「…………」

 それはお義姉さんが“乙女ゲームのヒロイン”で、侍女になるなんてシナリオがなかったから。
 そしてお義父さん達がそれを信じているから、私が奉公に出ることになった。
……なんて言っても信じてもらえないだろう。ここは無難な答えにしておく。
「私は……」
お義母さんに言われていた言葉を言うことにした。
“この子が可哀相だから引き取ってあげた”
“森の中に置き去りにされた可哀相な子供だから”
だから義両親達の為に働くのは当然なんだ、と。
でも、そこでビシッとサリー嬢が指を突き上げる。
「それよ! 聞いててもどこか変だな? って思ったの。お母様達だっておかしい、って言ってたわ。“善意で引き取った”子供がどうして、公に出る時はあんなにみすぼらしいのかって。」
――みすぼらしいとは、義母が着るようにと与えたくれたあのドレスのことか。まぁ確かにかなり体に合わなくなっていたっけ。
 しかし……と、私はケーチャー男爵家の事を思い返した。
久しくお会いしていないけど、どうしているだろう? まぁ私がいなくても変わりは無いだろうけど……。
「義姉の事をご存じなんですか?」
私が訊いたら、
「ご存じって、そりゃあ……」
「……サリー様」
何か言いかけたサリー嬢を、パンジー嬢が袖を引っ張って止める。と、サリー嬢もハッとした様に口を押さえた。
「義姉が、何か……」
「良いのよ。気にしないで。……ところで、今日はチヨちゃんにお話があって来たの」
「私に?」
何だろう? きょとんとした私に、アンナマリー嬢は優雅に微笑む。


「ええ。……チヨちゃん、あなた……私の義妹になる気はない?」
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