モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの

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ヒロインとは?

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 旦那様の話は止まらない。

「私は、ね。転生者の存在を知った時不思議に思ったよ。……特に君のような“恋愛ゲームのヒロイン”は決まって目当ての男を攻略する為になら、どんな危険な状況にも飛び込んでいく。その動機が根拠のない“前世の記憶”なんてものだと知れば尚のこと、ね。
  確かに君にとって、私達は作り話の中の住人、もしくはヒロインの為に居る想像上の生き物かも知れない。
だとしても分からないんだ。どうしてそこまで無謀になれるのか」

「っ、それはわたくしがヒロインで」

 この世界は自分の為にあるから――と義姉が言う。

 確かにお話の中でヒロインは不可欠。世界の均衡を守る存在。そこは義姉が正しい。

でも……そんなにうまく行くものだろうか?

 義姉のゲームがどんなものかは知らない。義姉はきっと狙ったイケメンさん達と仲良くなっているんだろう。現に 第2王子殿下と親しいそうだし、成果も出ているのだと思う。

 でも義姉が知っているのはあくまで作り物のストーリー。イベントやらが起きる知らなかった日以外でも必ず何かは起こっている。それらまで事細かに綴っていたらゲーム(遊び)にはならないのでは……?

「うん、そこを否定はしない。その上で思うんだ。

――ヒロインはなぜ、イベントとやらを起こす為にあるリスクのことは考えないのかな? って」

「リ……リスク?」

「特にさっきみたいな“絡まれている処を助けられる”なんてイベントの為に、酒場に今日までずっと通っていたんだろう? それまでにずっと恐ろしい目に遭うかも知れないのに」

 確かにお義姉さんは愛らしいから、たちの悪い輩を惹きつける可能性だってある。それに何故か義姉は、今気付いたように目を見開くも、

「……だってわたくしは……ヒロインで……」

自分の立場は絶対だ、とばかりに口にする。絶対に守られる存在だと。

 けれどその声音にさっきまでの力はない。どこかしがみ付いているような響きがある。そこに“転生者”についての知識を持った上で述べられる仮説に、義姉の心が乱れているのが分かる。


「君は今“愛されている”って設定を信じて、その通りに調停しているようだね。

……なら逆に“虐待されている”って設定なら、それを受け容れてやられっぱなしで生活していくの? あるいは虐待がない時はどうする? 家族が自分を嫌うように仕向けるのかな? 

 “貴族の令嬢にいじめられている”って設定が分かっているなら、喜んで階段から落とされたりしているの? 落ち方によっては命に関わるのに? もしかすればその時の後遺症が残るかも知れない。

 小さい事でも私物を捨てられた、隠された程度でも新たに買い直していたら切りがない。

――ね? 何だかこうして並べたらまるで、ヒロインに据えられる事で、人として生きるための思考を奪われたとしか思えない。


……私から見ればヒロインほど、可哀相な道化はいないと思うね」
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