モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの

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使い魔の正体

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 ――こんなになった義姉を、初めて見た。
いつも愛らしく微笑むか、もしくはシクシク儚げに涙するか。誰かの視線を意識してだとしても、そんな顔しか見せない。
 そんな彼女は今浮かべているのは無、だ。生気すら抜け落ちたように色のない顔で、その唇から細く……声が出た。
「ヒロインが、道化……? 違う、違うわ……。だって皆がわたくしを好きで……この世界はわたくしの為にあって……だから……パパも……。でもパパは…………」
自分を売ろうとした。
 認められないだろう、男爵家に居た期間は短かったが、ずっと義姉は家族の中心に居た。私には冷たい義両親や使用人達も、彼女にはお日様のような笑みを向け、その言葉に耳を傾けていた。
  でも、使用人が雇用主に礼儀正しいのはどこも――ここを除けば――同じで。義両親達は共に贅沢好きだ。実の子が大金を産む卵なら、一層可愛がるだろう。自然な流れだ。
 我ながら性格の悪い事を思っていたら、意外な人が義姉の前に立った。そしてその足下に跪いて義姉の目を真っ直ぐに見つめて言う。
「父親にキチンと、聞いてみたらどうだ?」
「……シドさん……?」
シドさんの義姉を見る目。哀れみと優しさの籠もった表情だ。
「転生者なら、俺の事情も知っているかも知れんが……。俺も昔、家族とは色々あった。でも何とか歩み寄って今の形になった」
「…………」
義姉が無言で、コクンと頷く。
「前世とかゲームとかは知らんが、それも切っ掛けだろう? 親やその、攻略対象とやらと過ごす間にも、築けたモノは……あるだろう? 俺達はあんたにとっては作り物らしいが、それでも気に入っているから、攻略? しようと思ったんだよな」
その言葉に義姉が大きく目を見張り力強く頷いた。
「……! は、はい! わたくしは皆が大好きです!」
「なら父親の事情をそいつらにも、取りあえずゲームやらヒロインってところは置いて、人間同士として話し合うなり、相談するなりしてみろ」
「……シド、さん……」
 優しいシドさんに、感動したように目を潤ませる義姉。見た目が整った2人だから、まさに物話のワンシーンのようだ。
 しかし、そんな空気は容赦なく破られてしまう。
さっきまで続けざまの長広舌で疲れたのか、ややだるそうにソファの背にもたれたまま旦那様は
「私では絶対に言えないセリフだねー。……そろそろ面倒になってきたから帰してあげるよ」
言葉と同時に、義姉と何故かシドさんの姿がパッと消えた。
 旦那様の転移魔法だ。一瞬だったけど義姉とシドさんを囲むように魔方陣が展開したのが見えた。
「アンタね……手荷物じゃないんだから」
呆れている師匠に旦那様はだらーっと弛緩したままで答える。
「ちゃんと、男爵家に目的地を設定したよ?」
「何でシドまで一緒なんだ」
「目撃者兼用心棒としてね。彼、何だかケーチャー嬢を気にしているから。後は使い魔からの連絡待ちだね」

――……使い魔?

 前に意識を飛ばして使役していた事があった。
――見た事は無いけど、どんなのだろう?
少し興味が湧いたところで、マーサさんが軽食のワゴンと共に現れた。

 そうして――。
私達が食事を終えしばらくすると、窓の外にバサバサッと羽ばたく音と共に、窓枠に小さな黒い影が止まった。
「え」
 思わず目を見張る。そこにいたのは――。
驚く私の目の前で、開けられた窓から旦那様の肩にその子は、乗る。そしてその小さな目を閉じると、旦那様の顔にすり寄り、ピタ、と像のように動かなくなった。
旦那様も目を閉じて、しばらくしてから私達に顔を向ける。
「……ケーチャー嬢、男爵をストレートに問い詰めたらしい。
最初は否定したけど、シドという証人がいたから渋々認めたって。どうやら男爵の独断で、夫人は知らなかったようだね。2人に責められてようやく、借金の事を話したそうだよ。夫人は激怒していたから大丈夫と思ったのかな、シドも退去した」
 そうか……義姉は男爵様に聞いたのか。そして夫人が義姉の味方についたことに少し驚く。金が絡んだら敵に回ると思っていたから。
――魔が差しただけで、あの人達は……家族だったのか。
でも私の目が曇っていたから、悪い物だけしか見えていなかったのかも知れない。
 と、それはいい。ソレよりも私が気になるのは別の事だ。
旦那様の肩に止まっているカラス。……この子は……!

「……コウが……旦那様の、使い魔?」
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