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第12章 セトラー開国
第172話 混合農業とロゴの意味
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私の名はアレン領主、トバイアス・ビクトワール・ドゥメルグだ。
開拓村がセトラーと国名を名乗り国を興した。
鉄道を引いてもらい、蒸気機関車が走るようになり国交が開通した。
セトラー国はアスケルの森の中にあり、アレン領からの道はない。
あるのは線路だけだ。
アスケルの森はまだまだ危険な魔物が居る。
そんな森の中を5時間もかけてセトラー国に歩いていく人はいない。
あえて道は作らず、移動手段は蒸気機関車のみとしているようだ。
そんなセトラー国だが毎日、人々は炭鉱や鉱山に向い働き、街にたくさんのお金を落とすようになった。
それ以来、他の領から噂を聞き付け移民がやってくる。
それでも当初はよかった。
街は好景気に浮かれ宿屋も増えていく。
しかし問題が起きた。
人口が倍増したことで食糧が足りなくなった。
野菜や穀物が足りず物価が高騰した。
公共事業として開墾や畜産も始まり街はたくさんの人達で賑わう。
しかしそれは始まったばかりで、種蒔きさえできていない状態だ。
そして冒険者が減った。
肉は冒険者や狩人が狩って来た獲物を、冒険者ギルドで買取り流通していた。
しかし冒険者を辞め、鉱山で働く人が多くなり肉は市場に出回らなくなった。
収入も不安定で命の危険がある冒険者などやりたがる訳が無い。
街には移民が溢れ宿屋も足りず、食料も足りない。
困った。
いったいどうすれいいのだ?
そんな時だった。
街に溢れていた移民が姿を消したのは。
セトラー国で移民を受け入れていると言う。
しかし、いったいどこにそんな食糧が…。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺はウォルド領から戻ってからすぐに、開拓村をセトラー国と名を改めることを住民に話した。
住民と言っても60人くらいの村だが、これで国として認められたと言うことだ。
求人を出すと炭鉱や鉱山作業に、たくさんの人が集まるようになった。
しかし困ったことがあると言う。
聞いて見ると他の領から来た人が多く、アレン領にはそれを受け入れるだけの体制が出来ていない。
宿屋や食料が足りず物価が高騰していると言う。
俺は反省をした。
特定の職種だけ需要を増やしても、世の中がまわらないことを。
今までは働く職種を選べなかったから仕方なく働いていた。
しかしそれよりも給与の高い仕事があれば、みんなそちらに行ってしまう。
人口に対して農産物が少なければ、人口は増えない。
幸いセトラー国は領地は広く人口が少ない。
移民は炭鉱やウォルド領に移動しやすいように、駅の側に2階建ての建物を建て受け入れることにした。
大人や子供を入れると人数は500人くらい、220世帯くらいだろうか。
他の領から夢を持って移住してきた人達。
移民はみんな生活することに必死で、異種族と言われる山小人やダークエルフのことなど気にならないようだった。
そして仕事は1つに拘らず、国全体のことをやることを条件にした。
男性や女性、子供連れの世帯もいるので炭鉱や鉱山で働く人。
農業や畜産をやる人に分けた。
住居と一日三食付きで別途、年俸制とした。
食事作りは、朝、昼、晩と担当を決め、主に女性の仕事の1つとした。
食事作りもりっぱな労働だからね。
そして住民が増えたことにより、農業や畜産にも力を入れていく。
昨年採れた過剰な麦や、野菜の在庫もストレージの中にある。
次の収穫まで、それを食べれば良い。
「住民も増えたので、これからは混合農業をやろうと思います」
ここは俺の屋敷前の広場だ。
住民を集めて、今後のことについて話をしている。
「混合農業と言いますと?」
住民の1人が答える。
「はい、土地を4つに分け家畜の飼育を組合わせます」
俺はみんなにも分かる様に混合農業について話した。
家畜飼育と作物栽培を組み合わせ両方を行う農業だ。
小麦、ライ麦などの食用穀物と燕麦、トウモロコシ、土に埋まっている部分を食べる根菜類などの飼料作物を栽培し、牛、豚などの肉用家畜や鶏などの飼育も同時に目指す農業だ。
色々な作物を混合して生産するので、混合農業というわけだ。
夏に大麦を栽培し秋に収穫する農地。
クローバーなどの牧草を栽培し、牛・豚など家畜の飼育農地。
冬に小麦を栽培し春に収穫する農地。
カブなどの根菜類を栽培する農地の4つに分ける。
その分けた4つの畑で1年ごとに、冬に小麦栽培⇒根菜類栽培⇒夏に大麦栽培⇒牧草栽培とローテーションしていく。
農地1 農地2 農地3 農地4
1年目 冬は小麦 根菜類 夏は大麦 牧草
農地1 農地2 農地3 農地4
2年目 牧草 冬は小麦 根菜類 夏は大麦
農地1 農地2 農地3 農地4
3年目 夏は大麦 牧草 冬は小麦 根菜類
農地1 農地2 農地3 農地4
4年目 根菜類 夏は大麦 牧草 冬は小麦
この4つを交代で繰り返していく。
1つの土地を見ると今年は夏に大麦を栽培、来年は根菜類を栽培、その翌年は冬に小麦を栽培、さらに翌年にはクローバーなどマメ科の植物を牧草として栽培する。
でも農地を休ませないと、土地が持っている作物を育てる能力が回復しない。
麦は麦、カブはカブが育つのに必要なそれぞれ特定の栄養素がある。
だから同じ土地でずっと同じ作物を育てていると、特定の栄養素だけどんどん吸収され土壌から消えてしまう。
するとその作物は育ちが悪くなり、収穫量が減ってしまう。
牧草、根菜など異なる作物を育てることで、作物を育てる力の低下を防止することがでるのだ。
根菜類は土壌を深く耕す役割があり土壌を改善してくれる。
クローバーなどマメ科の牧草は、空気中の窒素を栄養分として土壌に取り込んでくれる性質がある。
更に牧草の農地に家畜を放牧し、家畜が落とす糞尿が土地を回復させてくれる。
土地を休ませなくなることで、生産するものが増えることを話した。
そして土壌中にある部分を食用できる、根菜類も多数ある。
ゴボウ、ニンジン、ダイコン、カブ、サツマイモ、ジャガイモ、タマネギなどだ。
これだけで、食べていけそうだ。
小麦が原料となる食品はパンだ。
うどんやパスタなどの麺類もあるが、この世界にはまだない。
そのうち作ってみようか。
そして大麦は家畜の餌や肥料として使われている。
食糧が無いなら麦ご飯やビールの原料にもなる。
これも、機会があれば作って行こう。
家畜も増え牛がオス3頭、メスが5頭になった。
これで牛乳も取れるから嬉しい。
そして家畜と言えば豚だ。
だがこの世界には豚は居ない。
豚は猪を家畜化したものだ。
この世界では家畜という概念がなく、肉は魔獣を森に狩りに行くと言う考え方だ。
今は猪を5匹捕まえて、飼い始めたところだ。
養鶏場のラプタ(卵を産む鳥)も、鳥人族の人たちが森に探しに行ってくれた。
今ではオスメス合わせて70匹くらいになっていた。
肉にするなら1年で良いが、卵を取るから後2年はかかるかな。
そして果実園を作りブドウやリンゴなど果物もたくさん採れていた。
ワイン造りを始める頃かもしれない。
「この農法を行えば今までに比べ、根菜類が1年中収穫できるので収穫量は今までの1.5倍にはなると思いますよ」
「1.5倍ですと!」
ダークエルフの部族長カーティスさんが驚いている。
「それに農地を1/4にするので、一回の農作業も今までより少なくなり楽になります」
「そうなりますな」
「ただ1年を通して農作業をしていることになります。その反面、凶作の時にも
1つの穀物に頼っていないので、乗り越えやすいと思いますが」
「おぉ、それは凄いですな。エリアス様は、いったいどこでそのような知識を」
「カーティスさん、それは言えません」
「はあ、そうでしたな。これは失礼いたしました」
今までは開墾と収穫作業はストレージで、俺がやるようになっていた。
他の人がやることは苗を植えるだけだ。
それでも大変だろうけど、少人数でやっているとは思えない収穫量になっている。
その1.5倍だ。
そうなったら俺達の食べる分は残し、その半分はストレージに仕舞い、残りは売ることにしよう。
いつ飢饉や災害があるか分からないから。
混合農業もエリザちゃんの実家の、ファイネン公爵に手紙を書いて教えておこう。
各領でもやってもらえれば良いと思う。
「ではこれで解散です。みなさん、ありがとうございました」
俺はそう言うと屋敷の中に戻った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おい、エリアス様の言おうとしている事が分かったか?」
「う~ん。良く分からなかったけど」
話を聞いた人達は戸惑っている。
「ごめんなさい、みなさん」
「エリザ奥様?!」
「エリアス様は常に私たち凡人には理解できないことを、考えていらっしゃいます。ですから今回の事を私が変わってお話いたします」
そう言って一息つき、話始める。
「まずセトラー国で他の領も養えるだけの、野菜や家畜の生産量を上げるのです」
「ど、どう言うことでしょうか?」
「エリアス様は鉱山を発掘し雇用率を上げたにも関わらず、他の領主は食べていくことまで考えていなかったと言う事です」
「食料のことでしょうか?」
「えぇ、そうです。雇用が増えれば他の領からも貴方達のように、仕事を求めて人がやってくる。ですがその対策が出来ていなかった。その為にあなた達は、路頭に迷う事になった。違いますか!!」
「その通りです。食べ物もなく、寝るところも無い」
「エリアス様が居なければ、私達はこの冬の寒空の中、どうなっていたことか…」
「エリアス様は気付いたのです。仕事を与えても、それを受け入れるだけの仕組みが他の国には無い。それなら自分で作ろうと。森を開拓し農業を手広く行い食料確保にも力を入れる。雇用率を上げ鉱山関係者を増やせばセトラー国は不動のものとなる。そしていずれは各国の領にも線路を伸ばし、世界物流をこの手に掴み、取り仕切ると言われているのです」
「そんな奥が深いお話をされていたのですか!!」
「エリアス様に雇われれば、給料がたくさんもらえ飢える事のない良い暮らしができ、他では勤められなくなります。そしてたくさんの従業員を雇うというのは、エリアス商会に生活面で依存する人達が増えるという事です。たくさん雇えば雇うほど支配下に置く人が増え、影から経済を支配し皆の生活を支えることになるのです」
「そ、そんな壮大な考えをお持ちなのですか!!」
「ここに集まったみなさんは国から見捨てられ行き場がなく、ここに流れついたのではありませんか?」
「えぇ、そうです」
「国は私達に何もしてくれませんでした」
「エリアス様は、そんな私達を…うぅ…」
「エリアス商会のロゴを思い出してください。当初はオルガお姉さま、アリッサお姉さまのみでしたが、今ではノエルお姉さまと私が加わりました。そして私達妻4人が背を合わせ全体を見渡しているロゴです。これは私達がエリアス様から離れない関係であること。そして物事が表裏にあること示しています。つまり莫大なお金を裏で動かし、経済を陰から支配し人々を幸せに導くと言う意味です」
「そ、そんな深い意味が…」
「そして私の独断にはなりますが、その思いを強く出すために私達妻4人が背を合わせたその下に、大きな鷲が世界を脚で掴み翼を広げているロゴを追加して彫ることにしました」
一旦、エリザは言葉を区切り確かめるように住民を見渡す。
「さあ、みなさん。賽は投げられました。エリアス商会の、いいえセトラー国の名の元に世界の物流を、経済をわが手に!陰から世界を手に人々を幸せにするのです!」
〈〈〈〈〈 オォ~~!! 〉〉〉〉〉
((((イッ~~~!!))))
住民は右手を高々と掲げ叫んでいる。
エリアス様の為に!! エリアス様の為に!!
エリザ11歳。
いったい彼女は、どこに行こうとしているのか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んで頂いてありがとうございます。
『イッ~~~』は、分かる人にはわかるネタです。
開拓村がセトラーと国名を名乗り国を興した。
鉄道を引いてもらい、蒸気機関車が走るようになり国交が開通した。
セトラー国はアスケルの森の中にあり、アレン領からの道はない。
あるのは線路だけだ。
アスケルの森はまだまだ危険な魔物が居る。
そんな森の中を5時間もかけてセトラー国に歩いていく人はいない。
あえて道は作らず、移動手段は蒸気機関車のみとしているようだ。
そんなセトラー国だが毎日、人々は炭鉱や鉱山に向い働き、街にたくさんのお金を落とすようになった。
それ以来、他の領から噂を聞き付け移民がやってくる。
それでも当初はよかった。
街は好景気に浮かれ宿屋も増えていく。
しかし問題が起きた。
人口が倍増したことで食糧が足りなくなった。
野菜や穀物が足りず物価が高騰した。
公共事業として開墾や畜産も始まり街はたくさんの人達で賑わう。
しかしそれは始まったばかりで、種蒔きさえできていない状態だ。
そして冒険者が減った。
肉は冒険者や狩人が狩って来た獲物を、冒険者ギルドで買取り流通していた。
しかし冒険者を辞め、鉱山で働く人が多くなり肉は市場に出回らなくなった。
収入も不安定で命の危険がある冒険者などやりたがる訳が無い。
街には移民が溢れ宿屋も足りず、食料も足りない。
困った。
いったいどうすれいいのだ?
そんな時だった。
街に溢れていた移民が姿を消したのは。
セトラー国で移民を受け入れていると言う。
しかし、いったいどこにそんな食糧が…。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺はウォルド領から戻ってからすぐに、開拓村をセトラー国と名を改めることを住民に話した。
住民と言っても60人くらいの村だが、これで国として認められたと言うことだ。
求人を出すと炭鉱や鉱山作業に、たくさんの人が集まるようになった。
しかし困ったことがあると言う。
聞いて見ると他の領から来た人が多く、アレン領にはそれを受け入れるだけの体制が出来ていない。
宿屋や食料が足りず物価が高騰していると言う。
俺は反省をした。
特定の職種だけ需要を増やしても、世の中がまわらないことを。
今までは働く職種を選べなかったから仕方なく働いていた。
しかしそれよりも給与の高い仕事があれば、みんなそちらに行ってしまう。
人口に対して農産物が少なければ、人口は増えない。
幸いセトラー国は領地は広く人口が少ない。
移民は炭鉱やウォルド領に移動しやすいように、駅の側に2階建ての建物を建て受け入れることにした。
大人や子供を入れると人数は500人くらい、220世帯くらいだろうか。
他の領から夢を持って移住してきた人達。
移民はみんな生活することに必死で、異種族と言われる山小人やダークエルフのことなど気にならないようだった。
そして仕事は1つに拘らず、国全体のことをやることを条件にした。
男性や女性、子供連れの世帯もいるので炭鉱や鉱山で働く人。
農業や畜産をやる人に分けた。
住居と一日三食付きで別途、年俸制とした。
食事作りは、朝、昼、晩と担当を決め、主に女性の仕事の1つとした。
食事作りもりっぱな労働だからね。
そして住民が増えたことにより、農業や畜産にも力を入れていく。
昨年採れた過剰な麦や、野菜の在庫もストレージの中にある。
次の収穫まで、それを食べれば良い。
「住民も増えたので、これからは混合農業をやろうと思います」
ここは俺の屋敷前の広場だ。
住民を集めて、今後のことについて話をしている。
「混合農業と言いますと?」
住民の1人が答える。
「はい、土地を4つに分け家畜の飼育を組合わせます」
俺はみんなにも分かる様に混合農業について話した。
家畜飼育と作物栽培を組み合わせ両方を行う農業だ。
小麦、ライ麦などの食用穀物と燕麦、トウモロコシ、土に埋まっている部分を食べる根菜類などの飼料作物を栽培し、牛、豚などの肉用家畜や鶏などの飼育も同時に目指す農業だ。
色々な作物を混合して生産するので、混合農業というわけだ。
夏に大麦を栽培し秋に収穫する農地。
クローバーなどの牧草を栽培し、牛・豚など家畜の飼育農地。
冬に小麦を栽培し春に収穫する農地。
カブなどの根菜類を栽培する農地の4つに分ける。
その分けた4つの畑で1年ごとに、冬に小麦栽培⇒根菜類栽培⇒夏に大麦栽培⇒牧草栽培とローテーションしていく。
農地1 農地2 農地3 農地4
1年目 冬は小麦 根菜類 夏は大麦 牧草
農地1 農地2 農地3 農地4
2年目 牧草 冬は小麦 根菜類 夏は大麦
農地1 農地2 農地3 農地4
3年目 夏は大麦 牧草 冬は小麦 根菜類
農地1 農地2 農地3 農地4
4年目 根菜類 夏は大麦 牧草 冬は小麦
この4つを交代で繰り返していく。
1つの土地を見ると今年は夏に大麦を栽培、来年は根菜類を栽培、その翌年は冬に小麦を栽培、さらに翌年にはクローバーなどマメ科の植物を牧草として栽培する。
でも農地を休ませないと、土地が持っている作物を育てる能力が回復しない。
麦は麦、カブはカブが育つのに必要なそれぞれ特定の栄養素がある。
だから同じ土地でずっと同じ作物を育てていると、特定の栄養素だけどんどん吸収され土壌から消えてしまう。
するとその作物は育ちが悪くなり、収穫量が減ってしまう。
牧草、根菜など異なる作物を育てることで、作物を育てる力の低下を防止することがでるのだ。
根菜類は土壌を深く耕す役割があり土壌を改善してくれる。
クローバーなどマメ科の牧草は、空気中の窒素を栄養分として土壌に取り込んでくれる性質がある。
更に牧草の農地に家畜を放牧し、家畜が落とす糞尿が土地を回復させてくれる。
土地を休ませなくなることで、生産するものが増えることを話した。
そして土壌中にある部分を食用できる、根菜類も多数ある。
ゴボウ、ニンジン、ダイコン、カブ、サツマイモ、ジャガイモ、タマネギなどだ。
これだけで、食べていけそうだ。
小麦が原料となる食品はパンだ。
うどんやパスタなどの麺類もあるが、この世界にはまだない。
そのうち作ってみようか。
そして大麦は家畜の餌や肥料として使われている。
食糧が無いなら麦ご飯やビールの原料にもなる。
これも、機会があれば作って行こう。
家畜も増え牛がオス3頭、メスが5頭になった。
これで牛乳も取れるから嬉しい。
そして家畜と言えば豚だ。
だがこの世界には豚は居ない。
豚は猪を家畜化したものだ。
この世界では家畜という概念がなく、肉は魔獣を森に狩りに行くと言う考え方だ。
今は猪を5匹捕まえて、飼い始めたところだ。
養鶏場のラプタ(卵を産む鳥)も、鳥人族の人たちが森に探しに行ってくれた。
今ではオスメス合わせて70匹くらいになっていた。
肉にするなら1年で良いが、卵を取るから後2年はかかるかな。
そして果実園を作りブドウやリンゴなど果物もたくさん採れていた。
ワイン造りを始める頃かもしれない。
「この農法を行えば今までに比べ、根菜類が1年中収穫できるので収穫量は今までの1.5倍にはなると思いますよ」
「1.5倍ですと!」
ダークエルフの部族長カーティスさんが驚いている。
「それに農地を1/4にするので、一回の農作業も今までより少なくなり楽になります」
「そうなりますな」
「ただ1年を通して農作業をしていることになります。その反面、凶作の時にも
1つの穀物に頼っていないので、乗り越えやすいと思いますが」
「おぉ、それは凄いですな。エリアス様は、いったいどこでそのような知識を」
「カーティスさん、それは言えません」
「はあ、そうでしたな。これは失礼いたしました」
今までは開墾と収穫作業はストレージで、俺がやるようになっていた。
他の人がやることは苗を植えるだけだ。
それでも大変だろうけど、少人数でやっているとは思えない収穫量になっている。
その1.5倍だ。
そうなったら俺達の食べる分は残し、その半分はストレージに仕舞い、残りは売ることにしよう。
いつ飢饉や災害があるか分からないから。
混合農業もエリザちゃんの実家の、ファイネン公爵に手紙を書いて教えておこう。
各領でもやってもらえれば良いと思う。
「ではこれで解散です。みなさん、ありがとうございました」
俺はそう言うと屋敷の中に戻った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おい、エリアス様の言おうとしている事が分かったか?」
「う~ん。良く分からなかったけど」
話を聞いた人達は戸惑っている。
「ごめんなさい、みなさん」
「エリザ奥様?!」
「エリアス様は常に私たち凡人には理解できないことを、考えていらっしゃいます。ですから今回の事を私が変わってお話いたします」
そう言って一息つき、話始める。
「まずセトラー国で他の領も養えるだけの、野菜や家畜の生産量を上げるのです」
「ど、どう言うことでしょうか?」
「エリアス様は鉱山を発掘し雇用率を上げたにも関わらず、他の領主は食べていくことまで考えていなかったと言う事です」
「食料のことでしょうか?」
「えぇ、そうです。雇用が増えれば他の領からも貴方達のように、仕事を求めて人がやってくる。ですがその対策が出来ていなかった。その為にあなた達は、路頭に迷う事になった。違いますか!!」
「その通りです。食べ物もなく、寝るところも無い」
「エリアス様が居なければ、私達はこの冬の寒空の中、どうなっていたことか…」
「エリアス様は気付いたのです。仕事を与えても、それを受け入れるだけの仕組みが他の国には無い。それなら自分で作ろうと。森を開拓し農業を手広く行い食料確保にも力を入れる。雇用率を上げ鉱山関係者を増やせばセトラー国は不動のものとなる。そしていずれは各国の領にも線路を伸ばし、世界物流をこの手に掴み、取り仕切ると言われているのです」
「そんな奥が深いお話をされていたのですか!!」
「エリアス様に雇われれば、給料がたくさんもらえ飢える事のない良い暮らしができ、他では勤められなくなります。そしてたくさんの従業員を雇うというのは、エリアス商会に生活面で依存する人達が増えるという事です。たくさん雇えば雇うほど支配下に置く人が増え、影から経済を支配し皆の生活を支えることになるのです」
「そ、そんな壮大な考えをお持ちなのですか!!」
「ここに集まったみなさんは国から見捨てられ行き場がなく、ここに流れついたのではありませんか?」
「えぇ、そうです」
「国は私達に何もしてくれませんでした」
「エリアス様は、そんな私達を…うぅ…」
「エリアス商会のロゴを思い出してください。当初はオルガお姉さま、アリッサお姉さまのみでしたが、今ではノエルお姉さまと私が加わりました。そして私達妻4人が背を合わせ全体を見渡しているロゴです。これは私達がエリアス様から離れない関係であること。そして物事が表裏にあること示しています。つまり莫大なお金を裏で動かし、経済を陰から支配し人々を幸せに導くと言う意味です」
「そ、そんな深い意味が…」
「そして私の独断にはなりますが、その思いを強く出すために私達妻4人が背を合わせたその下に、大きな鷲が世界を脚で掴み翼を広げているロゴを追加して彫ることにしました」
一旦、エリザは言葉を区切り確かめるように住民を見渡す。
「さあ、みなさん。賽は投げられました。エリアス商会の、いいえセトラー国の名の元に世界の物流を、経済をわが手に!陰から世界を手に人々を幸せにするのです!」
〈〈〈〈〈 オォ~~!! 〉〉〉〉〉
((((イッ~~~!!))))
住民は右手を高々と掲げ叫んでいる。
エリアス様の為に!! エリアス様の為に!!
エリザ11歳。
いったい彼女は、どこに行こうとしているのか?
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読んで頂いてありがとうございます。
『イッ~~~』は、分かる人にはわかるネタです。
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