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21 挨拶
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王様と、その国母であるエクリーヌが待つ部屋の扉のまえで、ニャリスは隣に立つラクロアを不安げにみあげた。
ラクロアは、安心させるように、優しく目を細めて頷く。なんなら、頭をなでなでしたい衝動にかられたが、今はぐっと我慢をした。屋敷に帰ったら、めちゃくちゃなでなでする。
扉の前を守る騎士達が敬礼をし、ラクロア様の到着ですと、中に告げ、重厚な扉を開けてくれた。
煌びやかな家具に囲まれ、アンティークの高そうな椅子に座っていたのは、金髪碧眼の男の子と、エクリーヌだった。
「お待ちしていましたわ」
エクリーヌが、席を立ち、ニャリスは、ハッとして、ペコッと頭を下げた。
「にゃ……ユリスでふ、、です」
いっぱい練習したのに挨拶を間違えた。涙目で隣のラクロアを見上げると、ラクロアはなんとも言えない顔をしている。
「ラクロア様、怒ったの?」
「いや、怒ってない、ちょっと、可愛いすぎたから、ゴホッゴホッ」
もにょもにょと、ラクロアは咳でごまかしたが、エクリーヌは見逃さなかった。
「お兄様、さ、もうお帰りください、お兄様が甘やかしていてはユリスさんは永遠に可愛いだけの子供です」
「いや、だが、しかし、今日は最初だし一緒に居ようと」
「お兄様、過保護はいけません」
「くぬぬ、だが……わかった、そんな目で睨むな、いいか、泣かすなよ、この子は本当にまだ何も解らないんだから、急にあれしろこれしろは止めてくれよ、言葉もまろやかに、急に大きな声はださないで、矢継ぎ早に指示もだめだ、何かできる度に褒めてくれ、あと……」
「お兄様、お帰り、く、だ、さ、い」
エクリーヌが、冷ややかな目をして扉を指差す。解ってた、確かに自分は邪魔でしかない。だがしかし、ニャリスを一人にするなんて。ニャリスを見つめると、ニャリスは、ふるふると首を振った。
「大丈夫なの、ラクロア様はお仕事いって」
「……わかった、ユリス、無理はするなよ」
「はぃ」
大丈夫と言った割にはニャリスの返事が小さいのが、心残り過ぎてラクロアは、何度も何度も振り返って、だが、妹に、無情に部屋から追い出された。
しばらく扉の前から動けず、おろおろとしていたが、ニャリスを信じて、重い足を、自分の執務室へと向けた。なんとも後ろ髪を引かれる。
「あぁ、ニャリス、頑張ってくれ、ずっとついていたかったのに、エクリーヌめ、はぁ、泣いて帰ってきたらどうしよう」
ラクロアの胃がまたジクジクと痛んだ。こんなこと今まで経験したことない、孫を送り出す祖祖父のような、いやいや、そこまで年はとってない、我が子を崖から突き落とす親のような気持ちで、ラクロアは腹を擦りながら歩いた。胃が捻れそうだ。
ラクロアは、安心させるように、優しく目を細めて頷く。なんなら、頭をなでなでしたい衝動にかられたが、今はぐっと我慢をした。屋敷に帰ったら、めちゃくちゃなでなでする。
扉の前を守る騎士達が敬礼をし、ラクロア様の到着ですと、中に告げ、重厚な扉を開けてくれた。
煌びやかな家具に囲まれ、アンティークの高そうな椅子に座っていたのは、金髪碧眼の男の子と、エクリーヌだった。
「お待ちしていましたわ」
エクリーヌが、席を立ち、ニャリスは、ハッとして、ペコッと頭を下げた。
「にゃ……ユリスでふ、、です」
いっぱい練習したのに挨拶を間違えた。涙目で隣のラクロアを見上げると、ラクロアはなんとも言えない顔をしている。
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「いや、怒ってない、ちょっと、可愛いすぎたから、ゴホッゴホッ」
もにょもにょと、ラクロアは咳でごまかしたが、エクリーヌは見逃さなかった。
「お兄様、さ、もうお帰りください、お兄様が甘やかしていてはユリスさんは永遠に可愛いだけの子供です」
「いや、だが、しかし、今日は最初だし一緒に居ようと」
「お兄様、過保護はいけません」
「くぬぬ、だが……わかった、そんな目で睨むな、いいか、泣かすなよ、この子は本当にまだ何も解らないんだから、急にあれしろこれしろは止めてくれよ、言葉もまろやかに、急に大きな声はださないで、矢継ぎ早に指示もだめだ、何かできる度に褒めてくれ、あと……」
「お兄様、お帰り、く、だ、さ、い」
エクリーヌが、冷ややかな目をして扉を指差す。解ってた、確かに自分は邪魔でしかない。だがしかし、ニャリスを一人にするなんて。ニャリスを見つめると、ニャリスは、ふるふると首を振った。
「大丈夫なの、ラクロア様はお仕事いって」
「……わかった、ユリス、無理はするなよ」
「はぃ」
大丈夫と言った割にはニャリスの返事が小さいのが、心残り過ぎてラクロアは、何度も何度も振り返って、だが、妹に、無情に部屋から追い出された。
しばらく扉の前から動けず、おろおろとしていたが、ニャリスを信じて、重い足を、自分の執務室へと向けた。なんとも後ろ髪を引かれる。
「あぁ、ニャリス、頑張ってくれ、ずっとついていたかったのに、エクリーヌめ、はぁ、泣いて帰ってきたらどうしよう」
ラクロアの胃がまたジクジクと痛んだ。こんなこと今まで経験したことない、孫を送り出す祖祖父のような、いやいや、そこまで年はとってない、我が子を崖から突き落とす親のような気持ちで、ラクロアは腹を擦りながら歩いた。胃が捻れそうだ。
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