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43 飽き
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僕とラクロア様の婚約パーティーが、3ヶ月後に決まった。お偉方の人達の都合がなかなか合わなくて、あと、国の国境付近のいざこざだったりで、ラクロア様がめちゃんこ忙しくて。ずっと先の予定までぎっしりなんだって、可哀想。
ずっと会ってなかった王様とも、やっと会えるの。僕とラクロア様のこと、今度はちゃんと認めてくれるかなぁ。
僕はというと、明日からまた王様と一緒に勉強するわけだけど、パーティーは3ヶ月先ってことで、週に二回王宮に行くだけになった。
のんびりできるようになって、中庭のベンチの日当たりの良いところで、すやすやする毎日なんだけど、お目付け役のトマスさんが、僕の生活に苦言を申す。
「お前さぁ……年老いたじぃ様じゃあるまいし、毎日毎日毎日、こんなとこで日向ぼっこして何もせず1日を終えるってなんなんだよ、良いのかよ、もっとこう、やることないのか」
「……ええっ」
何もせずって言うけど、風が木の葉っぱを揺らすのをみたり、木漏れ日が地面でからきらしてるのを見たり、いい匂いを嗅いだり、お日様の光を薄目でみたり、日が当たりすぎないように体勢変えたり色々してるんだけどな。
「剣の稽古でもしようぜ、折角ラクロア様っていう最強騎士様と暮らしてるのに、もったいないだろ、あんな風になりたいとか、なんかないの?」
あんな風って、言われても、僕はそういえば、ラクロア様が書類に埋もれて大変そうな姿と、大勢の人に指揮してる姿しかみたことないの。
「ラクロア様って強いの?」
「は?知らないのか?ラクロア様は、武術剣術共に国のトップクラスの強者だぞ」
「そーなの?知らない」
「一緒に暮らしてて知らないとか……まぁ、ユリス様は最近ここに来たばかりだし仕方ないか、だからって、もう勝手に見に行こうとかもうするなよ」
めっと、言われて、首をすくめた。あれは、僕が悪かったの。でもね、もともとは野良猫だしね、たまたま、捕まっただけ。でも、お出かけするときは、ちゃんと言うってもう覚えたし、迷惑かけたくないから勝手に行かないの。
「うん」
「よし、いい子だ、いい子なんだが……なんか時間を無駄にしてるんだよな」
僕がベンチの上でだらだらしてるのが、トマスさんにはどうしても納得できないみたい。
「トマスさんはお勉強好きなの?」
「いや、嫌いだ」
「じゃぁ同じ」
「しかしこんなダラダラしてるヤツと同じと言われるのは、納得できん」
「エーー」
「お前はラクロア様の伴侶になるんだろ?もっとラクロア様の右腕らしくシャンとした方が良い、可愛いだけじゃ……飽きられるぞ」
「え!?」
「男は狩人みたいなものだ、手に入れたら、他の獲物をさがす本能が」
バチコーンと、トマスさんの頭をメルがほうきで叩いた。
「いってぇ!!何するんだよ」
「何するはこっちのセリフですっ!!ユリス様になんてことを教えてるんですか、ラクロア様に報告しますよ」
「なっ、だけど、俺はユリスの為を思ってだな」
「勝手な妄想を押し付けてただけです、ラクロア様がユリス様に飽きるなんて有り得ません、二人の愛は永遠なんです」
「そっちの方が……」
「何ですか」
またメルがほうきを振り上げたので、トマスさんは、サササと僕のベンチの後ろに逃げた。喧嘩しないで。
「でも、ラクロア様がユリス様に何か運動をさせたいとおっしゃってたのは事実なんです」
「運動?」
「ええ、前に筋肉痛でお苦しみになったでしょう?だから……もうちょっと動いた方がと」
「あぁ、あれは痛かったの」
「は?筋肉痛って、こいつが?子供って筋肉痛になるの?」
「なります、僕はなります」
ブスッとして答えると、トマスさんはゲラゲラ笑った。失礼だと思うの。
「そりゃぁ、やばいぞ、やっぱ剣だ、教えてやるから、稽古場行こう」
「エーー」
「護身術くらい身に付けとけって、俺だって心配なんだよ」
つまりは、トマスさんは、僕が心配だったってこと?なーんだ、最初からそう言ってくれたら良いのに。人間ってば、解りにくいんだから。
「護身術、教わります」
「よしきた」
のそりと、ベンチから起き上がっると、トマスさんがにっこにこで、歩き出す。暇だったんだね。
ずっと会ってなかった王様とも、やっと会えるの。僕とラクロア様のこと、今度はちゃんと認めてくれるかなぁ。
僕はというと、明日からまた王様と一緒に勉強するわけだけど、パーティーは3ヶ月先ってことで、週に二回王宮に行くだけになった。
のんびりできるようになって、中庭のベンチの日当たりの良いところで、すやすやする毎日なんだけど、お目付け役のトマスさんが、僕の生活に苦言を申す。
「お前さぁ……年老いたじぃ様じゃあるまいし、毎日毎日毎日、こんなとこで日向ぼっこして何もせず1日を終えるってなんなんだよ、良いのかよ、もっとこう、やることないのか」
「……ええっ」
何もせずって言うけど、風が木の葉っぱを揺らすのをみたり、木漏れ日が地面でからきらしてるのを見たり、いい匂いを嗅いだり、お日様の光を薄目でみたり、日が当たりすぎないように体勢変えたり色々してるんだけどな。
「剣の稽古でもしようぜ、折角ラクロア様っていう最強騎士様と暮らしてるのに、もったいないだろ、あんな風になりたいとか、なんかないの?」
あんな風って、言われても、僕はそういえば、ラクロア様が書類に埋もれて大変そうな姿と、大勢の人に指揮してる姿しかみたことないの。
「ラクロア様って強いの?」
「は?知らないのか?ラクロア様は、武術剣術共に国のトップクラスの強者だぞ」
「そーなの?知らない」
「一緒に暮らしてて知らないとか……まぁ、ユリス様は最近ここに来たばかりだし仕方ないか、だからって、もう勝手に見に行こうとかもうするなよ」
めっと、言われて、首をすくめた。あれは、僕が悪かったの。でもね、もともとは野良猫だしね、たまたま、捕まっただけ。でも、お出かけするときは、ちゃんと言うってもう覚えたし、迷惑かけたくないから勝手に行かないの。
「うん」
「よし、いい子だ、いい子なんだが……なんか時間を無駄にしてるんだよな」
僕がベンチの上でだらだらしてるのが、トマスさんにはどうしても納得できないみたい。
「トマスさんはお勉強好きなの?」
「いや、嫌いだ」
「じゃぁ同じ」
「しかしこんなダラダラしてるヤツと同じと言われるのは、納得できん」
「エーー」
「お前はラクロア様の伴侶になるんだろ?もっとラクロア様の右腕らしくシャンとした方が良い、可愛いだけじゃ……飽きられるぞ」
「え!?」
「男は狩人みたいなものだ、手に入れたら、他の獲物をさがす本能が」
バチコーンと、トマスさんの頭をメルがほうきで叩いた。
「いってぇ!!何するんだよ」
「何するはこっちのセリフですっ!!ユリス様になんてことを教えてるんですか、ラクロア様に報告しますよ」
「なっ、だけど、俺はユリスの為を思ってだな」
「勝手な妄想を押し付けてただけです、ラクロア様がユリス様に飽きるなんて有り得ません、二人の愛は永遠なんです」
「そっちの方が……」
「何ですか」
またメルがほうきを振り上げたので、トマスさんは、サササと僕のベンチの後ろに逃げた。喧嘩しないで。
「でも、ラクロア様がユリス様に何か運動をさせたいとおっしゃってたのは事実なんです」
「運動?」
「ええ、前に筋肉痛でお苦しみになったでしょう?だから……もうちょっと動いた方がと」
「あぁ、あれは痛かったの」
「は?筋肉痛って、こいつが?子供って筋肉痛になるの?」
「なります、僕はなります」
ブスッとして答えると、トマスさんはゲラゲラ笑った。失礼だと思うの。
「そりゃぁ、やばいぞ、やっぱ剣だ、教えてやるから、稽古場行こう」
「エーー」
「護身術くらい身に付けとけって、俺だって心配なんだよ」
つまりは、トマスさんは、僕が心配だったってこと?なーんだ、最初からそう言ってくれたら良いのに。人間ってば、解りにくいんだから。
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