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第11話 アルファの巣に連れ込まれたベータ(2)
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ガチャッと音がして、扉が開いた。
「新、そろそろ朝食が……」
入ってきた直樹は、カーテンが閉まっていて薄暗い寝室なのに、すぐに新の涙に気づいた。
「痛むのか⁉」
顔色を変えて大股に近づき顔を覗き込む。初夜の翌朝、力ずくで押さえつけられたときのことを思い出して、新は「違います!」と必死に否定した。男とのセックスを気持ち悪いと感じるこの人に、後孔に傷がないか目視確認されるのは絶対に嫌だ。
「違うんです、そうじゃなくて。あの、起きたら俺一人だったので、寝落ちした俺に愛想を尽かして、置いていかれたのかと思って」
どんどん声が小さくなっていく。起きたら一人だったから泣いてしまったなんて、幼児みたいな言い訳をしたのが恥ずかしい。嘲笑を覚悟したのに、直樹はベッドの隣に座ると目元をほころばせた。
「そんなことを思ったのか?」
甘い囁き声に、ぞくぞくと震えが走った。朝9時とは思えないぐらい、直樹との距離が近い気がする。
「昨夜はお前が寝落ちしてしまったから、体を洗ってやれなかった。朝食の用意ができていると呼びにきたんだが、その前に、一緒に入浴しよう」
駄目だ、そんなの洗ってもらうだけですむとは思えない。それなのに動けなかった。薄紙を剥くように、そっと巻き付けたシーツを剥ぎ取られ、ベッドに押し倒される。直樹は新の裸身に熱の籠もった視線をすべらせた。
「全身に花びらを撒いたみたいだ」
手首の内側を吸われる。それほど長く吸い上げられていないせいで、赤い鬱血の痕はすぐに薄れた。それなら、こんなにたくさん残っているキスマークはどれだけ強く吸われたんだろう。
「新の乳首、赤く腫れてるな」
「あなたが吸うからです」
「そうだな……」
逃げることは許されなかった。強引なアルファが新の平らな胸板に顔を埋める。赤く尖った乳首を甘噛みされて、新は高い声を上げた。乳首しかいじめられてないのに、ペニスが半勃ちになるのも、昨夜直樹を受け入れた場所が男を欲しがって疼くのも恥ずかしい。直樹にやんわりとペニスを握られ、しごかれて、新はいやいやした。
「もう朝食の用意ができているんでしょう?」
言外に使用人たちが待っていると告げる。初めて配偶者の自宅に来たのにずっとベッドから出ないなんて、彼らにどう思われるか。
「大丈夫だ、うちの使用人は優秀だから、俺が戻らなければ事情を察する」
「それは大丈夫じゃないです!」
思わず反論する新に、直樹は軽く笑って深いキスをした。こんなの拒むべきだ。頭の片隅でそう考えながら、新は夫にしがみついた。ついさっきまで、性処理の道具扱いなのは嫌だと泣いていたのに、こうして求められると嬉しくて、他に何も考えられなくなる。
彼がローションを手に取るのを見て、四つん這いになり腰を上げる。ひくひくと息づいている粘膜が、直樹の指を一本ずつ食むたび、こらえきれずに声が上がった。腹側のしこりをいじられるたびに、ペニスから透明な先走りがあふれる。
「お願い、直樹、早く欲しい」
新は慎みをかなぐり捨ててねだった。低く呻いた直樹が、服を着たままスラックスの前を寛げて避妊具を装着する。ゆっくりと入ってくる熱量の大きさに、新ははしたない声を上げて誘うように腰を揺らした。前立腺に太いペニスのくびれを引っ掛けられてこねられるたび、新のペニスから快楽のしずくがこぼれる。およそ一週間ぶりで、昨夜は新が寝落ちしたから一度しか交わってないはずなのに、新の肉筒は何度も貫かれたかのようにほぐれていて、太い欲望を奥へと引きずり込んだ。
「駄目、あ、あーっ!」
朝からこんな淫らな声を上げてしまうなんて。体の奥を責められて、理性が真っ白に焼き切れる。直樹の射精を受けとめながら、新はペニスから濃厚な精液をほとばしらせた。
直樹に手ずから全身を洗ってもらったあと、身繕いから何から全てしてもらって、新は身を縮めた。
「俺、服ぐらい一人で着られます」
「そうか」
何を言っても聞き流されて、直樹好みの仕立てのいいスーツで飾り立てられ、靴下まで穿かせてもらった。こうして直樹に世話をされていると、嬉々として母、柊の世話をする父のことを思い出す。そういうのじゃないってわかっているのに。
「俺のことは皆さんに何と仰ってるんですか。その……セフレとか、火遊び相手とか」
「俺はそういう相手を自宅に連れてきたことはない」
目顔で叱られても、きちんと確認しないわけにはいかなかった。
「中野家の人間は頻繁に、犯罪組織に営利誘拐のターゲットとして狙われます。俺はベータでほとんど顔出ししていませんが、できれば使用人の方々全員と顔を合わせておきたい。どう自己紹介すればいいか教えてください」
直樹の表情が厳しくなった。
「お前のことは、皆に結婚相手だと伝えてある」
新はあまりの驚きに口がきけなくなった。結婚相手。そんなふうに伝えてしまったなんて。
「どうしてそんなことを。あなたにオメガ女性の恋人が現れたら、すぐ別れるのに」
「現れなかったら?」
片思いの相手の顔が、至近距離まで近づく。
「現れなかったらどうする?」
もし、この人に恋人が現れなかったら。ずっと彼と結婚していられるなら……。
新は頭が真っ白になって、何も言えなかった。
「新、そろそろ朝食が……」
入ってきた直樹は、カーテンが閉まっていて薄暗い寝室なのに、すぐに新の涙に気づいた。
「痛むのか⁉」
顔色を変えて大股に近づき顔を覗き込む。初夜の翌朝、力ずくで押さえつけられたときのことを思い出して、新は「違います!」と必死に否定した。男とのセックスを気持ち悪いと感じるこの人に、後孔に傷がないか目視確認されるのは絶対に嫌だ。
「違うんです、そうじゃなくて。あの、起きたら俺一人だったので、寝落ちした俺に愛想を尽かして、置いていかれたのかと思って」
どんどん声が小さくなっていく。起きたら一人だったから泣いてしまったなんて、幼児みたいな言い訳をしたのが恥ずかしい。嘲笑を覚悟したのに、直樹はベッドの隣に座ると目元をほころばせた。
「そんなことを思ったのか?」
甘い囁き声に、ぞくぞくと震えが走った。朝9時とは思えないぐらい、直樹との距離が近い気がする。
「昨夜はお前が寝落ちしてしまったから、体を洗ってやれなかった。朝食の用意ができていると呼びにきたんだが、その前に、一緒に入浴しよう」
駄目だ、そんなの洗ってもらうだけですむとは思えない。それなのに動けなかった。薄紙を剥くように、そっと巻き付けたシーツを剥ぎ取られ、ベッドに押し倒される。直樹は新の裸身に熱の籠もった視線をすべらせた。
「全身に花びらを撒いたみたいだ」
手首の内側を吸われる。それほど長く吸い上げられていないせいで、赤い鬱血の痕はすぐに薄れた。それなら、こんなにたくさん残っているキスマークはどれだけ強く吸われたんだろう。
「新の乳首、赤く腫れてるな」
「あなたが吸うからです」
「そうだな……」
逃げることは許されなかった。強引なアルファが新の平らな胸板に顔を埋める。赤く尖った乳首を甘噛みされて、新は高い声を上げた。乳首しかいじめられてないのに、ペニスが半勃ちになるのも、昨夜直樹を受け入れた場所が男を欲しがって疼くのも恥ずかしい。直樹にやんわりとペニスを握られ、しごかれて、新はいやいやした。
「もう朝食の用意ができているんでしょう?」
言外に使用人たちが待っていると告げる。初めて配偶者の自宅に来たのにずっとベッドから出ないなんて、彼らにどう思われるか。
「大丈夫だ、うちの使用人は優秀だから、俺が戻らなければ事情を察する」
「それは大丈夫じゃないです!」
思わず反論する新に、直樹は軽く笑って深いキスをした。こんなの拒むべきだ。頭の片隅でそう考えながら、新は夫にしがみついた。ついさっきまで、性処理の道具扱いなのは嫌だと泣いていたのに、こうして求められると嬉しくて、他に何も考えられなくなる。
彼がローションを手に取るのを見て、四つん這いになり腰を上げる。ひくひくと息づいている粘膜が、直樹の指を一本ずつ食むたび、こらえきれずに声が上がった。腹側のしこりをいじられるたびに、ペニスから透明な先走りがあふれる。
「お願い、直樹、早く欲しい」
新は慎みをかなぐり捨ててねだった。低く呻いた直樹が、服を着たままスラックスの前を寛げて避妊具を装着する。ゆっくりと入ってくる熱量の大きさに、新ははしたない声を上げて誘うように腰を揺らした。前立腺に太いペニスのくびれを引っ掛けられてこねられるたび、新のペニスから快楽のしずくがこぼれる。およそ一週間ぶりで、昨夜は新が寝落ちしたから一度しか交わってないはずなのに、新の肉筒は何度も貫かれたかのようにほぐれていて、太い欲望を奥へと引きずり込んだ。
「駄目、あ、あーっ!」
朝からこんな淫らな声を上げてしまうなんて。体の奥を責められて、理性が真っ白に焼き切れる。直樹の射精を受けとめながら、新はペニスから濃厚な精液をほとばしらせた。
直樹に手ずから全身を洗ってもらったあと、身繕いから何から全てしてもらって、新は身を縮めた。
「俺、服ぐらい一人で着られます」
「そうか」
何を言っても聞き流されて、直樹好みの仕立てのいいスーツで飾り立てられ、靴下まで穿かせてもらった。こうして直樹に世話をされていると、嬉々として母、柊の世話をする父のことを思い出す。そういうのじゃないってわかっているのに。
「俺のことは皆さんに何と仰ってるんですか。その……セフレとか、火遊び相手とか」
「俺はそういう相手を自宅に連れてきたことはない」
目顔で叱られても、きちんと確認しないわけにはいかなかった。
「中野家の人間は頻繁に、犯罪組織に営利誘拐のターゲットとして狙われます。俺はベータでほとんど顔出ししていませんが、できれば使用人の方々全員と顔を合わせておきたい。どう自己紹介すればいいか教えてください」
直樹の表情が厳しくなった。
「お前のことは、皆に結婚相手だと伝えてある」
新はあまりの驚きに口がきけなくなった。結婚相手。そんなふうに伝えてしまったなんて。
「どうしてそんなことを。あなたにオメガ女性の恋人が現れたら、すぐ別れるのに」
「現れなかったら?」
片思いの相手の顔が、至近距離まで近づく。
「現れなかったらどうする?」
もし、この人に恋人が現れなかったら。ずっと彼と結婚していられるなら……。
新は頭が真っ白になって、何も言えなかった。
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