【完結】運命の番に逃げられたアルファと、身代わりベータの結婚

貴宮 あすか

文字の大きさ
18 / 38

第18話 アルファの巣に連れ込まれたベータ(9)

しおりを挟む
 寝室はすでに清掃が終わっていて、開けられたカーテンから昼の陽射しが室内にふりそそいでいる。直樹は新をベッドに下ろすと、早足に窓際に近づいて乱暴にカーテンを閉めた。一気に室内が薄暗くなり、情事の気配をまとう。
 直樹が新を振り返った。どうしよう、もう逃げられない。ベッドに座ったまま、新は配偶者のアルファがゆっくりと近づいてくるのを見つめた。 
「あ、あの」
 そこから先の言葉は、喉の奥に貼りついて出てこなかった。こういうとき、なんて言ったらいいんだろう。今までずっと性処理の道具として、一方的に直樹に抱かれてきたから、何もわからない。直樹はベッドのへりに座る新の隣に、少し間隔を空けて座った。
「そんな、今にも世界が終わりそうな顔をしないでくれ。新」

 あらた。

「こういうときに俺の名前を呼んでくれたの、初めてですね」
 嬉しさに思わず微笑むと、直樹は悲鳴をこらえるように喘いだ。右手で額を押さえ、目を閉じる。
「そう。そうだな。名前も呼ばないどころか、お前の兄の名前を呼びながら抱くなんて……最低だった。俺は新にひどいことばかりしてきた」
「いいえ。たくさん優しくしてくれました」
 初夜のときも、新婚旅行でも、セックス未経験の自分が快楽を感じられるように、丁寧に抱いてくれた。直樹は苦痛をこらえるように眉を寄せた。
「新は優しすぎる」
 そんなことない。
 兄から「拓海と駆け落ちする」と告げられたとき、結婚式目前に!と思いつつも、直樹を義兄と呼ばずにすむことを喜んだ。兄の身代わりであっても、婚姻を無効にしないためでも、直樹とセックスできるのが幸せで仕方なかった。自分は優しくなんかない、身勝手な人間だ。
「お前に他に好きなアルファがいてもいい、そいつと結ばれる望みはないというなら俺にチャンスをくれ。俺を少しでも好きになってほしい」

 他の人なんていない。俺にはあなただけだ。

 言葉にできない思いを瞳に映して直樹を見つめる。そっと頭の後ろに手を回され、軽く引き寄せられてキスされた。さっきまでのキスの続きのように、直樹の肉厚の舌はすぐに新の口の中に入ってきた。唇を開いて受け入れ、つたなくても自分から舌を絡める。新の経験値の低い体は、セックスを予感させる深いキスにすぐに熱くなった。昨夜も今朝も直樹としたのに、もう恥ずかしい場所が淫らに疼いて、もじもじと太腿をこすり合わせた。
 百戦錬磨のアルファは、配偶者の愛らしい恥じらいにすぐに気づいた。淫蕩な笑みを浮かべて視線を合わせたまま、大きくて意地悪な手で、配偶者の脚の間を膝から上へと撫でていく。服の上から半勃ちになったものを軽く揉まれて、新は小さな悲鳴を上げた。
「やっ」
「嫌なのか?」
「だって、あなたに触ってもらったら感じてしまうから」
 こんな恥ずかしいことを口にするなんて、泣きそうだ。直樹は目を細めて微笑んだ。笑われた羞恥に逃げようと新がもがくと、あっという間にベッドに押し倒された。
「そんなに煽らないでくれ」
 直樹は苦しげに懇願して、再びキスしてきた。煽ってなんかないという新の抗弁は、直樹の唇に塞がれた。ベッドの上でもつれあってキスを繰り返す。ようやく解放されたときには、新の息は完全に上がっていた。
「意地悪」
 泣き言をもらすと、直樹は獣のように唸った。
「新が可愛すぎるんだ。ベータの男だから無理をさせてはいけないとわかっているのに、初夜のときから全然手加減できない」
 直樹が新の服のボタンを外して、一枚一枚脱がせていく。新を全裸にさせたあと、自分の服は破く勢いで脱ぎ捨てた。
「あ」
 昨夜も今朝もしたばかりなのに、直樹のものは怒張して反り返っている。新は見てしまったそれから視線を逸らした。そうか、発情期明けの料理には精力回復の効果があるから……。
「新の顔を見ながら抱きたい」
 狂おしい囁きに、新は「駄目です」と拒んだ。傷ついた顔の直樹に、「俺を見て萎えるあなたを見たくないんです。お願い」と懇願する。直樹は苦しそうに顔を歪めて黙っていたが、しばらくしてから「わかった」と頷いた。


「あ……ああっ、駄目ッ」
 逃げようとしても腰を掴んで引き戻された。
 ぬぷっ…… 、ぬぷっ……、ぬぷっ……。一定のリズムを保ったまま、ペニスの雁首で前立腺を捏ねられる。直樹の責めに、四つん這いの新は気持ち良すぎてすすり泣いた。
 新の薔薇色のペニスはずっと勃ちっぱなしで、夫に捏ねられるたび鈴口からとろとろと透明な蜜を垂れ流している。ごりっと強めに捏ねられて、新は「あぁっ!」と嬌声をあげて薄い精液を飛ばした。まろい尻がひくひくと夫の怒張を食い締める。ゆっくり引き抜かれる感覚に名残惜しさを感じていると、再びズンと突きあげられて、新は声にならない声を漏らした。
「新は奥が好きなのか」
「知らない、そんなのっ」
 泣き声を上げると、直樹に深いところまで貫かれ、力強く抽送を繰り返された。新は性器からとろとろと透明なぬめりを漏らしっぱなしだった。奥を突かれる動きに合わせて尻を振る。
 直樹の動きが早くなり、ひときわ深く貫かれた瞬間、新は甘やかな声を上げて達した。陰茎が揺れて、白濁した精液をわずかに漏らす。
 そのまま彼はシーツに崩れ落ちた。
 直樹は眉を寄せ、動きを止めてどくどくと濃厚な精液を新の中に注ぎ続けた。子種を全て出し切ったあと、ゆったりと抽送を繰り返して硬度の残るペニスを引き抜く。
「大丈夫か」
 ベータの配偶者は、怨ずるような眼差しをアルファに向けた。
「大丈夫じゃ、ない。こんなの、ひどい」
 ぐったりしすぎて一文が短くしか話せない。直樹は大切な配偶者を優しく撫でた。
「すまない、新が可愛すぎて何度でもイかせたくなった。新、ずっとうちにいてくれ」
 直樹の懇願に、新はしばらく沈黙した。結論を口にするのは勇気が必要だったけれど、言わないわけにはいかなかった。
「無理です。俺、日曜の昼には自分の家に帰ります」

しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/01/23 19:00 アルファポリス版限定SS公開予定  累計で6300♡いいねと累計ポイント285000突破の御礼SSになります

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...