32 / 38
第32話 初恋の相手
しおりを挟む
新の言葉を聞いた直樹は性急だった。愛するベータを抱き上げて、大股で主寝室に連れて行く。新をベッドのへりに座らせて、直樹はその前に片膝をついた。
「結婚指輪を出してくれ」
新はいつも身につけているケースを取り出した。直樹が右手で指輪を取り、左手で新の左手を取った。ゆっくりと指輪が薬指の上をすべっていき、薬指の付け根で輝いた。新は瞬きもせず、夫が自分の左手の薬指に結婚指輪を嵌めるのを見つめた。
「新はいつも、俺が運命の番のオメガに出会ったら、お前を忘れると言って俺を拒んだ。今夜、律のヒートに揺らがなかったことで、俺はお前への愛を証明できただろうか」
真顔で尋ねる直樹を見下ろして、新の唇は何か言いたげにわなないた。でも溢れ出す感情が大きすぎて、何も言えなかった。
どんなに好きだと言われても、アルファである直樹がベータの自分を選ぶことはないと思っていた。本来の相手であるオメガが現れて、直樹を奪っていくに違いないと決めつけていた。
間違っていたのは自分のほうだ。
この家に初めて来た時、直樹は「ベータの新を、自分を裏切ったベータの両親に重ねていた」「認知のゆがみがあった」と頭を下げてくれた。でもそれは自分も同じなんじゃないだろうか。アルファはオメガしか愛さない、運命の番には逆らえないって、思い込みで決めつけていたんじゃないだろうか。
「ええ。俺が間違っていた。直樹、ありがとう」
「それならもう結婚指輪は外さないでくれ。別居婚もやめて、ずっとこの家で、俺の隣で暮らしてほしい」
「ずっと?」
「ずっとだ」
アルファは真剣すぎて怖いほどだった。
「はい」
新が頷く。直樹は止めていた息を深く吐き出した。
「よかった。もう新が出ていく姿を見送らなくていいんだな」
隣りに座ったアルファに力強く抱き締められる。彼が少し震えているのを感じて驚き、新も彼を抱き締めた。
「ごめんなさい、あなたを信じられなくて」
「いや」
直樹は少し体を離して目元を和ませた。
「十年前に出会った新が、俺の初恋の相手だった。あのときのお前はチョーカーをつけていたから、律だと思っていたんだ。ずっともう一度会いたいと願っていた。それなのに、結婚を目前にしてあの少年を奪われて……新が許せなかった。許せないのに夢中になってしまって自分が信じられなかった」
「はい」
その気持ちは新にも理解できた。
「新に、いつか俺はオメガを選ぶと言われるたび、それは絶対あり得ないと断言できなかった。でも今なら断言できる。俺には新だけだ。もし中野家が新を取り返そうとしてきたら、全面戦争をしかける」
「やめてください!」
悲鳴を上げる新に、直樹はゾッとする笑顔を浮かべて、愛するベータの頬を撫でた。
「俺は本気だ。新にずっとここにいてもらって、幸せな笑顔を見せてもらうためならなんでもする」
「それなら中野グループを繁栄させるために、あなたの力を貸してほしいと言ったら……してくれますか?」
おずおずと尋ねると、たまりかねたようにアルファは中野家の令息を抱き締めた。
「もちろん! 俺の全ては、命もお前のものだ、新」
「直樹……」
新はスーツの上からでもわかる、たくましい夫の背筋をゆっくりと撫でおろした。腰から太腿へと手のひらを滑らせると、直樹は新の手を掴まえて、服の上から自分の高ぶりを握らせた。直樹の、アルファらしい長大なものはすでにガチガチになっている。新は熱い吐息を漏らしながら、大好きな夫のものを撫で回した。
「直樹をください。ベータの男の俺の体には難しいかもしれないけれど、亀頭球まで全部受け入れて、お腹の中を直樹でいっぱいにしてもらって、奥まで突いてほしい、あっ!」
「新」
軽く抱き上げられ、服の上から焦れたように肛門をまさぐられる。震える男の体を抱きながら、直樹は新の耳たぶを舌でなぞり、首筋を吸い上げた。
「避妊具なしで何度も中出しさせてくれ。可愛い新のお腹の中に俺の子種をいっぱい塗り込んで、亀頭球で栓をして、フェロモン漬けにしてしまおう。そうすれば誰も新に近寄れないだろう?」
目が笑ってない笑顔は、あまりに恐ろしかった。新婚旅行中にフェロモン漬けにされたときですら、避妊具はつけてくれていたのに。恐ろしいはずなのに、後孔がきゅうっと締まる。新は何も言えずに自分の夫にしがみついた。
「結婚指輪を出してくれ」
新はいつも身につけているケースを取り出した。直樹が右手で指輪を取り、左手で新の左手を取った。ゆっくりと指輪が薬指の上をすべっていき、薬指の付け根で輝いた。新は瞬きもせず、夫が自分の左手の薬指に結婚指輪を嵌めるのを見つめた。
「新はいつも、俺が運命の番のオメガに出会ったら、お前を忘れると言って俺を拒んだ。今夜、律のヒートに揺らがなかったことで、俺はお前への愛を証明できただろうか」
真顔で尋ねる直樹を見下ろして、新の唇は何か言いたげにわなないた。でも溢れ出す感情が大きすぎて、何も言えなかった。
どんなに好きだと言われても、アルファである直樹がベータの自分を選ぶことはないと思っていた。本来の相手であるオメガが現れて、直樹を奪っていくに違いないと決めつけていた。
間違っていたのは自分のほうだ。
この家に初めて来た時、直樹は「ベータの新を、自分を裏切ったベータの両親に重ねていた」「認知のゆがみがあった」と頭を下げてくれた。でもそれは自分も同じなんじゃないだろうか。アルファはオメガしか愛さない、運命の番には逆らえないって、思い込みで決めつけていたんじゃないだろうか。
「ええ。俺が間違っていた。直樹、ありがとう」
「それならもう結婚指輪は外さないでくれ。別居婚もやめて、ずっとこの家で、俺の隣で暮らしてほしい」
「ずっと?」
「ずっとだ」
アルファは真剣すぎて怖いほどだった。
「はい」
新が頷く。直樹は止めていた息を深く吐き出した。
「よかった。もう新が出ていく姿を見送らなくていいんだな」
隣りに座ったアルファに力強く抱き締められる。彼が少し震えているのを感じて驚き、新も彼を抱き締めた。
「ごめんなさい、あなたを信じられなくて」
「いや」
直樹は少し体を離して目元を和ませた。
「十年前に出会った新が、俺の初恋の相手だった。あのときのお前はチョーカーをつけていたから、律だと思っていたんだ。ずっともう一度会いたいと願っていた。それなのに、結婚を目前にしてあの少年を奪われて……新が許せなかった。許せないのに夢中になってしまって自分が信じられなかった」
「はい」
その気持ちは新にも理解できた。
「新に、いつか俺はオメガを選ぶと言われるたび、それは絶対あり得ないと断言できなかった。でも今なら断言できる。俺には新だけだ。もし中野家が新を取り返そうとしてきたら、全面戦争をしかける」
「やめてください!」
悲鳴を上げる新に、直樹はゾッとする笑顔を浮かべて、愛するベータの頬を撫でた。
「俺は本気だ。新にずっとここにいてもらって、幸せな笑顔を見せてもらうためならなんでもする」
「それなら中野グループを繁栄させるために、あなたの力を貸してほしいと言ったら……してくれますか?」
おずおずと尋ねると、たまりかねたようにアルファは中野家の令息を抱き締めた。
「もちろん! 俺の全ては、命もお前のものだ、新」
「直樹……」
新はスーツの上からでもわかる、たくましい夫の背筋をゆっくりと撫でおろした。腰から太腿へと手のひらを滑らせると、直樹は新の手を掴まえて、服の上から自分の高ぶりを握らせた。直樹の、アルファらしい長大なものはすでにガチガチになっている。新は熱い吐息を漏らしながら、大好きな夫のものを撫で回した。
「直樹をください。ベータの男の俺の体には難しいかもしれないけれど、亀頭球まで全部受け入れて、お腹の中を直樹でいっぱいにしてもらって、奥まで突いてほしい、あっ!」
「新」
軽く抱き上げられ、服の上から焦れたように肛門をまさぐられる。震える男の体を抱きながら、直樹は新の耳たぶを舌でなぞり、首筋を吸い上げた。
「避妊具なしで何度も中出しさせてくれ。可愛い新のお腹の中に俺の子種をいっぱい塗り込んで、亀頭球で栓をして、フェロモン漬けにしてしまおう。そうすれば誰も新に近寄れないだろう?」
目が笑ってない笑顔は、あまりに恐ろしかった。新婚旅行中にフェロモン漬けにされたときですら、避妊具はつけてくれていたのに。恐ろしいはずなのに、後孔がきゅうっと締まる。新は何も言えずに自分の夫にしがみついた。
93
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/01/23 19:00 アルファポリス版限定SS公開予定
累計で6300♡いいねと累計ポイント285000突破の御礼SSになります
僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた
いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲
捨てられたΩの末路は悲惨だ。
Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。
僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。
いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
回帰したシリルの見る夢は
riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。
しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。
嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。
執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語!
執着アルファ×回帰オメガ
本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語お楽しみいただけたら幸いです。
***
2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました!
応援してくれた皆様のお陰です。
ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!!
☆☆☆
2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!!
応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる