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時を遡ってでも君を助けたいお話
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私はリリアナ。公爵家の娘。優しい両親と兄に愛される幸せな子。何不自由ない暮らし、愛に溢れる家族。だけれどそれでも、悩みというものはあるもので。
私の悩みのタネは婚約者のマルティン様。優しくて優秀な方なのだけど、その優しさが今悪い方に働いている。
なんでも、マルティン様の従妹の父が再婚したそう。母を亡くした従妹のミア様は、再婚に反対だったらしく継母からそのことで嫌われていじめられているとか。
そして、マルティン様の屋敷に逃げ込んできた。まあ、そこまではいい。けれどミア様はマルティン様は私の婚約者だというのに、平然と腕を組んだり猫なで声で甘えたりする。
マルティンはそんなミア様に対して「可哀想な子だから」と甘やかすばかり。
「…はぁ、私、マルティン様に対してもはや呆れて嫉妬すら沸かなくなってしまいましたわ」
今日も、私とのデートにミア様を連れてきたマルティン様。呆れ果てて何も言えませんでしたわ。なぜかミア様は勝ち誇った表情でしたし。
「もう私、恋愛感情におけるアイというものがわかりませんわ」
何を以ってアイと呼ぶのか。
どこからどこまでをアイと呼ぶのか。
私はもう、限界まで来ているのかもしれない。
だから、私もミア様を見習って従兄に助けを求めますわ。
「久しぶり。大丈夫かい?リリアナ」
「レオ兄様!」
従兄で、隣国の第四皇子のレオ兄様。
隣国の皇帝陛下の側妃として嫁いだ叔母さまの息子で、寵妃の御子で本人も優秀だとちやほやされているのに「僕には向いてない」と皇位継承権を早々に返上して「婚約者は自分で決める」と言い張ってまだ婚約者を作らない変わり者のレオ兄様。
そんなレオ兄様に事情を話して泣きついたら、飛んできてくれた。
「可哀想に、浮気者の婚約者を持つと大変だね」
「多分浮気してるつもりは本人にはありませんわ」
「周りから見れば十分浮気だろう。実際そのことで、リリアナは影で色々言われてるんだろう?」
「ええ、まあ…」
私はミア様にマルティン様を盗られたと影でバカにされている。
私の耳には入らないように影でコソコソと言っているらしいが、私は地獄耳なので普通に知っていた。
「可哀想なリリアナ。あちらが従妹が可哀想だからと甘やかすばかりなら、僕もリリアナをうんと甘やかしてあげる」
「さすがレオ兄様、頼りになりますわ。でも、少し嫌味かしら?」
「そういうのは意趣返しと言うんだよ。リリアナがこんなに悩んでいるんだ。お返しくらいしたっていいだろう」
「ふふ」
ということで、レオ兄様とイチャイチャごっこをすることになった。
レオ兄様に隙あらば腕組みをして、猫なで声で甘えて、レオ兄様もそれに甘い顔をする。
レオ兄様は皇位継承権は返上したとは言え、隣国の寵妃の産んだ皇子様。
マルティン様は不満はあるような表情だけれど、何も言えずに歯噛みしている。
そして、ふとミア様と自分との関係に思い至ったのだろう。ミア様をやんわり注意するようになり、ミア様と距離を置き始めた。
それに我慢ならなかったのがミア様で。
「…この阿婆擦れ!」
そう言って、レオ兄様の前で私をナイフで刺そうとした。
レオ兄様とレオ兄様の護衛たち数人に呆気なく止められたけれど。
さすがに、ナイフという凶器を所持して襲ってきたことで大騒動になった。
ミア様は治安部隊に逮捕され、裁判にかけられて牢につながれた。
怒った私の両親と兄がとうとうマルティン様との婚約を破棄して、あちら有責で別れた。
慰謝料でかなりの額をいただいたので、マルティン様は生活が苦しくなったらしく家族から今更ながら責められているそう。
そして騒動が落ち着いた頃に、レオ兄様は私にプロポーズしてくれた。
「リリアナ。僕の妻になってくれないかな。僕はこれから母国で侯爵位を賜って、田舎の領地を与えてもらってそちらで暮らすことになるのだけど…そこにリリアナがいてくれたら嬉しい」
「レオ兄様…ありがとうございます。嬉しいですわ。ぜひお受けします」
私を助けてくれたレオ兄様。
私を甘やかして、心の傷を癒してくれたレオ兄様。
いつのまにか私は、プロポーズされてこんなに嬉しくなるほどレオ兄様を好きになっていたらしい。
私ははにかんで受け入れた。
レオ兄様は、泣いて喜んでくれた。
今度は、救うことができた。
一度目の人生。
僕は従妹のリリアナが好きだった。
けれど僕は皇帝の寵妃の子で、第四皇子で、優秀な方だったから…婚約者も当然いたし、だから婚約者との関係に悩むリリアナを助けられなかった。
むしろ、近づくことさえできなかった。
好きだったからこそ、手を差し伸べられなかった。
そしてリリアナは、あのミアとかいう女に殺された。
理由は、マルティンとかいうリリアナの婚約者が最終的にミアではなくリリアナを選んだかららしい。
助けを求められたのに、助けに行けなかった。
その結果みすみすリリアナを殺された。
僕は、禁呪を使用して時を渡った。
代償は僕の魔力。
僕は魔術を今後一切使えなくなった。
とはいえ、僕は第四皇子。魔術を自ら使う機会などほとんどない。禁呪だって、母から昔こっそり教えられたもので皇族として習ったものではないし。
だから過去に遡ってやり直しの人生を送るのにも、何の問題もなかった。
「レオ兄様!」
過去に戻り、リリアナと接する。
リリアナが生きている、それだけで幸せだった。
僕は早いうちから両親と直談判して、皇位継承権は返上した。
そして婚約者は自分で選びたいと申し出て、父は寵妃の子である僕も溺愛していたからそれを許してくれた。
今度は婚約者はいない、重要な立場でもない僕になった。
そして、リリアナから助けを求められた。
今度は、迷わず駆けつけた。
リリアナを守りつつ、ミアとかいう女をわざと挑発するようなことをした。
結果、リリアナを守りあの女を牢獄へ送ることができた。
リリアナはあのちゃらんぽらんとも別れられて、慰謝料ももらえた。
あのちゃらんぽらんはリリアナを逆恨みしている様子もなく、逆恨みしたところで危害を加えられる状況にはない。
そして僕はリリアナにプロポーズをした。
リリアナはプロポーズを受けてくれた。
やっと守れた。
やっと結ばれた。
だからこそ、僕はもう間違えない。
リリアナを一番大切にする。
…そして僕は、今度こそリリアナにハッピーエンドをあげられた。
私の悩みのタネは婚約者のマルティン様。優しくて優秀な方なのだけど、その優しさが今悪い方に働いている。
なんでも、マルティン様の従妹の父が再婚したそう。母を亡くした従妹のミア様は、再婚に反対だったらしく継母からそのことで嫌われていじめられているとか。
そして、マルティン様の屋敷に逃げ込んできた。まあ、そこまではいい。けれどミア様はマルティン様は私の婚約者だというのに、平然と腕を組んだり猫なで声で甘えたりする。
マルティンはそんなミア様に対して「可哀想な子だから」と甘やかすばかり。
「…はぁ、私、マルティン様に対してもはや呆れて嫉妬すら沸かなくなってしまいましたわ」
今日も、私とのデートにミア様を連れてきたマルティン様。呆れ果てて何も言えませんでしたわ。なぜかミア様は勝ち誇った表情でしたし。
「もう私、恋愛感情におけるアイというものがわかりませんわ」
何を以ってアイと呼ぶのか。
どこからどこまでをアイと呼ぶのか。
私はもう、限界まで来ているのかもしれない。
だから、私もミア様を見習って従兄に助けを求めますわ。
「久しぶり。大丈夫かい?リリアナ」
「レオ兄様!」
従兄で、隣国の第四皇子のレオ兄様。
隣国の皇帝陛下の側妃として嫁いだ叔母さまの息子で、寵妃の御子で本人も優秀だとちやほやされているのに「僕には向いてない」と皇位継承権を早々に返上して「婚約者は自分で決める」と言い張ってまだ婚約者を作らない変わり者のレオ兄様。
そんなレオ兄様に事情を話して泣きついたら、飛んできてくれた。
「可哀想に、浮気者の婚約者を持つと大変だね」
「多分浮気してるつもりは本人にはありませんわ」
「周りから見れば十分浮気だろう。実際そのことで、リリアナは影で色々言われてるんだろう?」
「ええ、まあ…」
私はミア様にマルティン様を盗られたと影でバカにされている。
私の耳には入らないように影でコソコソと言っているらしいが、私は地獄耳なので普通に知っていた。
「可哀想なリリアナ。あちらが従妹が可哀想だからと甘やかすばかりなら、僕もリリアナをうんと甘やかしてあげる」
「さすがレオ兄様、頼りになりますわ。でも、少し嫌味かしら?」
「そういうのは意趣返しと言うんだよ。リリアナがこんなに悩んでいるんだ。お返しくらいしたっていいだろう」
「ふふ」
ということで、レオ兄様とイチャイチャごっこをすることになった。
レオ兄様に隙あらば腕組みをして、猫なで声で甘えて、レオ兄様もそれに甘い顔をする。
レオ兄様は皇位継承権は返上したとは言え、隣国の寵妃の産んだ皇子様。
マルティン様は不満はあるような表情だけれど、何も言えずに歯噛みしている。
そして、ふとミア様と自分との関係に思い至ったのだろう。ミア様をやんわり注意するようになり、ミア様と距離を置き始めた。
それに我慢ならなかったのがミア様で。
「…この阿婆擦れ!」
そう言って、レオ兄様の前で私をナイフで刺そうとした。
レオ兄様とレオ兄様の護衛たち数人に呆気なく止められたけれど。
さすがに、ナイフという凶器を所持して襲ってきたことで大騒動になった。
ミア様は治安部隊に逮捕され、裁判にかけられて牢につながれた。
怒った私の両親と兄がとうとうマルティン様との婚約を破棄して、あちら有責で別れた。
慰謝料でかなりの額をいただいたので、マルティン様は生活が苦しくなったらしく家族から今更ながら責められているそう。
そして騒動が落ち着いた頃に、レオ兄様は私にプロポーズしてくれた。
「リリアナ。僕の妻になってくれないかな。僕はこれから母国で侯爵位を賜って、田舎の領地を与えてもらってそちらで暮らすことになるのだけど…そこにリリアナがいてくれたら嬉しい」
「レオ兄様…ありがとうございます。嬉しいですわ。ぜひお受けします」
私を助けてくれたレオ兄様。
私を甘やかして、心の傷を癒してくれたレオ兄様。
いつのまにか私は、プロポーズされてこんなに嬉しくなるほどレオ兄様を好きになっていたらしい。
私ははにかんで受け入れた。
レオ兄様は、泣いて喜んでくれた。
今度は、救うことができた。
一度目の人生。
僕は従妹のリリアナが好きだった。
けれど僕は皇帝の寵妃の子で、第四皇子で、優秀な方だったから…婚約者も当然いたし、だから婚約者との関係に悩むリリアナを助けられなかった。
むしろ、近づくことさえできなかった。
好きだったからこそ、手を差し伸べられなかった。
そしてリリアナは、あのミアとかいう女に殺された。
理由は、マルティンとかいうリリアナの婚約者が最終的にミアではなくリリアナを選んだかららしい。
助けを求められたのに、助けに行けなかった。
その結果みすみすリリアナを殺された。
僕は、禁呪を使用して時を渡った。
代償は僕の魔力。
僕は魔術を今後一切使えなくなった。
とはいえ、僕は第四皇子。魔術を自ら使う機会などほとんどない。禁呪だって、母から昔こっそり教えられたもので皇族として習ったものではないし。
だから過去に遡ってやり直しの人生を送るのにも、何の問題もなかった。
「レオ兄様!」
過去に戻り、リリアナと接する。
リリアナが生きている、それだけで幸せだった。
僕は早いうちから両親と直談判して、皇位継承権は返上した。
そして婚約者は自分で選びたいと申し出て、父は寵妃の子である僕も溺愛していたからそれを許してくれた。
今度は婚約者はいない、重要な立場でもない僕になった。
そして、リリアナから助けを求められた。
今度は、迷わず駆けつけた。
リリアナを守りつつ、ミアとかいう女をわざと挑発するようなことをした。
結果、リリアナを守りあの女を牢獄へ送ることができた。
リリアナはあのちゃらんぽらんとも別れられて、慰謝料ももらえた。
あのちゃらんぽらんはリリアナを逆恨みしている様子もなく、逆恨みしたところで危害を加えられる状況にはない。
そして僕はリリアナにプロポーズをした。
リリアナはプロポーズを受けてくれた。
やっと守れた。
やっと結ばれた。
だからこそ、僕はもう間違えない。
リリアナを一番大切にする。
…そして僕は、今度こそリリアナにハッピーエンドをあげられた。
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