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火遊びした代償
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「君のことが好きだ」
なぜこの男は、婚約を解消した今になって愛を囁くようになったのだろうか。
私はとある伯爵家の長女。うちは爵位こそまあまあとはいえ、鉱山を多数所有してお金にはかなり余裕がある。
両親は仲が良く、娘が欲しかったのだと二人して私を溺愛する。
兄達は優しく家族思いで、両親に親孝行をしつつ私を甘やかす。
そんな私の唯一の悩みは、義理の妹だ。
義妹は、母の姉の子供。両親を不慮の事故で亡くし、行く先もないからと母が引き取ってきた。
「お姉様ずるーい!」
そんな義妹は、いつもいつも私のことをずるいずるいと妬んでくる。
ネックレスが可愛いだとか、ブレスレットが素敵とか、ブローチが上品とか。
そう言ってずるいずるいと喚いて、最終的に強奪していく。
だが、両親を亡くした可哀想な子であることに間違いはないので強くも言えない。
…が、ある日とんでもないものを強奪された。
「お姉様ずるーい!あんな素敵な婚約者がいるなんて!」
うわぁ。
最初の感想はそれ。
とはいえ、政略結婚の相手を強奪されることはないと思っていたのだが。
「すまない、あの小娘がお前の婚約者を寝取った」
「え」
「お腹に子供が出来たらしい」
…うわぁ、すごーい!
そこまでするかとドン引きした。
「その…どうする?私としては、お前を裏切った婚約者とは婚約解消させたいんだが」
「ぜひお願いします」
「でもって、妻には悪いがあの小娘はいい加減うちから追い出す」
「ぜひお願いします!!!」
ということで、トントン拍子で話は進み私とバカ男との婚約は解消。元義妹は義理の姉妹ですらなくなった。
バカ男はせっかくの縁談をダメにしたとして実家から勘当されたらしい。あちらの家は優秀な弟くんが継ぐことになったとか。慰謝料も相場相当にいただいた。
元義妹はうちの戸籍から離れ、うちから追い出された。引取先もないので、住み込みで働ける場所をなんとか探したらしい。ここからは噂で聞いただけだけど…結果、待遇の悪い娼館に行き着いてしまったとかなんとか。ちなみに妊娠は虚言で、あのバカ男を欲しくてでっちあげたらしい。
…一夜を共に過ごしたのは、本当らしいから始末に負えない。
で。
「本当に君を愛してる。嘘じゃない。あの子とはちょっとした火遊びだったんだよ」
ちょっとしたお出かけの行き先で、偶然にもバカ男に遭遇してしまった。
そしてなぜか今更言い寄られている。
「…そうですか」
「そう!そうなんだ!」
「で?」
「え?」
「何を望んでいるのか知りませんけど、よりを戻すのは絶対嫌ですからね?」
なぜかショックを受けた様子のバカ男。いや、当たり前だろ。
「なんで私の気持ちとか考えられないんですか?」
「え、だ、だからよりを戻してやり直そうって…」
「そんなこと私が望むと思いますか?」
「え…」
「え…じゃなくて!」
この際だから全部言ってやろう。
「まさか私が貴方みたいな顔だけの男をまだ好きだと思ってます?バカじゃないの?」
「え」
「貴方は顔こそいいけど、私の気持ちも考えられないし、浮気をするし、その相手は私の義妹だし。そんな男願い下げですけど」
そこまで言われて悔しそうに顔を歪める彼に、少し溜飲が下がる。
「おまけに口は臭いし、人の話は聞かないし、髪の毛は薄いし」
「なっ…!?」
「自分より下の立場の人間には横柄な態度だし、ありがとうの一言も言えないし、優しさのかけらもないし」
「そ、そんなことは…!」
「人望もないし、それどころか嫌われ者だし、貴方なんかと婚約していた時同情されてたし」
ショックを受けた表情にさらに溜飲が下がる。
「婚約解消を周りの人が知ったら、みんな喜んでくれたし。貴方どれだけ嫌われてるのよ」
もう聞きたくないのか、とうとう手で耳栓する彼に…勝った!!!と思った。
「聞こえてますかー?よりを戻すのが無理な理由、最大の理由はその人よ」
後ろの気配に、彼は振り向く。耳栓も外した。
その視線の先には、彼がいつも見下して蔑んでいた男。
「え、あ、え?」
「お久しぶりです。私の婚約者に何か用ですか?」
「え、婚約者って」
「私達婚約しているの」
彼の後ろから、私の新たな婚約者がこちらに来た。彼と熱い抱擁を交わす。
「ダーリン、待ってたわ」
「ハニー、お待たせ。行こうか」
手を繋いでデートに向かう私達に、元婚約者は喚いた。
「そ、そんな底辺の男のどこがいい!」
私の新たな婚約者は、たしかに妾腹で家での立場は低かったらしい。それが理由で貴族社会にていじめも受けていた。でも。
「この人、魔法の研究で賞を取ったの。知らないの?」
「は?」
「その国への貢献度から、侯爵の位を授けられたわ。領地付きでね」
「え」
「この人はもう、貴方より上の立場にいるのよ」
私がそう言えば、彼はとうとうその場に崩れ落ちた。
「ざまぁみなさい。因果は巡るのよ」
こうして私は、過去ときっぱり決別した。
「いやぁ、まさかあんなところで君の元婚約者殿と出会うなんて」
「貴方の現状を知ったら、驚いてたわね」
「君もなかなか意地悪なことをする。現実を受け入れたら彼、間違いなく壊れるだろうに」
「実際その場に崩れ落ちたしね。でも…」
ダーリンに抱きつく。
「そこも気に入ってくれているのでしょう?」
「うん、意地悪な君も好きだよ」
私は今、義妹と元婚約者の火遊びのお陰でとっても幸せです。
なぜこの男は、婚約を解消した今になって愛を囁くようになったのだろうか。
私はとある伯爵家の長女。うちは爵位こそまあまあとはいえ、鉱山を多数所有してお金にはかなり余裕がある。
両親は仲が良く、娘が欲しかったのだと二人して私を溺愛する。
兄達は優しく家族思いで、両親に親孝行をしつつ私を甘やかす。
そんな私の唯一の悩みは、義理の妹だ。
義妹は、母の姉の子供。両親を不慮の事故で亡くし、行く先もないからと母が引き取ってきた。
「お姉様ずるーい!」
そんな義妹は、いつもいつも私のことをずるいずるいと妬んでくる。
ネックレスが可愛いだとか、ブレスレットが素敵とか、ブローチが上品とか。
そう言ってずるいずるいと喚いて、最終的に強奪していく。
だが、両親を亡くした可哀想な子であることに間違いはないので強くも言えない。
…が、ある日とんでもないものを強奪された。
「お姉様ずるーい!あんな素敵な婚約者がいるなんて!」
うわぁ。
最初の感想はそれ。
とはいえ、政略結婚の相手を強奪されることはないと思っていたのだが。
「すまない、あの小娘がお前の婚約者を寝取った」
「え」
「お腹に子供が出来たらしい」
…うわぁ、すごーい!
そこまでするかとドン引きした。
「その…どうする?私としては、お前を裏切った婚約者とは婚約解消させたいんだが」
「ぜひお願いします」
「でもって、妻には悪いがあの小娘はいい加減うちから追い出す」
「ぜひお願いします!!!」
ということで、トントン拍子で話は進み私とバカ男との婚約は解消。元義妹は義理の姉妹ですらなくなった。
バカ男はせっかくの縁談をダメにしたとして実家から勘当されたらしい。あちらの家は優秀な弟くんが継ぐことになったとか。慰謝料も相場相当にいただいた。
元義妹はうちの戸籍から離れ、うちから追い出された。引取先もないので、住み込みで働ける場所をなんとか探したらしい。ここからは噂で聞いただけだけど…結果、待遇の悪い娼館に行き着いてしまったとかなんとか。ちなみに妊娠は虚言で、あのバカ男を欲しくてでっちあげたらしい。
…一夜を共に過ごしたのは、本当らしいから始末に負えない。
で。
「本当に君を愛してる。嘘じゃない。あの子とはちょっとした火遊びだったんだよ」
ちょっとしたお出かけの行き先で、偶然にもバカ男に遭遇してしまった。
そしてなぜか今更言い寄られている。
「…そうですか」
「そう!そうなんだ!」
「で?」
「え?」
「何を望んでいるのか知りませんけど、よりを戻すのは絶対嫌ですからね?」
なぜかショックを受けた様子のバカ男。いや、当たり前だろ。
「なんで私の気持ちとか考えられないんですか?」
「え、だ、だからよりを戻してやり直そうって…」
「そんなこと私が望むと思いますか?」
「え…」
「え…じゃなくて!」
この際だから全部言ってやろう。
「まさか私が貴方みたいな顔だけの男をまだ好きだと思ってます?バカじゃないの?」
「え」
「貴方は顔こそいいけど、私の気持ちも考えられないし、浮気をするし、その相手は私の義妹だし。そんな男願い下げですけど」
そこまで言われて悔しそうに顔を歪める彼に、少し溜飲が下がる。
「おまけに口は臭いし、人の話は聞かないし、髪の毛は薄いし」
「なっ…!?」
「自分より下の立場の人間には横柄な態度だし、ありがとうの一言も言えないし、優しさのかけらもないし」
「そ、そんなことは…!」
「人望もないし、それどころか嫌われ者だし、貴方なんかと婚約していた時同情されてたし」
ショックを受けた表情にさらに溜飲が下がる。
「婚約解消を周りの人が知ったら、みんな喜んでくれたし。貴方どれだけ嫌われてるのよ」
もう聞きたくないのか、とうとう手で耳栓する彼に…勝った!!!と思った。
「聞こえてますかー?よりを戻すのが無理な理由、最大の理由はその人よ」
後ろの気配に、彼は振り向く。耳栓も外した。
その視線の先には、彼がいつも見下して蔑んでいた男。
「え、あ、え?」
「お久しぶりです。私の婚約者に何か用ですか?」
「え、婚約者って」
「私達婚約しているの」
彼の後ろから、私の新たな婚約者がこちらに来た。彼と熱い抱擁を交わす。
「ダーリン、待ってたわ」
「ハニー、お待たせ。行こうか」
手を繋いでデートに向かう私達に、元婚約者は喚いた。
「そ、そんな底辺の男のどこがいい!」
私の新たな婚約者は、たしかに妾腹で家での立場は低かったらしい。それが理由で貴族社会にていじめも受けていた。でも。
「この人、魔法の研究で賞を取ったの。知らないの?」
「は?」
「その国への貢献度から、侯爵の位を授けられたわ。領地付きでね」
「え」
「この人はもう、貴方より上の立場にいるのよ」
私がそう言えば、彼はとうとうその場に崩れ落ちた。
「ざまぁみなさい。因果は巡るのよ」
こうして私は、過去ときっぱり決別した。
「いやぁ、まさかあんなところで君の元婚約者殿と出会うなんて」
「貴方の現状を知ったら、驚いてたわね」
「君もなかなか意地悪なことをする。現実を受け入れたら彼、間違いなく壊れるだろうに」
「実際その場に崩れ落ちたしね。でも…」
ダーリンに抱きつく。
「そこも気に入ってくれているのでしょう?」
「うん、意地悪な君も好きだよ」
私は今、義妹と元婚約者の火遊びのお陰でとっても幸せです。
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