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妹が急に変わった
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妹は、可憐で無邪気な可愛い子だった。
自己主張もしっかりできる子で、そのあまりの賢さ可愛らしさに俺は妹を甘やかしまくった。
それは両親も同じこと。
結局それは今でも続いているのだが…ある日突然そんな妹が変わった。
「わたくし、これからお小遣いは婚約者ではなく孤児院や養老院への寄付に使いますわ」
妹は元々可愛い子だったが、輪をかけて可愛くなった。
慈善活動を突然始めた上に、家族にも甘えるだけでなく親孝行や兄孝行まで始める。さらには使用人たちまで大切にする始末。俺は優しくて慈愛深いいい子になった妹に、元々溺愛していたはずなのにさらに胸を撃ち抜かれた。
より溺愛するようになる俺や両親に、はにかんだ笑顔を見せる妹。
可愛い、可愛すぎる。
そのうち使用人たちも妹の可愛さに気付き、元々お嬢様として大切にしていたのをいっとう大事にし始めた。
「お嬢様はお優しい」
「お嬢様はなんて慈愛深い方なんだ…」
慈善活動の成果か、領民たちも妹を褒め称えるようになる。
妹はそんな領民たちにも笑顔を向ける。
妹は領民たちのアイドルになった。
「最近、妹君の成長ぶりが目覚ましいな」
「おう親友、わかるか」
「見た目は天使なのに中身は悪魔だと噂だったのが、見た目通りの天使に進化したと噂だからな」
「喧嘩売ってんのか!妹は昔から天使だ!」
「そう思ってんのは両親と兄くらいのもんだ。だが今の妹君は本当に本当に天使のような方だ。大事にするのもわかる」
貴族界隈でも妹は人気が爆発した。
元々天使な妹がさらに魅力を増した結果である。
ということで、妹は自力でものすごく評判を上げてめちゃくちゃ愛されガールとなったのだが。
「…あの男、許さん」
肝心の婚約者は、妹を見ない。
妹が変わったのは、おそらく婚約者のためだろう。
妹はずっと一途に彼を愛していたから。
押してダメなら引いてみろ作戦と、自分磨きの一環なのだろう。
実際妹の魅力は元々高いのがさらに増し増しだ。
「だというのに、義妹とやらばかり可愛がりやがって…」
もう我慢ならんと、俺は奴のところに乗り込んだ。
が、奴はどうも頑なだった。
「義兄上…僕はその、まだ彼女の元へは行けません」
「さすがに病弱だという義妹殿には文句は言えないが、貴様は優先順位を考えろ」
「ですが、今は妹を優先したいのです」
「義妹だろう」
「…それでも、どうか」
頭を下げる奴に言う。
「妹は、貴様も義妹殿も悪く言ってはいない。それどころか怒りを燃やした俺を諌めるくらいだ」
「…!」
「妹は変わった。自分の内面すら磨いている。わかるか?…全部貴様のためだ。健気すぎるだろう」
「…すみません」
「今はまだ許してやるが、いつまでもそのままならば覚悟しておけ。妹を傷つける奴は俺の敵だ」
その後も何度か叱りつけたが、奴は変わらなかった。
だが、イベントごとや誕生日などはこまめに祝いプレゼントと手紙を寄越す。
全然接触しようとしなくなった二人なのに、不思議と関係性が前より良くなったようにも見えるのは気のせいか…?
そしてその日は来た。
突然のことで動揺したが…どうも奴の義妹が病気で亡くなったらしい。
そんなに状態が悪かったのなら、今までの態度の気持ちはわからんでもない。
その後会う機会があったので言い過ぎたと謝ったが、快く許してくれたのでお互いに仲直りする形となった。
妹と奴との関係は、目に見えて良くなった。
「…残念なことだったが、必要なことだったな」
義妹殿の件は本当に残念に思うが、妹はそれがきっかけとなり完全に奴と修復したのでなんとも言えない。
必要なことだったとは思うが、本当に悲しいことだ。
せめてその魂が天に登り、来世があるならばそちらでも幸せになってくれることを期待する。
「お兄様っ」
「む、どうした?」
「お墓まいりに来たらお兄様が見えましたので…もしかしてあの子に会いに?」
「ああ。幸せを祈ってきた」
「ふふ、ありがとうございます」
本当に妹は優しい子になった。
どうかこの優しい妹がもっと幸せになりますように。
自己主張もしっかりできる子で、そのあまりの賢さ可愛らしさに俺は妹を甘やかしまくった。
それは両親も同じこと。
結局それは今でも続いているのだが…ある日突然そんな妹が変わった。
「わたくし、これからお小遣いは婚約者ではなく孤児院や養老院への寄付に使いますわ」
妹は元々可愛い子だったが、輪をかけて可愛くなった。
慈善活動を突然始めた上に、家族にも甘えるだけでなく親孝行や兄孝行まで始める。さらには使用人たちまで大切にする始末。俺は優しくて慈愛深いいい子になった妹に、元々溺愛していたはずなのにさらに胸を撃ち抜かれた。
より溺愛するようになる俺や両親に、はにかんだ笑顔を見せる妹。
可愛い、可愛すぎる。
そのうち使用人たちも妹の可愛さに気付き、元々お嬢様として大切にしていたのをいっとう大事にし始めた。
「お嬢様はお優しい」
「お嬢様はなんて慈愛深い方なんだ…」
慈善活動の成果か、領民たちも妹を褒め称えるようになる。
妹はそんな領民たちにも笑顔を向ける。
妹は領民たちのアイドルになった。
「最近、妹君の成長ぶりが目覚ましいな」
「おう親友、わかるか」
「見た目は天使なのに中身は悪魔だと噂だったのが、見た目通りの天使に進化したと噂だからな」
「喧嘩売ってんのか!妹は昔から天使だ!」
「そう思ってんのは両親と兄くらいのもんだ。だが今の妹君は本当に本当に天使のような方だ。大事にするのもわかる」
貴族界隈でも妹は人気が爆発した。
元々天使な妹がさらに魅力を増した結果である。
ということで、妹は自力でものすごく評判を上げてめちゃくちゃ愛されガールとなったのだが。
「…あの男、許さん」
肝心の婚約者は、妹を見ない。
妹が変わったのは、おそらく婚約者のためだろう。
妹はずっと一途に彼を愛していたから。
押してダメなら引いてみろ作戦と、自分磨きの一環なのだろう。
実際妹の魅力は元々高いのがさらに増し増しだ。
「だというのに、義妹とやらばかり可愛がりやがって…」
もう我慢ならんと、俺は奴のところに乗り込んだ。
が、奴はどうも頑なだった。
「義兄上…僕はその、まだ彼女の元へは行けません」
「さすがに病弱だという義妹殿には文句は言えないが、貴様は優先順位を考えろ」
「ですが、今は妹を優先したいのです」
「義妹だろう」
「…それでも、どうか」
頭を下げる奴に言う。
「妹は、貴様も義妹殿も悪く言ってはいない。それどころか怒りを燃やした俺を諌めるくらいだ」
「…!」
「妹は変わった。自分の内面すら磨いている。わかるか?…全部貴様のためだ。健気すぎるだろう」
「…すみません」
「今はまだ許してやるが、いつまでもそのままならば覚悟しておけ。妹を傷つける奴は俺の敵だ」
その後も何度か叱りつけたが、奴は変わらなかった。
だが、イベントごとや誕生日などはこまめに祝いプレゼントと手紙を寄越す。
全然接触しようとしなくなった二人なのに、不思議と関係性が前より良くなったようにも見えるのは気のせいか…?
そしてその日は来た。
突然のことで動揺したが…どうも奴の義妹が病気で亡くなったらしい。
そんなに状態が悪かったのなら、今までの態度の気持ちはわからんでもない。
その後会う機会があったので言い過ぎたと謝ったが、快く許してくれたのでお互いに仲直りする形となった。
妹と奴との関係は、目に見えて良くなった。
「…残念なことだったが、必要なことだったな」
義妹殿の件は本当に残念に思うが、妹はそれがきっかけとなり完全に奴と修復したのでなんとも言えない。
必要なことだったとは思うが、本当に悲しいことだ。
せめてその魂が天に登り、来世があるならばそちらでも幸せになってくれることを期待する。
「お兄様っ」
「む、どうした?」
「お墓まいりに来たらお兄様が見えましたので…もしかしてあの子に会いに?」
「ああ。幸せを祈ってきた」
「ふふ、ありがとうございます」
本当に妹は優しい子になった。
どうかこの優しい妹がもっと幸せになりますように。
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