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貴族としてのはずれギフトは農家としては当たりギフトです
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私のギフトで領民を豊かにします!
私はエルンテ・ラントヴィルトシャフト。ゲシェンク国の男爵令嬢だ。うちの領地は小さな田舎にあり、村がたった一つ、あとは村を囲む森だけが領地だ。農業くらいしか目立った産業の無いため貧乏男爵家だが、優しい両親と頼りになる兄に囲まれて、領民達とも仲が良く幸せに暮らしている。
そして私が五歳になる今日、中央教会へギフトを授かりに来た。このゲシェンク国では貴族の子供は五歳になる時中央教会で神からギフトを授かるのだ。ギフトとは、才能、技術、魔法など様々な贈り物のことだ。私は両親と兄、領民達にとってよいギフトを授かることが出来れば嬉しいなと思っている。
「エルンテ様、前へ」
「はい」
「では始めます」
私の頭上から光が降り注ぐ。私のギフトは…。
「…豊穣。豊穣のギフトが贈られましたよ」
「…!」
豊穣!やった!当たりのギフトだ!
いや、貴族令嬢としてははずれギフトなのだ。普通の貴族令嬢にとって豊穣なんて関係ないから。でも、うちは田舎の農家村。かなり使える。
早速領地に帰ってきて、村のみんなの畑に豊穣のギフトを使った。するとぐんぐんと作物達が育ち、あっという間に収穫出来るまでに育った。一応毒味に食べてみたが、問題ないどころかかなり品質もいい。村のみんなと収穫して、馬車を走らせて片道三時間はかかる隣町に売りに行った。
「この作物はどれも品質が最上級ですね。どの作物も収穫には季節外れだと言うのにこんなに品質が良いものを提供してくださるのなら、こちらも少しばかり奮発しましょう。これでどうでしょう」
商人さんが金貨数枚を渡してくれる。
「充分です!ありがとうございます!」
そうして私達は帰る。村のみんなには今回の収入を税金分だけ差し引いて、銅貨にして平等に分け前を配った。そしてまた次の日豊穣のギフトで作物を育てる。そして収穫し、今度は片道五時間かかる昨日行った町とは反対側の隣町に作物を売りに行く。
「おお。これはすごい。よくここまで育て上げましたね。こんなに品質の良いものを育てるのは大変でしたでしょう。季節外れの収穫も工夫の一環ですかね?素晴らしい。この価格で買い取らせていただきますね」
昨日の隣町で稼いだ金額とほぼ同額。いい取引が出来たとホクホクで村に帰り、昨日と同じく税金分だけ徴収。あとは銅貨で村のみんなに平等に配った。昨日と今日の収入だけで例年の村の収入の何倍にもなる。当然、徴収した税金のおかげで男爵家もホクホクだ。普通の領地を経営する男爵家と同じくらい稼いだのではないだろうか?
「エルンテ様!」
「ギルベルト!」
「エルンテ様が稼いでくれたおかげで、今年は暮らし向きが良くなりそうだぜ。ありがとな!」
この少年はギルベルト。この村の子供で、私より二つ年上。幼馴染だ。
「ふふ、ギルベルトに褒められると照れちゃうな」
普段はあまり褒め言葉を口にしないギルベルトから両手放しで褒められて嬉しい。
「そんなうちのお姫様にご褒美だぜ」
「あら、なにかしら?」
「姫君の花の冠と花束を」
畏まってみせるギルベルトから、花冠を頭に乗せられて花束をプレゼントされる。
「え、どうしたの、これ」
「森に入って取ってきた。ちゃんと虫除け加工してあるから安心しろよな」
「…嬉しい、ありがとう!」
ギルベルトに抱きつく。ギルベルトは私をしっかりと抱きとめてくれる。
「うちのお姫様は本当に素直だな。そんな素直なお姫様にはもう一つプレゼントがあるぜ」
「なになに!?」
「花の指輪だ。ほら、左手出せよ」
ギルベルトから離れて左手を出す。ギルベルトは私の薬指に花の指輪をはめてくれた。
「いつか本物を買ってやるから、今はそれで我慢な」
「うん!」
幼い小さな約束で、私は俄然やる気が湧いてきた。次の日も同じように豊穣のギフトを使って作物を収穫し、今度は片道二時間の隣町に作物を売る。昨日とほぼ同額を稼いだ。帰って、また税金分だけ徴収して村のみんなに平等に配った。うちの村の隣町は全部で三つ、もう他の町には売りにいけない。もし豊穣のギフトのことがバレて買い取り価格を下げられては困るのだ。ということで隣町に売りに行くのはまた半年後。それまでどこに売りつけようか…あ。隣国は確か色々あって飢饉に見舞われているんだっけ。我がゲシェンク国の隣国との関係は概ね良好。といっても飢饉を助けてあげるほどではないが、戦争するほどでも無いし、交易は自由だ。うん、稼げそう。
ということで次の日、またじゃんじゃんと豊穣のギフトを使って作物を育て収穫し、片道六時間掛けて隣国に売りつけに行った。物価が高くなっている隣国では懐が暖かくなるほど儲かった。もちろん税金分だけ徴収して村のみんなに銅貨で配る。そして、次の日からはわざわざ隣国に行かなくても隣国の商人がうちの村に買い取りにきてくれることになった。助かった。
ー…
そんなこんなで十三年が過ぎて、私は十八歳だ。あれからうちの男爵家は隣国の商人との交易で大金持ちになり、隣国も私の作った大量の作物のおかげで飢饉からやっと抜け出せて、村のみんなもかなりの貯金が出来てうはうはである。三つの隣町には今も定期的に作物を売りつけている。隣国が飢饉から抜け出せた後も、隣国の商人に定期的に作物を買って貰っている。懐が暖かい。
もちろん、村人達はただ私のもたらす豊穣を甘受しているだけではない。農業は定期的に種を植えて、あとは定期的に収穫するだけで良くなったので、余った時間で森の魔獣を狩るようになった。畑を荒らされないために、そして自分達の身の安全のために、そして魔獣からとれる魔石と肉と皮を得るために。ギルベルトはそんな狩りの部隊のリーダー格となっている。隣国の商人が作物を買いにくる時に、一緒に魔石と加工した肉と皮を売っている。こちらも結構な収入になるようで、納めてもらう税金で懐がさらに暖かい。
「エルンテ様、ここにいたのか」
「ギルベルト」
私は今村の畑にいる。豊穣のギフトを使っているところだ。
「エルンテ様。覚えてるか?」
「え?なにを?」
「幼い小さな約束」
…覚えているに決まってる。
「うん、覚えてるよ」
「約束を果たしにきたぜ」
ギルベルトが恭しく跪く。その手には小さな箱。ギルベルトが箱を開ける。中には小さな可愛らしい指輪が入っている。
「エルンテ様。俺と結婚してください」
「もちろん喜んで」
私の返事を聞くと、嬉しそうに微笑んで左手の薬指に指輪をはめてくれたギルベルト。豊穣のギフトのおかげで、今日も私は幸せです。
私はエルンテ・ラントヴィルトシャフト。ゲシェンク国の男爵令嬢だ。うちの領地は小さな田舎にあり、村がたった一つ、あとは村を囲む森だけが領地だ。農業くらいしか目立った産業の無いため貧乏男爵家だが、優しい両親と頼りになる兄に囲まれて、領民達とも仲が良く幸せに暮らしている。
そして私が五歳になる今日、中央教会へギフトを授かりに来た。このゲシェンク国では貴族の子供は五歳になる時中央教会で神からギフトを授かるのだ。ギフトとは、才能、技術、魔法など様々な贈り物のことだ。私は両親と兄、領民達にとってよいギフトを授かることが出来れば嬉しいなと思っている。
「エルンテ様、前へ」
「はい」
「では始めます」
私の頭上から光が降り注ぐ。私のギフトは…。
「…豊穣。豊穣のギフトが贈られましたよ」
「…!」
豊穣!やった!当たりのギフトだ!
いや、貴族令嬢としてははずれギフトなのだ。普通の貴族令嬢にとって豊穣なんて関係ないから。でも、うちは田舎の農家村。かなり使える。
早速領地に帰ってきて、村のみんなの畑に豊穣のギフトを使った。するとぐんぐんと作物達が育ち、あっという間に収穫出来るまでに育った。一応毒味に食べてみたが、問題ないどころかかなり品質もいい。村のみんなと収穫して、馬車を走らせて片道三時間はかかる隣町に売りに行った。
「この作物はどれも品質が最上級ですね。どの作物も収穫には季節外れだと言うのにこんなに品質が良いものを提供してくださるのなら、こちらも少しばかり奮発しましょう。これでどうでしょう」
商人さんが金貨数枚を渡してくれる。
「充分です!ありがとうございます!」
そうして私達は帰る。村のみんなには今回の収入を税金分だけ差し引いて、銅貨にして平等に分け前を配った。そしてまた次の日豊穣のギフトで作物を育てる。そして収穫し、今度は片道五時間かかる昨日行った町とは反対側の隣町に作物を売りに行く。
「おお。これはすごい。よくここまで育て上げましたね。こんなに品質の良いものを育てるのは大変でしたでしょう。季節外れの収穫も工夫の一環ですかね?素晴らしい。この価格で買い取らせていただきますね」
昨日の隣町で稼いだ金額とほぼ同額。いい取引が出来たとホクホクで村に帰り、昨日と同じく税金分だけ徴収。あとは銅貨で村のみんなに平等に配った。昨日と今日の収入だけで例年の村の収入の何倍にもなる。当然、徴収した税金のおかげで男爵家もホクホクだ。普通の領地を経営する男爵家と同じくらい稼いだのではないだろうか?
「エルンテ様!」
「ギルベルト!」
「エルンテ様が稼いでくれたおかげで、今年は暮らし向きが良くなりそうだぜ。ありがとな!」
この少年はギルベルト。この村の子供で、私より二つ年上。幼馴染だ。
「ふふ、ギルベルトに褒められると照れちゃうな」
普段はあまり褒め言葉を口にしないギルベルトから両手放しで褒められて嬉しい。
「そんなうちのお姫様にご褒美だぜ」
「あら、なにかしら?」
「姫君の花の冠と花束を」
畏まってみせるギルベルトから、花冠を頭に乗せられて花束をプレゼントされる。
「え、どうしたの、これ」
「森に入って取ってきた。ちゃんと虫除け加工してあるから安心しろよな」
「…嬉しい、ありがとう!」
ギルベルトに抱きつく。ギルベルトは私をしっかりと抱きとめてくれる。
「うちのお姫様は本当に素直だな。そんな素直なお姫様にはもう一つプレゼントがあるぜ」
「なになに!?」
「花の指輪だ。ほら、左手出せよ」
ギルベルトから離れて左手を出す。ギルベルトは私の薬指に花の指輪をはめてくれた。
「いつか本物を買ってやるから、今はそれで我慢な」
「うん!」
幼い小さな約束で、私は俄然やる気が湧いてきた。次の日も同じように豊穣のギフトを使って作物を収穫し、今度は片道二時間の隣町に作物を売る。昨日とほぼ同額を稼いだ。帰って、また税金分だけ徴収して村のみんなに平等に配った。うちの村の隣町は全部で三つ、もう他の町には売りにいけない。もし豊穣のギフトのことがバレて買い取り価格を下げられては困るのだ。ということで隣町に売りに行くのはまた半年後。それまでどこに売りつけようか…あ。隣国は確か色々あって飢饉に見舞われているんだっけ。我がゲシェンク国の隣国との関係は概ね良好。といっても飢饉を助けてあげるほどではないが、戦争するほどでも無いし、交易は自由だ。うん、稼げそう。
ということで次の日、またじゃんじゃんと豊穣のギフトを使って作物を育て収穫し、片道六時間掛けて隣国に売りつけに行った。物価が高くなっている隣国では懐が暖かくなるほど儲かった。もちろん税金分だけ徴収して村のみんなに銅貨で配る。そして、次の日からはわざわざ隣国に行かなくても隣国の商人がうちの村に買い取りにきてくれることになった。助かった。
ー…
そんなこんなで十三年が過ぎて、私は十八歳だ。あれからうちの男爵家は隣国の商人との交易で大金持ちになり、隣国も私の作った大量の作物のおかげで飢饉からやっと抜け出せて、村のみんなもかなりの貯金が出来てうはうはである。三つの隣町には今も定期的に作物を売りつけている。隣国が飢饉から抜け出せた後も、隣国の商人に定期的に作物を買って貰っている。懐が暖かい。
もちろん、村人達はただ私のもたらす豊穣を甘受しているだけではない。農業は定期的に種を植えて、あとは定期的に収穫するだけで良くなったので、余った時間で森の魔獣を狩るようになった。畑を荒らされないために、そして自分達の身の安全のために、そして魔獣からとれる魔石と肉と皮を得るために。ギルベルトはそんな狩りの部隊のリーダー格となっている。隣国の商人が作物を買いにくる時に、一緒に魔石と加工した肉と皮を売っている。こちらも結構な収入になるようで、納めてもらう税金で懐がさらに暖かい。
「エルンテ様、ここにいたのか」
「ギルベルト」
私は今村の畑にいる。豊穣のギフトを使っているところだ。
「エルンテ様。覚えてるか?」
「え?なにを?」
「幼い小さな約束」
…覚えているに決まってる。
「うん、覚えてるよ」
「約束を果たしにきたぜ」
ギルベルトが恭しく跪く。その手には小さな箱。ギルベルトが箱を開ける。中には小さな可愛らしい指輪が入っている。
「エルンテ様。俺と結婚してください」
「もちろん喜んで」
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