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全員結局落ち着くところに落ち着いたお話
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「リリアンヌ!貴様今日という今日は許さんぞ!」
またかと思い辟易しつつ婚約者に向き直る。彼は私の異母妹を背中に隠してかっこつけている。異母妹は私を見てニヤニヤ笑う。
「今度はなんですか」
「またメイを虐めただろう!今日は水を頭からかけたらしいな!」
そんなことは私はしていない。
とばっちり、濡れ衣、冤罪もいいところだ。
腹違いの妹は、母を亡くしうちに引き取られてからというもの元庶民だったためか私を悪役に仕立てて可哀想なお姫様ムーブをする。
同じ父親を持つのに、片やお嬢様育ち、片や庶民育ちなのは可哀想に思う。
教養もマナーもばっちり身につけて、人前ではちゃんとお嬢様できるようになったその努力も買っている。
だからと言って、人の婚約者にないことないこと吹き込んで父の愛人だった母親譲りの美貌で誘惑するのはどうかと思う。
「私はそのようなことは…」
「うるさい!メイを虐める悪役令嬢め!」
出た。
彼は最近、この言葉にハマっている。
なんでも、異世界から召喚された聖女様のもたらした流行りの一つらしい。
聖女様は世界を魔王から救っただけではなく、斬新な発想の食べ物や日用品などを生み出して世界の文明を大きく発展させた。
だが悪役令嬢ブームはやめてほしい。断罪されるべき理由もないのに巻き込まれるのは困る。
「私は悪役令嬢では…」
「おい」
あ、と思った。
辟易しすぎて後ろにいる彼を忘れていた。
「え、だ、第五王子殿下っ?」
私の後ろにいるのは我が国の第五王子にして私を溺愛する従兄。
婚約者だって異母妹だって、お従兄様の存在は認識していたはずなのに私を悪役に仕立てあげようとするなんて毎度のことながらバカだなぁと思う。
それも、今日なんてお従兄様が遊びに来てるのにこれだ。ごっこ遊びもハマりすぎると身を滅ぼすらしい。お従兄様に見つからないところでやる分には辟易するが放置してやったというのに。
「リリアンヌが悪役令嬢だと?彼女を悪役だと宣うのなら、彼女に何をされたか言ってみろ!」
「そ、それは…」
「み、水を頭からかけられて…」
「リリアンヌがそんなことするわけないだろう!バカか貴様っ!」
「お従兄様、とにかく落ち着いて」
お従兄様の背中を優しくさする。
落ち着きを取り戻したお従兄様は私に向き直り聞いた。
「いつもこんな目に遭ってるの?」
「…はい」
「許せないな」
お従兄様は二人を睨みつける。
「叔父上にこのことは報告して厳重に抗議する」
「そこまでしなくとも」
「叔父上がこんなあんぽんたんを放置するのが悪い」
まあそれはたしかに。
「というか、俺は可愛いリリアンヌとティータイムを楽しみたいからさっさとこの部屋から出て行け」
「は、はい…行こう、メイ」
「し、失礼します…」
そそくさと逃げる二人だが、果たしてどうなることやら。
「…私と彼の婚約をなかったことにして、お従兄様を私の婿に?」
「ああ、そういう話になった」
まあ、やりかねないとは思っていたが本気でやるとは。
「お従兄様は随分とわがままを言って婚約者を作っていらっしゃらなかったから良いとして、私も嫌ではありませんし良いとして…向こうは大丈夫なんです?」
「向こうはお前を悪役令嬢呼ばわりしていたことを知って青ざめて謝罪してきて、婚約の白紙化にも快く応じてくれた。当の本人はお前の婿になれないしメイと婚約できるわけでもないと知ると膝から崩れ落ちて、出家する準備を始めたらしい」
「あらぁ…」
まあ順当な結果だ。
「メイはこれからどうしますの?」
「うちに引き取ってから、優しく無邪気だったあの子は変わってしまった。庶民の生活の方が合っていたのかもしれない。だから貴族ではなく、金持ちで若く美しく誠実だと有名な商人のところへ嫁に出すことに決めた」
「まあ、その条件なら悪くはないと思いますが」
お姫様ムーブ大好きなあの子が、また貴族ではなくなると知ったら発狂しそうなのは気のせいだろうか。
「お前には本気で迷惑ばかりかけてしまったな」
「いえ、お父様も色々ありましたし仕方ありませんわ」
政略結婚で母と結ばれた父はしかし立場ゆえの苦労も多く、ストレスの捌け口として愛人を作るくらいは仕方がないと思ってしまう。
母はプライドが高い人だったから、扱いに困っていた父を知っているのでなおさら。
母を亡くし、その後立て続けに愛人である異母妹の母も亡くし、異母妹を引き取って…父はそれなりに頑張った方だと思うのだ。
母には最後まで愛人の存在は隠し切って良い夢を見せてあげていたし、私も異母妹が引き取られるまでその存在も知らなくて済んだし。
もちろん倫理や道徳的なお話をするなら父はよろしくない人かもしれないが…苦労は知っているので私くらいは味方でいてあげたい。
「では、お従兄様はこれからこの公爵家を継ぐためのお勉強で忙しくなりますわね」
「その分毎日少しでもお前に会えるとウキウキしているがな」
「思うのですけれど、なんで最初からお従兄様を私の婚約者になさらなかったのです?」
その方が問題なかったと思うのは結果論だろうか。
「お前が生まれた時は、まさか第五王子殿下がお前にこんなに惚れ込むとは思っていなかったし…血が濃くなりすぎると思ったらな」
「まあそうですけれど、血が問題なら何故今お従兄様との婚約を認めたのです?」
「これだけお前を愛してくれる第五王子殿下なら、お前を幸せにしてくれるだろう。それと今から婿を探すのも骨が折れる。それに、血が濃くなりすぎると言っても一代ならまあ…いけるかなと。兄妹ではなく従兄だし」
「まあ、お父様がそう判断されるのなら良いですけれど」
ともかくそういうわけで、私はお従兄様の婚約者となった。
「リリアンヌ、おいで」
「はい、お従兄様」
婚約してからも、お従兄様と私は特になにも変わらない。
前からお従兄様は私を溺愛していたから。
「リリアンヌは可愛いな」
「お従兄様の方がお美しいです」
「そんなことはない。リリアンヌほどの美人は他にいない」
ちゅっと頬に口づけしてくるお従兄様。
先程特になにも変わらないと言ったが、婚約してからこういうスキンシップは追加された。
「さあ、今日は二人でデートの日だから楽しもう」
「はい、お従兄様」
前の婚約者とは、異母妹が来る前からお互いにほぼ手紙のやり取りくらいしかなくデートや贈り物も少なかった。
だからお従兄様と婚約してからは新鮮で楽しいことばかり。
「愛している、リリアンヌ。こんなことを言ってはなんだが、君の婚約者が君を奪っても罪悪感がないほどのクズでよかった」
「お従兄様、お言葉が過ぎます。でも、私もお従兄様にこんなに幸せにしてもらえて嬉しいです」
微笑めばぎゅっと抱きしめられる。
この幸せが続けばいいなと心から思った。
またかと思い辟易しつつ婚約者に向き直る。彼は私の異母妹を背中に隠してかっこつけている。異母妹は私を見てニヤニヤ笑う。
「今度はなんですか」
「またメイを虐めただろう!今日は水を頭からかけたらしいな!」
そんなことは私はしていない。
とばっちり、濡れ衣、冤罪もいいところだ。
腹違いの妹は、母を亡くしうちに引き取られてからというもの元庶民だったためか私を悪役に仕立てて可哀想なお姫様ムーブをする。
同じ父親を持つのに、片やお嬢様育ち、片や庶民育ちなのは可哀想に思う。
教養もマナーもばっちり身につけて、人前ではちゃんとお嬢様できるようになったその努力も買っている。
だからと言って、人の婚約者にないことないこと吹き込んで父の愛人だった母親譲りの美貌で誘惑するのはどうかと思う。
「私はそのようなことは…」
「うるさい!メイを虐める悪役令嬢め!」
出た。
彼は最近、この言葉にハマっている。
なんでも、異世界から召喚された聖女様のもたらした流行りの一つらしい。
聖女様は世界を魔王から救っただけではなく、斬新な発想の食べ物や日用品などを生み出して世界の文明を大きく発展させた。
だが悪役令嬢ブームはやめてほしい。断罪されるべき理由もないのに巻き込まれるのは困る。
「私は悪役令嬢では…」
「おい」
あ、と思った。
辟易しすぎて後ろにいる彼を忘れていた。
「え、だ、第五王子殿下っ?」
私の後ろにいるのは我が国の第五王子にして私を溺愛する従兄。
婚約者だって異母妹だって、お従兄様の存在は認識していたはずなのに私を悪役に仕立てあげようとするなんて毎度のことながらバカだなぁと思う。
それも、今日なんてお従兄様が遊びに来てるのにこれだ。ごっこ遊びもハマりすぎると身を滅ぼすらしい。お従兄様に見つからないところでやる分には辟易するが放置してやったというのに。
「リリアンヌが悪役令嬢だと?彼女を悪役だと宣うのなら、彼女に何をされたか言ってみろ!」
「そ、それは…」
「み、水を頭からかけられて…」
「リリアンヌがそんなことするわけないだろう!バカか貴様っ!」
「お従兄様、とにかく落ち着いて」
お従兄様の背中を優しくさする。
落ち着きを取り戻したお従兄様は私に向き直り聞いた。
「いつもこんな目に遭ってるの?」
「…はい」
「許せないな」
お従兄様は二人を睨みつける。
「叔父上にこのことは報告して厳重に抗議する」
「そこまでしなくとも」
「叔父上がこんなあんぽんたんを放置するのが悪い」
まあそれはたしかに。
「というか、俺は可愛いリリアンヌとティータイムを楽しみたいからさっさとこの部屋から出て行け」
「は、はい…行こう、メイ」
「し、失礼します…」
そそくさと逃げる二人だが、果たしてどうなることやら。
「…私と彼の婚約をなかったことにして、お従兄様を私の婿に?」
「ああ、そういう話になった」
まあ、やりかねないとは思っていたが本気でやるとは。
「お従兄様は随分とわがままを言って婚約者を作っていらっしゃらなかったから良いとして、私も嫌ではありませんし良いとして…向こうは大丈夫なんです?」
「向こうはお前を悪役令嬢呼ばわりしていたことを知って青ざめて謝罪してきて、婚約の白紙化にも快く応じてくれた。当の本人はお前の婿になれないしメイと婚約できるわけでもないと知ると膝から崩れ落ちて、出家する準備を始めたらしい」
「あらぁ…」
まあ順当な結果だ。
「メイはこれからどうしますの?」
「うちに引き取ってから、優しく無邪気だったあの子は変わってしまった。庶民の生活の方が合っていたのかもしれない。だから貴族ではなく、金持ちで若く美しく誠実だと有名な商人のところへ嫁に出すことに決めた」
「まあ、その条件なら悪くはないと思いますが」
お姫様ムーブ大好きなあの子が、また貴族ではなくなると知ったら発狂しそうなのは気のせいだろうか。
「お前には本気で迷惑ばかりかけてしまったな」
「いえ、お父様も色々ありましたし仕方ありませんわ」
政略結婚で母と結ばれた父はしかし立場ゆえの苦労も多く、ストレスの捌け口として愛人を作るくらいは仕方がないと思ってしまう。
母はプライドが高い人だったから、扱いに困っていた父を知っているのでなおさら。
母を亡くし、その後立て続けに愛人である異母妹の母も亡くし、異母妹を引き取って…父はそれなりに頑張った方だと思うのだ。
母には最後まで愛人の存在は隠し切って良い夢を見せてあげていたし、私も異母妹が引き取られるまでその存在も知らなくて済んだし。
もちろん倫理や道徳的なお話をするなら父はよろしくない人かもしれないが…苦労は知っているので私くらいは味方でいてあげたい。
「では、お従兄様はこれからこの公爵家を継ぐためのお勉強で忙しくなりますわね」
「その分毎日少しでもお前に会えるとウキウキしているがな」
「思うのですけれど、なんで最初からお従兄様を私の婚約者になさらなかったのです?」
その方が問題なかったと思うのは結果論だろうか。
「お前が生まれた時は、まさか第五王子殿下がお前にこんなに惚れ込むとは思っていなかったし…血が濃くなりすぎると思ったらな」
「まあそうですけれど、血が問題なら何故今お従兄様との婚約を認めたのです?」
「これだけお前を愛してくれる第五王子殿下なら、お前を幸せにしてくれるだろう。それと今から婿を探すのも骨が折れる。それに、血が濃くなりすぎると言っても一代ならまあ…いけるかなと。兄妹ではなく従兄だし」
「まあ、お父様がそう判断されるのなら良いですけれど」
ともかくそういうわけで、私はお従兄様の婚約者となった。
「リリアンヌ、おいで」
「はい、お従兄様」
婚約してからも、お従兄様と私は特になにも変わらない。
前からお従兄様は私を溺愛していたから。
「リリアンヌは可愛いな」
「お従兄様の方がお美しいです」
「そんなことはない。リリアンヌほどの美人は他にいない」
ちゅっと頬に口づけしてくるお従兄様。
先程特になにも変わらないと言ったが、婚約してからこういうスキンシップは追加された。
「さあ、今日は二人でデートの日だから楽しもう」
「はい、お従兄様」
前の婚約者とは、異母妹が来る前からお互いにほぼ手紙のやり取りくらいしかなくデートや贈り物も少なかった。
だからお従兄様と婚約してからは新鮮で楽しいことばかり。
「愛している、リリアンヌ。こんなことを言ってはなんだが、君の婚約者が君を奪っても罪悪感がないほどのクズでよかった」
「お従兄様、お言葉が過ぎます。でも、私もお従兄様にこんなに幸せにしてもらえて嬉しいです」
微笑めばぎゅっと抱きしめられる。
この幸せが続けばいいなと心から思った。
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