至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと

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聖剣の乙女

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ご機嫌よう。マルゲリット・アルカンシエルです。短い旅から戻って今は王城で魔獣や魔王の動きを待っているところです。姉姫さまのお部屋でノルと姉姫さまと魔王征伐のための会議に出ているパパやシュテル様を待ちます。

「…どきどきしますね、メグ姉さま」

「そうだね、でもなにがあっても私がみんなを守ってみせるから大丈夫だよ」

「でも、無理しちゃだめよ」

そこに、パパとシュテル様が急いだ様子で部屋に入ってきます。

「…メグ!緊急事態だ!」

「シュテル様!どうしましたか?」

「モーントの街中に魔獣が現れた!」

!大変です!まさかこんなに早くこの話が出てくるなんて…!

「メグ、モーントは我が同盟国。魔獣討伐を手伝ってくれるか?」

パパが覚悟を決めた目で私に聞いてきます。

「…うん!」

「…っ!私も行くわ!」

「僕もリュディー姉さまの護衛に行きます!」

ということで急遽姉姫さまとノルとシュテル様と護衛騎士数名と一緒にモーントに転移魔法で行きます。

「…っ!」

その光景は見るに耐えないものでした。みんなが逃げ惑う中、魔獣が街を蹂躙します。逃げ惑う人々を殺すもの、必死の覚悟で家族を守ろうとする人を殺すもの、建物に逃げた人を見て建物ごと破壊して生き埋めにするもの、火災も起きています。

「っ!…ノルは姉姫さまをお願い!姉姫さまは光の回復魔法で傷ついた民達をお願いします!シュテル様は妖精魔法で姉姫さまの魔力を援護してください!私は聖剣で魔獣を斬り伏せます!」

「わかりました!」

「光よ!全てのものに救いの手を!」

「妖精よ!彼のものに祝福を!」

「ぜりゃあー!」

魔獣を一体倒すとすぐ消滅しますが、他の魔獣が私に敵意を向けてきます。ええ、それでいいんです。私に集中してください!魔獣達が集まってきて私を取り囲みます。

「メグ!」

「だめっ!逃げてメグ!」

「メグ姉さま!今助けに参ります!」

「シュテル様、姉姫さま、ノル、心配なさらないでください!…成敗!」

闇の魔力で剣をすごく長く大きくして、回し切りをします。魔獣は切り捨てられてすぐに消滅します。上手くいきました!一体だけまだ消滅してくれない魔獣も、深傷を負っているので背後に回って斬り捨てれば消滅します。

「シュテル様、妖精魔法で火災を鎮火出来ますか!?」

「妖精よ!水の力を我が前に示せ!」

ざあっと雨が降るように天から水が降ってきます。しばらくして、火は無事消えました。

「メグ、大丈夫か!?傷は!?」

「大丈夫です。ありがとうございます、シュテル様」

シュテル様は私のボディーチェックをして、本当に怪我がないとわかったら安心したようにため息をついて、私を抱きしめます。

「苦しいです、シュテル様」

「…っ!心臓に悪い!心配させないでくれ!」

「クエー、クエー」

ファンがシュテル様を嘴で突きます。早く放せって言ってるのかな?

「…はは、ファン、だったか。ご主人様をとって悪かったな」

「クエー」

「姉姫さま!どこも痛くないですか?」

「メグ、力はちゃんと入る?」

「しんどい所はないな?」

「クエー」

「うん、もう大丈夫です。ありがとう!」

シュテル様の妖精魔法で生き埋めになった人を助け出し、姉姫さまの光の回復魔法で傷を癒します。

「…助けられなかった人も、せめて綺麗な体で送り出してあげられるようにしたいです」

「ノル…」

「もちろんよ、光よ!全てのものに救いの手を!」

「メグの剣さばきも素晴らしいものだが、リュディー姫の光の魔法も素晴らしいな」

「僕の自慢の姉さま達ですから!」

「あら、可愛いことを言ってくれるのね!」

私が頭を撫でると、ノルは照れた様子ではにかみます。

とりあえず人々が落ち着くまではその場で待とうかなと思っていましたが、しばらくすると生き残った人々が集まってざわざわします。

「乙女だ…」

「聖剣の乙女が助けてくれた!」

「神話通りだ!」

「聖剣の乙女様万歳!」

「聖剣の乙女様ばんざーい!」

「…あらあら」

「メグ姉さま、すっかり人気者ですね!」

「聖剣の乙女か…俺の婚約者様はすごいな」

「い、いや、それほどでも…」

照れるー。でも、救えなかった命があるから素直には喜べない。

「聖剣の乙女様万歳!」

「もう居た堪れないから帰っていいかな…」

「はは、じゃあ帰ろうか」

そうして転移魔法で私達は王城に帰りました。

ー…

「なるほど…聖剣の乙女か…我が愛娘に相応しいな」

「もう!パパ、からかわないでよ!」

「ふっ…はは、いや、あんまりにも可愛いからついな」

「もー!」

「でもメグ姉さま本当にかっこよかったです!」

「どこかの騎士様みたいだったわ!」

「俺の出る幕がなかった程だしな」

「誉め殺しはやめてー!」

「国王陛下、モーントの国王陛下から援軍の感謝のお言葉が」

「そうか」

「特に聖剣の乙女たる第二王女殿下へ篤いお礼を申し上げると」

「メグ姉さま!すごいです!」

「い、いやぁ…あはは」

「遅かれ早かれバレるとは思っていたが、もうメグが聖剣の乙女だと気付かれるとはな」

「急ぎ御礼申し上げるが後日改めて正式な御礼をとのことです」

「気にするなと言っておいてくれ」

「はっ!」

「この分じゃ俺が戦場にいたこともすぐに父上にバレるな」

困ったようにシュテル様は笑い、パパは私の頭をなでなでと撫でます。

「改めて、ご苦労だったな。ゆっくり休め」

「ありがとう、パパ」

こうしてとりあえずの危機は去ったのでした。
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