17 / 62
皇帝陛下の愛娘は皇帝陛下を看病する
しおりを挟む
「パパ?」
「どうした、リリアージュ」
ティータイム。ナタナエルの変化に、リリアージュはいち早く気付いていた。
「パパ、具合悪いでしょ。大丈夫?おやつはもういいから、お部屋に行こう?」
「このくらいなんてことはない」
「パパ、お願い」
リリアージュの表情に、ナタナエルは早々に白旗を揚げた。
「…わかった。わかったから」
そんな泣きそうな顔をするな、とは声にならなかった。リリアージュは、ナタナエルが少しでも体調を崩すとすぐにこの表情になる。
「大丈夫?歩ける?」
「平気だ」
「手を繋いで行こう?」
「わかった」
「…手が熱い。熱あるでしょ」
「…問題ない」
「大問題だもん!」
こうなると、普段とは逆転してリリアージュが過保護になる。ナタナエルはそんなリリアージュを見て、この子はまだ俺がついていないとダメだと再確認させられる。そしてそれは事実だった。もし曲がり間違って今ナタナエルがリリアージュを残して逝ったら、他に精神的な拠り所のないリリアージュは立ち直れないだろう。友達は大切だが、そういう対象ではなかった。
さらに言ってしまえばリリアージュのこの態度が、ナタナエルがいつまでも子離れ出来ない要因の一つだ。リリアージュがナタナエルを必要としているのが簡単に見て取れるから、いつまでも手を放してやれない。そして、二人ともそれに気付いていない。
だが、それでも日々成長していくリリアージュならばやがては巣立ちの日を迎えられるだろう。二人をいつも側で見ているルイスは、リリアージュの将来を信じている。そして、その期待はきっと裏切られないだろう。だから、今はまだ。もう少しだけこのままで。
「パパ、ベッドに横になって。ニコラ、皮袋に氷を入れて持ってきて。おでこと脇に使うから三つね」
「はい、リリアージュ様」
口を挟まず側に控えていたニコラが指示を受け、皮袋と氷を取りに行く。
「パパ、今日の夜はお粥にしようね。無理しないで仕事は明日に回してね。何かして欲しいことはある?あ、果実水飲む?水分補給してね」
「わかった。大丈夫だ、リリアージュ」
「元気になるまで大丈夫じゃないもん」
言いながらリリアージュはルイスから果実水の入ったコップを受け取り、ナタナエルに渡す。
「パパ、はやく元気になって」
「わかっている」
自分より余程しんどそうな愛娘を見て、何が何でもはやく治すと決め込むナタナエル。本当なら、治癒魔法を使えればいいのだが…残念ながら治癒魔法は〝治癒魔法の魔力適性がある者には効き辛い〟というデメリットがあった。ナタナエルは、治癒魔法が効き辛い。効かない訳ではなく効き辛いだけであるので、ナタナエル自身治癒魔法を朝から掛けていたが…結果はご覧の有り様である。
「リリアージュ様。皮袋に氷を入れてお持ちしました」
「ニコラ、ありがとう!」
果実水を飲んだ後また横になるナタナエルのおでこと脇を、冷たい皮袋が冷やす。
リリアージュはナタナエルの手を握ってただ早い回復を祈った。大したことはないのにそんな大げさなリリアージュに、ナタナエルはそっと頭を撫でてさっさと眠りについた。少しでも体力を回復して、さっさと体調を整えるためだ。
ティータイムの後から、ナタナエルにずっと引っ付いていたリリアージュは眠りもせずに徹夜してナタナエルのおでこと脇を冷やした。ニコラは当然それに付き合って徹夜である。リリアージュの頑張りの成果があり、なんとか朝には熱が下がっていた。ナタナエルが眼を覚ます。
「パパ、おはよう」
「おはよう、リリアージュ。…熱が下がっているな。また一晩中付き合ってくれたのか?」
「うん」
「ありがとう、リリアージュ。…まだ起きるには少し早い。お前もベッドに入って寝ろ」
「うん!」
すっかり本調子に戻ったナタナエルに安心して、リリアージュはナタナエルとの添い寝で眠りについた。ナタナエルはニコラに小さくご苦労と声をかけて、またリリアージュと共に眠る。そんな二人の様子を見て、ニコラはナタナエルにだけは一生勝てそうもないと少し落ち込み、同時に仲のいい二人をとても微笑ましく思った。
「どうした、リリアージュ」
ティータイム。ナタナエルの変化に、リリアージュはいち早く気付いていた。
「パパ、具合悪いでしょ。大丈夫?おやつはもういいから、お部屋に行こう?」
「このくらいなんてことはない」
「パパ、お願い」
リリアージュの表情に、ナタナエルは早々に白旗を揚げた。
「…わかった。わかったから」
そんな泣きそうな顔をするな、とは声にならなかった。リリアージュは、ナタナエルが少しでも体調を崩すとすぐにこの表情になる。
「大丈夫?歩ける?」
「平気だ」
「手を繋いで行こう?」
「わかった」
「…手が熱い。熱あるでしょ」
「…問題ない」
「大問題だもん!」
こうなると、普段とは逆転してリリアージュが過保護になる。ナタナエルはそんなリリアージュを見て、この子はまだ俺がついていないとダメだと再確認させられる。そしてそれは事実だった。もし曲がり間違って今ナタナエルがリリアージュを残して逝ったら、他に精神的な拠り所のないリリアージュは立ち直れないだろう。友達は大切だが、そういう対象ではなかった。
さらに言ってしまえばリリアージュのこの態度が、ナタナエルがいつまでも子離れ出来ない要因の一つだ。リリアージュがナタナエルを必要としているのが簡単に見て取れるから、いつまでも手を放してやれない。そして、二人ともそれに気付いていない。
だが、それでも日々成長していくリリアージュならばやがては巣立ちの日を迎えられるだろう。二人をいつも側で見ているルイスは、リリアージュの将来を信じている。そして、その期待はきっと裏切られないだろう。だから、今はまだ。もう少しだけこのままで。
「パパ、ベッドに横になって。ニコラ、皮袋に氷を入れて持ってきて。おでこと脇に使うから三つね」
「はい、リリアージュ様」
口を挟まず側に控えていたニコラが指示を受け、皮袋と氷を取りに行く。
「パパ、今日の夜はお粥にしようね。無理しないで仕事は明日に回してね。何かして欲しいことはある?あ、果実水飲む?水分補給してね」
「わかった。大丈夫だ、リリアージュ」
「元気になるまで大丈夫じゃないもん」
言いながらリリアージュはルイスから果実水の入ったコップを受け取り、ナタナエルに渡す。
「パパ、はやく元気になって」
「わかっている」
自分より余程しんどそうな愛娘を見て、何が何でもはやく治すと決め込むナタナエル。本当なら、治癒魔法を使えればいいのだが…残念ながら治癒魔法は〝治癒魔法の魔力適性がある者には効き辛い〟というデメリットがあった。ナタナエルは、治癒魔法が効き辛い。効かない訳ではなく効き辛いだけであるので、ナタナエル自身治癒魔法を朝から掛けていたが…結果はご覧の有り様である。
「リリアージュ様。皮袋に氷を入れてお持ちしました」
「ニコラ、ありがとう!」
果実水を飲んだ後また横になるナタナエルのおでこと脇を、冷たい皮袋が冷やす。
リリアージュはナタナエルの手を握ってただ早い回復を祈った。大したことはないのにそんな大げさなリリアージュに、ナタナエルはそっと頭を撫でてさっさと眠りについた。少しでも体力を回復して、さっさと体調を整えるためだ。
ティータイムの後から、ナタナエルにずっと引っ付いていたリリアージュは眠りもせずに徹夜してナタナエルのおでこと脇を冷やした。ニコラは当然それに付き合って徹夜である。リリアージュの頑張りの成果があり、なんとか朝には熱が下がっていた。ナタナエルが眼を覚ます。
「パパ、おはよう」
「おはよう、リリアージュ。…熱が下がっているな。また一晩中付き合ってくれたのか?」
「うん」
「ありがとう、リリアージュ。…まだ起きるには少し早い。お前もベッドに入って寝ろ」
「うん!」
すっかり本調子に戻ったナタナエルに安心して、リリアージュはナタナエルとの添い寝で眠りについた。ナタナエルはニコラに小さくご苦労と声をかけて、またリリアージュと共に眠る。そんな二人の様子を見て、ニコラはナタナエルにだけは一生勝てそうもないと少し落ち込み、同時に仲のいい二人をとても微笑ましく思った。
36
あなたにおすすめの小説
【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする
冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。
彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。
優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。
王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。
忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか?
彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか?
お話は、のんびりゆったりペースで進みます。
騎士団の繕い係
あかね
ファンタジー
クレアは城のお針子だ。そこそこ腕はあると自負しているが、ある日やらかしてしまった。その結果の罰則として針子部屋を出て色々なところの繕い物をすることになった。あちこちをめぐって最終的に行きついたのは騎士団。花形を譲って久しいが消えることもないもの。クレアはそこで繕い物をしている人に出会うのだが。
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版
まほりろ
恋愛
国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。
食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。
しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。
アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。
その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。
ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。
※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日
※長編版と差し替えました。2025年7月2日
※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる