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皇帝陛下の愛娘は婚約者を独り占めしたい
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リリアージュは皇配教育を遅くまで受けていた恋人、ニコラを迎えに行った。リリアージュはリリアージュで皇太子教育があるので大変ではあるが、だからこそ恋人兼婚約者であるニコラとの時間を大切にしたいのだ。
しかし、今日に限ってはニコラはいつもの部屋にいなかった。なんでも、メイドが呼びにきてついて行ったとのこと。
メイドが呼びに来るということはナタナエルのところにいるのかと思いナタナエルのところに寄ってみたがいない。
どこにいるのかと宮廷内をぐるぐると回って、中庭についた時に聞いてしまった。
「ニコラ様、私ニコラ様が好きです!」
時間が止まった気がした。急いで壁に隠れつつ様子を伺った。可愛らしいメイドの少女と大好きな婚約者がいる。
そうだ、ニコラはファンクラブが出来るほどモテモテなのだ。いつかはこういうこともあると薄々わかってはいた。でも、やっぱり自分の婚約者が告白されている場面を見るのは結構心にくる。
しかも相手は可愛らしい少女。もし絆されてしまったらと怖かった。ニコラを疑うわけではない。でも、なんだかとても不安で、足元から地面が崩れ去る感覚だった。
しばらく沈黙が続いて、ニコラが口を開いた。
「だから?」
「え?」
メイドの少女が目を見開く。それは、勇気を出して告白したら返事が〝だから?〟では困惑もする。
「僕になんて言って欲しいの?僕に何を期待した?」
「そ、それは…えっと…」
リリアージュからは、ニコラの表情は見えない。ただ、さっきまで恋の熱に浮かされていたはずのメイドの少女が思いっきり怯えていることだけはわかった。
「僕の今の立場を知っているよね?僕はもうリリアージュの侍従じゃない。恋人兼婚約者だ。ようやく、ようやく想いが通じた。長かった。ずっとずっと片思いしていた。それなのに…僕の、邪魔をするの?」
「違う!私、そんなつもりじゃ…」
「そんなつもりだよね?だって、婚約者がいる相手に告白するってそういうことでしょう?」
メイドの少女がびくりと肩を震わせる。
「一晩だけ夢が見たかった?それとも愛人になりたかった?…リリアージュを裏切るような真似、僕がするわけないだろ。君、馬鹿なの?」
「…っ!」
ひっくひっくと嗚咽が聞こえる。とうとうメイドの少女は泣き始めてしまった。しかしニコラは止まらない。
「僕はリリアージュの優しいところが好きだよ。自分の悪口を言ったご令嬢すら許そうとしてしまう甘過ぎる優しさも、リリアージュの可愛らしいところだ。もちろん見た目も好き。緑の長いストレートヘアも指通りが良くてね。青い瞳もとても綺麗だろう?白いすべすべな肌も触れると冷たくて気持ちいいんだ。爪の形も綺麗なんだよ。それにね、リリアージュは僕が大好きなんだって。この間もちょっとだけ斜め上な方法だったけど、僕を喜ばせようと壁ドンとか髪にキスとか色々してくれてね。まあ方法が斜め上なのはともかくとして、すごく嬉しかった。理性を試されているのかなとか一瞬疑ったけど」
メイドの少女は泣きながらも若干ニコラの語りに引き始めていたが、ニコラが止まることはない。
「…それで?君にはどんな魅力があるの?リリアージュに勝てると本気で思う?あり得ないよね?リリアージュより可愛らしい人なんてこの世にいないもの」
メイドの少女はとうとう涙すら止めてニコラを凝視する。これが自分が好きになった男かと。
「リリアージュの婚約者に軽々しく告白なんて、本来なら許されない。覚えておくといいよ。話はこれで終わり?リリアージュに心配をかける前に戻りたいんだけど」
あまりに冷たいニコラの対応に、思わずメイドの少女が叫んだ。
「わ、私は鈍臭いメイドの私なんかにも分け隔てなく接するニコラ様の優しさが好きでした!でも、本性はそちらなのですね!?」
「当たり前でしょう。僕は侍従だったんだから、リリアージュのために働くうちは他の使用人達と円滑なコミュニケーションが取れる必要があったんだよ。誰にでも優しくするよ。というかそもそも、リリアージュに嫌われるようなこと出来ないし。告げ口とかされたらやだもの。僕の全部は、リリアージュのためのものだよ」
「…ニコラ様なんか大っ嫌いです!失礼します!」
メイドの少女が立ち去ろうとする。その背中にニコラは声をかけた。
「僕も、一瞬でもリリアージュを脅かそうとした君が大っ嫌いだよ。リリアージュの婚約者を奪おうとするとか普通に最低。自分から辞表を出すのをオススメするよ。僕もリリアージュを抱きしめるための手を汚したくないからね」
メイドの少女はキッとニコラを睨んだ後、今度こそ走って立ち去った。リリアージュは慌てて転移魔法で私室に戻る。
正直言って、色々な感情がぐちゃぐちゃになっていた。
ニコラが告白されていたのが嫌だった。ニコラが告白を拒絶していて嬉しかった。ニコラがあそこまで人を拒絶するとは思っていなかった。ニコラがあそこまで自分を愛してくれて嬉しかった。
メイドの少女が私の婚約者だと知っていながら告白をしたのを恨んだ。メイドの少女があそこまで徹底的に振られるのを見て少し安心してしまう自分が嫌だった。メイドの少女が泣いているのを見るのは少し申し訳無かった。でも、メイドの少女の自業自得だとも思ってしまった。
ぐるぐると回っていく思考をなんとか落ち着かせようと、蜂蜜たっぷりのホットミルクを部屋の外で控えていたメイドに頼む。少し落ち着いてからニコラに会いたかった。
ごくごくとホットミルクを飲んで、その優しい甘さに癒されていると部屋の扉がノックされた。
「リリアージュ、僕だよ。入っていいかな」
リリアージュは慌ててホットミルクを飲み干して返事をする。
「ど、どうぞ!」
ニコラはリリアージュの部屋に入って、リリアージュに微笑みかけた。
「今日はリリアージュを待たなくてごめんね。ちょっとメイドから呼ばれてしまって」
「用件はなんだったの?」
「極めて私的な用件だったよ」
「どんな?」
「…聞きたいの?」
「うん、聞きたい。言いたくない?」
「うん。あまり、楽しい話ではないんだ。それでも聞きたいなら、話すけど」
「聞きたい」
リリアージュがそう言うと、ニコラは困ったように笑って白旗を揚げた。
「…告白されたんだよ。僕が好きだって。でも、僕はリリアージュにしか興味ないからお断りした。…ね、あまり愉快な話ではないだろう?」
「…うん、そうだね。でも、教えてくれてありがとう」
よかった。ちゃんと言ってくれた。リリアージュは心底ほっとして、ニコラに抱きついた。
「リリアージュ?」
「ごめん、しばらくこのまま…」
「…わかったよ」
その後数日間、リリアージュはニコラを決して離さなかった。ずっと付き纏っていたが、ニコラ本人も幸せそうだったので誰も突っ込まなかった。
しかし、今日に限ってはニコラはいつもの部屋にいなかった。なんでも、メイドが呼びにきてついて行ったとのこと。
メイドが呼びに来るということはナタナエルのところにいるのかと思いナタナエルのところに寄ってみたがいない。
どこにいるのかと宮廷内をぐるぐると回って、中庭についた時に聞いてしまった。
「ニコラ様、私ニコラ様が好きです!」
時間が止まった気がした。急いで壁に隠れつつ様子を伺った。可愛らしいメイドの少女と大好きな婚約者がいる。
そうだ、ニコラはファンクラブが出来るほどモテモテなのだ。いつかはこういうこともあると薄々わかってはいた。でも、やっぱり自分の婚約者が告白されている場面を見るのは結構心にくる。
しかも相手は可愛らしい少女。もし絆されてしまったらと怖かった。ニコラを疑うわけではない。でも、なんだかとても不安で、足元から地面が崩れ去る感覚だった。
しばらく沈黙が続いて、ニコラが口を開いた。
「だから?」
「え?」
メイドの少女が目を見開く。それは、勇気を出して告白したら返事が〝だから?〟では困惑もする。
「僕になんて言って欲しいの?僕に何を期待した?」
「そ、それは…えっと…」
リリアージュからは、ニコラの表情は見えない。ただ、さっきまで恋の熱に浮かされていたはずのメイドの少女が思いっきり怯えていることだけはわかった。
「僕の今の立場を知っているよね?僕はもうリリアージュの侍従じゃない。恋人兼婚約者だ。ようやく、ようやく想いが通じた。長かった。ずっとずっと片思いしていた。それなのに…僕の、邪魔をするの?」
「違う!私、そんなつもりじゃ…」
「そんなつもりだよね?だって、婚約者がいる相手に告白するってそういうことでしょう?」
メイドの少女がびくりと肩を震わせる。
「一晩だけ夢が見たかった?それとも愛人になりたかった?…リリアージュを裏切るような真似、僕がするわけないだろ。君、馬鹿なの?」
「…っ!」
ひっくひっくと嗚咽が聞こえる。とうとうメイドの少女は泣き始めてしまった。しかしニコラは止まらない。
「僕はリリアージュの優しいところが好きだよ。自分の悪口を言ったご令嬢すら許そうとしてしまう甘過ぎる優しさも、リリアージュの可愛らしいところだ。もちろん見た目も好き。緑の長いストレートヘアも指通りが良くてね。青い瞳もとても綺麗だろう?白いすべすべな肌も触れると冷たくて気持ちいいんだ。爪の形も綺麗なんだよ。それにね、リリアージュは僕が大好きなんだって。この間もちょっとだけ斜め上な方法だったけど、僕を喜ばせようと壁ドンとか髪にキスとか色々してくれてね。まあ方法が斜め上なのはともかくとして、すごく嬉しかった。理性を試されているのかなとか一瞬疑ったけど」
メイドの少女は泣きながらも若干ニコラの語りに引き始めていたが、ニコラが止まることはない。
「…それで?君にはどんな魅力があるの?リリアージュに勝てると本気で思う?あり得ないよね?リリアージュより可愛らしい人なんてこの世にいないもの」
メイドの少女はとうとう涙すら止めてニコラを凝視する。これが自分が好きになった男かと。
「リリアージュの婚約者に軽々しく告白なんて、本来なら許されない。覚えておくといいよ。話はこれで終わり?リリアージュに心配をかける前に戻りたいんだけど」
あまりに冷たいニコラの対応に、思わずメイドの少女が叫んだ。
「わ、私は鈍臭いメイドの私なんかにも分け隔てなく接するニコラ様の優しさが好きでした!でも、本性はそちらなのですね!?」
「当たり前でしょう。僕は侍従だったんだから、リリアージュのために働くうちは他の使用人達と円滑なコミュニケーションが取れる必要があったんだよ。誰にでも優しくするよ。というかそもそも、リリアージュに嫌われるようなこと出来ないし。告げ口とかされたらやだもの。僕の全部は、リリアージュのためのものだよ」
「…ニコラ様なんか大っ嫌いです!失礼します!」
メイドの少女が立ち去ろうとする。その背中にニコラは声をかけた。
「僕も、一瞬でもリリアージュを脅かそうとした君が大っ嫌いだよ。リリアージュの婚約者を奪おうとするとか普通に最低。自分から辞表を出すのをオススメするよ。僕もリリアージュを抱きしめるための手を汚したくないからね」
メイドの少女はキッとニコラを睨んだ後、今度こそ走って立ち去った。リリアージュは慌てて転移魔法で私室に戻る。
正直言って、色々な感情がぐちゃぐちゃになっていた。
ニコラが告白されていたのが嫌だった。ニコラが告白を拒絶していて嬉しかった。ニコラがあそこまで人を拒絶するとは思っていなかった。ニコラがあそこまで自分を愛してくれて嬉しかった。
メイドの少女が私の婚約者だと知っていながら告白をしたのを恨んだ。メイドの少女があそこまで徹底的に振られるのを見て少し安心してしまう自分が嫌だった。メイドの少女が泣いているのを見るのは少し申し訳無かった。でも、メイドの少女の自業自得だとも思ってしまった。
ぐるぐると回っていく思考をなんとか落ち着かせようと、蜂蜜たっぷりのホットミルクを部屋の外で控えていたメイドに頼む。少し落ち着いてからニコラに会いたかった。
ごくごくとホットミルクを飲んで、その優しい甘さに癒されていると部屋の扉がノックされた。
「リリアージュ、僕だよ。入っていいかな」
リリアージュは慌ててホットミルクを飲み干して返事をする。
「ど、どうぞ!」
ニコラはリリアージュの部屋に入って、リリアージュに微笑みかけた。
「今日はリリアージュを待たなくてごめんね。ちょっとメイドから呼ばれてしまって」
「用件はなんだったの?」
「極めて私的な用件だったよ」
「どんな?」
「…聞きたいの?」
「うん、聞きたい。言いたくない?」
「うん。あまり、楽しい話ではないんだ。それでも聞きたいなら、話すけど」
「聞きたい」
リリアージュがそう言うと、ニコラは困ったように笑って白旗を揚げた。
「…告白されたんだよ。僕が好きだって。でも、僕はリリアージュにしか興味ないからお断りした。…ね、あまり愉快な話ではないだろう?」
「…うん、そうだね。でも、教えてくれてありがとう」
よかった。ちゃんと言ってくれた。リリアージュは心底ほっとして、ニコラに抱きついた。
「リリアージュ?」
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