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菫の花は蝶の持つ毒に気付かない
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「ヴィオレットさぁ、いい加減に諦めて俺のモノになりなよ。ほら、婚約指輪受け取って」
「む、無理です!私に第二王子妃なんて無理です!」
「結婚した暁には王籍を離脱して一公爵になるんだってば。公爵令嬢である、学園でも優秀な成績を収める君なら問題ないでしょ」
「わ、私なんて…家柄以外になんの取り柄もないのに…」
「私なんて、なんて言わない。君は素敵なお嬢さんだよ。家柄ももちろんだけれど、ルックスもいいね。その綺麗な瞳に俺が映るたび、俺がどれだけ幸せを感じるかわかるかい?」
「えっ、えっ…」
「その白い肌が俺からの求愛に応えるように紅く染まっていくたびに、俺は飛び上がるほど嬉しいんだよ」
「殿下…あの…」
「その愛らしい唇が可愛らしく動く度、キスをしたくなる衝動に駆られるんだ」
「ぺ、ペタルダ殿下…」
「君がそうやって俺の名を紡ぐ度、どれほど心臓が高鳴るか…」
ペタルダはヴィオレットの手を優しく掴み、そっとヴィオレットを引き寄せ自分の胸に抱え込んだ。ヴィオレットはペタルダの胸がドキドキと脈打つのを感じた。
ー…私と、同じくらいドキドキしてる。
ヴィオレットは元々真っ赤だった自分の顔が更に真っ赤になっているだろうと思い、落ち着くまではこのまま抱き締められるしかないと思った。
「もちろんルックスだけじゃない。成績も優秀だよね。テストでは常に俺と一位を争うほどだし」
「え、えっと、それは…」
ただ単に勉強が出来るだけで、特別頭が良いわけではない。むしろ、頭の回転は遅い方だ。
「所作も美しいし。ああでも、やっぱりふとした時に見せる微笑みこそ至上かな。アレにやられた男は多いだろうね。排除するのが大変だった」
「…?」
排除とはなんだろうか。きょとんとするヴィオレットの頭をペタルダは優しく撫でる。その瞳に昏い色が混ざっているのに、ヴィオレットは気付かない。
「あとはやっぱり性格かな。捨て犬や捨て猫を拾ってきては、公爵家の今は使われていない別邸にこっそりと匿って育てていると聞いたよ。君は優しいね」
「え…!?」
「ご両親と兄君は気付いていて黙認していたみたいだよ。なんならヴィオレットのいない時間はこっそり会いに行って可愛がっているみたいだね」
「でも…飼いたいと言ったら反対されたのに…」
「そうだね。普段良い子なヴィオレットが、初めて親に秘密を作ってまで小さな命を助けようとしたんだ。さすがに思うところがあったんだろう。避妊、去勢の手術もちゃんと行ったのも良かったんだろうね。悪戯に増やすこともないとわかったわけだし」
「…そうですか」
ならばその時に声をかけてくれればいいのに。ヴィオレットはちょっとだけ家族に対して拗ねたくなった。
「ところでさ、その保護猫の中で一匹、とても綺麗な真っ白な猫がいただろう」
「はい、いました。可愛らしくて人懐こい子でした。でも、今は本当の飼い主さんのところに戻っていますよ?」
その真っ白な猫は、捨て猫ではなく迷い猫だったらしく、何処からかヴィオレットが真っ白な猫を飼っていると噂を聞きつけた高貴な身分の方の使いが引き取っていった。正直かなり寂しかったが、飼い主の元に戻れてよかったと思う。
「その飼い主さ、俺なんだよね」
「…はい?」
「あの時はありがとう。あの子は今も元気に遊びまわってるよ。お礼を言うのが遅くなってごめん」
…どうやら本当らしい。
「俺の婚約者になれば、いつでもあの子…リュカに会えるよ?」
「婚約者になります!…あ、でも、うちの子達は…」
「ご両親も兄君も可愛がっているようだし、問題は無いと思う。もし連れてきたいなら俺が公爵になった暁には犬猫用の別邸を作って、そこに連れ込むのもいいし」
「!ぜ、ぜひ!」
瞳をキラキラと輝かせるヴィオレットに優しく微笑むペタルダ。
ヴィオレットは気付かない。ヴィオレットの陰口を叩いていた、ペタルダの婚約者になりたがっていたご令嬢方をいつのまにか学園で見かけることがなくなっていたことを。
ヴィオレットは気付かない。ヴィオレットをぜひ婚約者にと近付いてきたご令息方がいつのまにか姿を消していたことを。
高貴な菫は高貴な蝶の為だけに咲けばいい。何も気付かず、ただそこに在り幸福でいればそれでいいのだ。
「む、無理です!私に第二王子妃なんて無理です!」
「結婚した暁には王籍を離脱して一公爵になるんだってば。公爵令嬢である、学園でも優秀な成績を収める君なら問題ないでしょ」
「わ、私なんて…家柄以外になんの取り柄もないのに…」
「私なんて、なんて言わない。君は素敵なお嬢さんだよ。家柄ももちろんだけれど、ルックスもいいね。その綺麗な瞳に俺が映るたび、俺がどれだけ幸せを感じるかわかるかい?」
「えっ、えっ…」
「その白い肌が俺からの求愛に応えるように紅く染まっていくたびに、俺は飛び上がるほど嬉しいんだよ」
「殿下…あの…」
「その愛らしい唇が可愛らしく動く度、キスをしたくなる衝動に駆られるんだ」
「ぺ、ペタルダ殿下…」
「君がそうやって俺の名を紡ぐ度、どれほど心臓が高鳴るか…」
ペタルダはヴィオレットの手を優しく掴み、そっとヴィオレットを引き寄せ自分の胸に抱え込んだ。ヴィオレットはペタルダの胸がドキドキと脈打つのを感じた。
ー…私と、同じくらいドキドキしてる。
ヴィオレットは元々真っ赤だった自分の顔が更に真っ赤になっているだろうと思い、落ち着くまではこのまま抱き締められるしかないと思った。
「もちろんルックスだけじゃない。成績も優秀だよね。テストでは常に俺と一位を争うほどだし」
「え、えっと、それは…」
ただ単に勉強が出来るだけで、特別頭が良いわけではない。むしろ、頭の回転は遅い方だ。
「所作も美しいし。ああでも、やっぱりふとした時に見せる微笑みこそ至上かな。アレにやられた男は多いだろうね。排除するのが大変だった」
「…?」
排除とはなんだろうか。きょとんとするヴィオレットの頭をペタルダは優しく撫でる。その瞳に昏い色が混ざっているのに、ヴィオレットは気付かない。
「あとはやっぱり性格かな。捨て犬や捨て猫を拾ってきては、公爵家の今は使われていない別邸にこっそりと匿って育てていると聞いたよ。君は優しいね」
「え…!?」
「ご両親と兄君は気付いていて黙認していたみたいだよ。なんならヴィオレットのいない時間はこっそり会いに行って可愛がっているみたいだね」
「でも…飼いたいと言ったら反対されたのに…」
「そうだね。普段良い子なヴィオレットが、初めて親に秘密を作ってまで小さな命を助けようとしたんだ。さすがに思うところがあったんだろう。避妊、去勢の手術もちゃんと行ったのも良かったんだろうね。悪戯に増やすこともないとわかったわけだし」
「…そうですか」
ならばその時に声をかけてくれればいいのに。ヴィオレットはちょっとだけ家族に対して拗ねたくなった。
「ところでさ、その保護猫の中で一匹、とても綺麗な真っ白な猫がいただろう」
「はい、いました。可愛らしくて人懐こい子でした。でも、今は本当の飼い主さんのところに戻っていますよ?」
その真っ白な猫は、捨て猫ではなく迷い猫だったらしく、何処からかヴィオレットが真っ白な猫を飼っていると噂を聞きつけた高貴な身分の方の使いが引き取っていった。正直かなり寂しかったが、飼い主の元に戻れてよかったと思う。
「その飼い主さ、俺なんだよね」
「…はい?」
「あの時はありがとう。あの子は今も元気に遊びまわってるよ。お礼を言うのが遅くなってごめん」
…どうやら本当らしい。
「俺の婚約者になれば、いつでもあの子…リュカに会えるよ?」
「婚約者になります!…あ、でも、うちの子達は…」
「ご両親も兄君も可愛がっているようだし、問題は無いと思う。もし連れてきたいなら俺が公爵になった暁には犬猫用の別邸を作って、そこに連れ込むのもいいし」
「!ぜ、ぜひ!」
瞳をキラキラと輝かせるヴィオレットに優しく微笑むペタルダ。
ヴィオレットは気付かない。ヴィオレットの陰口を叩いていた、ペタルダの婚約者になりたがっていたご令嬢方をいつのまにか学園で見かけることがなくなっていたことを。
ヴィオレットは気付かない。ヴィオレットをぜひ婚約者にと近付いてきたご令息方がいつのまにか姿を消していたことを。
高貴な菫は高貴な蝶の為だけに咲けばいい。何も気付かず、ただそこに在り幸福でいればそれでいいのだ。
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