1 / 28
プロローグ
1.プロローグ
しおりを挟む
最初のご主人様は、僕のお父様でした。
僕は物心ついた時からお父様の犬でした。
お父様は、僕が何か間違ったことをすれば、僕が気絶する寸前まで躾をしました。
お父様を前にした僕に許された返事は『はい』か『わん』だけ。それ以外の言葉は全て口答えで、お父様への反抗でした。
お父様は僕を嫌っていましたが、僕を躾けているときは楽しそうでした。
僕は、お父様に楽しそうにしていただけることが、本当に嬉しかったのです。
僕はお父様の犬でいられて幸せでした。
しかし、僕が9歳になったとき、お父様は事故で亡くなってしまいました。
ご主人様を失い、僕は絶望しました。
絶望から抜け出せないうちに別の家に引き取られることになりましたが、その家の方々は僕のご主人様にはなってくれませんでした。
絶望が晴れぬまま10歳で国立学園の初等部に入学し、僕はそこで、新しいご主人様を見つけることになります。
その方こそ、ルスラン・テオス・ゾロテスティ様。
ルスラン様は、僕の生涯の主人となりました。
僕が間違えれば、否を唱えれば、ルスラン様は愛を持って僕を躾けてくださいました。僕が絶対服従していても、ルスラン様が加害衝動を覚えたときには、僕を使ってすっきりしてくださいました。
僕は、僕を使ってくださるルスラン様に心から心酔しておりました。
僕はまさしく、ルスラン様の犬でした。
美しきルスラン様は成績も優秀で、文武両道でした。ルスラン様はその才を遺憾なく発揮しながら学生時代を過ごしておられました。
その中で、ルスラン様はだんだんと王家への不信感を募らせることになります。
全くもってその通りだと、僕はルスラン様に同調しました。僕がルスラン様の言葉を否定するわけがありませんでした。
ルスラン様は同じ思想の仲間を集めていきました。僕もお手伝いをさせていただきました。
ルスラン様は王家の重要人物たちを殺害し、混乱させる計画を立てました。僕もお手伝いさせていただきました。
ルスラン様は王城に乗り込みました。僕もお手伝いさせていただきました。
ルスラン様は王の首を斬りました。僕もお手伝いさせていただきました。
ルスラン様が騎士に斬られそうになって、僕が庇いました。
ルスラン様は倒れる僕を置いて、
逃げませんでした。
あれ?
背中から刺され、激痛の最中、ルスラン様の足が動いていないことに気が付き、ルスラン様を見上げると、こぼれそうなくらい見開かれた、美しい青い瞳と目が合いました。
逃げてと叫ぼうとして口を開き、血が溢れました。内臓が傷ついていたようでした。ルスラン様は逃げるどころか、僕の方へ歩み寄ってきました。
出血でぼんやりする頭でも、ルスラン様のその行動がルスラン様を危険に晒すことくらいはわかりました。僕は逃げてほしくて、だけど声が出ませんでした。
「──俺は、」
ルスラン様のよく通る声が耳に響いて、
ルスラン様の喉元を、王家の騎士の剣が貫きました。
僕の隣に崩れ落ちるルスラン様。
致死量の血を首から噴き出させるルスラン様。
僕の方に手を伸ばそうとして、力なく下ろしたルスラン様。
ルスラン様がもう助からないことは誰の目にも明らかでした。
僕の頭に、様々な疑問が浮かびます。
どうして、ルスラン様は逃げなかったのでしょうか?
どうして、ルスラン様は僕の隣で倒れているのでしょうか?
どうして、ルスラン様は死ななければならなかったのでしょうか?
ルスラン様は、なにか、間違っていたのでしょうか?
僕は、なにを間違えたのでしょうか?
背中に鋭い痛みが走りました。とどめを刺されたのでしょう。
思考はそこで止まり、僕は命を落としました。
僕は物心ついた時からお父様の犬でした。
お父様は、僕が何か間違ったことをすれば、僕が気絶する寸前まで躾をしました。
お父様を前にした僕に許された返事は『はい』か『わん』だけ。それ以外の言葉は全て口答えで、お父様への反抗でした。
お父様は僕を嫌っていましたが、僕を躾けているときは楽しそうでした。
僕は、お父様に楽しそうにしていただけることが、本当に嬉しかったのです。
僕はお父様の犬でいられて幸せでした。
しかし、僕が9歳になったとき、お父様は事故で亡くなってしまいました。
ご主人様を失い、僕は絶望しました。
絶望から抜け出せないうちに別の家に引き取られることになりましたが、その家の方々は僕のご主人様にはなってくれませんでした。
絶望が晴れぬまま10歳で国立学園の初等部に入学し、僕はそこで、新しいご主人様を見つけることになります。
その方こそ、ルスラン・テオス・ゾロテスティ様。
ルスラン様は、僕の生涯の主人となりました。
僕が間違えれば、否を唱えれば、ルスラン様は愛を持って僕を躾けてくださいました。僕が絶対服従していても、ルスラン様が加害衝動を覚えたときには、僕を使ってすっきりしてくださいました。
僕は、僕を使ってくださるルスラン様に心から心酔しておりました。
僕はまさしく、ルスラン様の犬でした。
美しきルスラン様は成績も優秀で、文武両道でした。ルスラン様はその才を遺憾なく発揮しながら学生時代を過ごしておられました。
その中で、ルスラン様はだんだんと王家への不信感を募らせることになります。
全くもってその通りだと、僕はルスラン様に同調しました。僕がルスラン様の言葉を否定するわけがありませんでした。
ルスラン様は同じ思想の仲間を集めていきました。僕もお手伝いをさせていただきました。
ルスラン様は王家の重要人物たちを殺害し、混乱させる計画を立てました。僕もお手伝いさせていただきました。
ルスラン様は王城に乗り込みました。僕もお手伝いさせていただきました。
ルスラン様は王の首を斬りました。僕もお手伝いさせていただきました。
ルスラン様が騎士に斬られそうになって、僕が庇いました。
ルスラン様は倒れる僕を置いて、
逃げませんでした。
あれ?
背中から刺され、激痛の最中、ルスラン様の足が動いていないことに気が付き、ルスラン様を見上げると、こぼれそうなくらい見開かれた、美しい青い瞳と目が合いました。
逃げてと叫ぼうとして口を開き、血が溢れました。内臓が傷ついていたようでした。ルスラン様は逃げるどころか、僕の方へ歩み寄ってきました。
出血でぼんやりする頭でも、ルスラン様のその行動がルスラン様を危険に晒すことくらいはわかりました。僕は逃げてほしくて、だけど声が出ませんでした。
「──俺は、」
ルスラン様のよく通る声が耳に響いて、
ルスラン様の喉元を、王家の騎士の剣が貫きました。
僕の隣に崩れ落ちるルスラン様。
致死量の血を首から噴き出させるルスラン様。
僕の方に手を伸ばそうとして、力なく下ろしたルスラン様。
ルスラン様がもう助からないことは誰の目にも明らかでした。
僕の頭に、様々な疑問が浮かびます。
どうして、ルスラン様は逃げなかったのでしょうか?
どうして、ルスラン様は僕の隣で倒れているのでしょうか?
どうして、ルスラン様は死ななければならなかったのでしょうか?
ルスラン様は、なにか、間違っていたのでしょうか?
僕は、なにを間違えたのでしょうか?
背中に鋭い痛みが走りました。とどめを刺されたのでしょう。
思考はそこで止まり、僕は命を落としました。
73
あなたにおすすめの小説
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
美貌の貧乏男爵、犬扱いしていた隣国の王子に求婚される
muku
BL
父亡き後、若くして男爵となったノエルは領地経営に失敗し、多額の借金を抱えて途方に暮れていた。そこへやって来たのは十年前に「野良犬」として保護していた少年レオで、彼の成長を喜ぶノエルだったが、実はその正体が大国の王子であったと知って驚愕する。
復讐に来たのだと怯えて逃げ出すノエルだったが、レオことレオフェリス王子はノエルに結婚してほしいと頼み始める。
男爵邸に滞在すると言い出す王子は「自分はあなたの犬だ」と主張し、ノエルは混乱するしかない。見通しの立たない返済計画、積極的な犬王子、友人からのありえない提案と、悩みは尽きない美貌の男爵。
借金完済までの道のりは遠い。
【大至急】誰でもいいので、魔王からの求婚を穏便に断る方法を教えてください。
志子
BL
魔王(美形でめっちゃピュア)×聖職者(平凡)のお話。
聖女の力を持っている元孤児ロニーは教会で雑用をこなす日々。そんなロニーの元に一匹の黒猫が姿を現し、いつしかロニーの小さな友人となった。
注意)性的な言葉と表現があります。
公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します
市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。
四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。
だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。
自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。
※性描写あり。他サイトにも掲載しています。
美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?
あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる