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第十一話「婚約破棄」
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結局私はミリアに嫌がらせをしないまま時は過ぎ、十八歳の冬。
この学園は成人する十八歳で卒業となる。
あと数ヶ月で卒業……そんな時期の中、授業が終わった頃に殿下から話があると学園のホールに呼び出された。
ホールにはたくさんの令嬢と令息が集まり、私がやってくると刺すような視線を向けてくる。
……ああ、このときがきてしまったんだ。
「アイリス・ヴィーレイナ! 俺はお前との婚約を破棄する!」
殿下がホール中に響くような大きな声で告げる。
私と殿下、そして殿下にくっついているミリアをぐるっと貴族が囲んでいたけれど、誰も反論することはなかった。
「理由を訊いてもよろしいですか?」
「そんなことも言わないとわからないのか?」
わかっているけれど、念のためだ。
殿下は『運命の番』であるミリアと共にいたいからだろう。
だけど、殿下は怒りを滲ませた声音で……予想外のことも口にした。
「俺とミリアは『運命の番』だ。それが一番の理由だ。だが……お前は優秀な女だから、第二夫人に迎えようかと思っていた。思っていたが、こんな豚のような女と婚約するつもりはない」
殿下がビシッと指をさしているのは、私のお腹。
私のお腹は殿下とお会いしたときよりも、学園に入学して少し経った頃よりも、たっぷりと贅肉がついている。
おかげで学園の制服はオーダーメイドにしてもらわないと入ることができず、だとしてもぱっつんぱっつんでブラウスのボタンが吹っ飛びそうだ。
「お前を第二夫人に迎える気もない。豚もどきが俺に近寄るな。お前のことは学園長とルージェ公爵に話してある。王太子にふさわしい婚約者になれなかったお前は、もうこの学園に二度と足を踏み入れるな」
「……」
「返事すらもできないのか?」
「……はい、わかりました」
「アイリス様、私が突然殿下のことを奪ってしまってごめんなさい。でも、『運命の番』でしたから……。それに、アイリス様は私に嫉妬して、嫌がらせもされていましたよね。殿下はそれにも呆れておりましたわ」
「そうだ。ミリアに散々のことをしていたそうじゃないか」
「本当に申し訳ありません、アイリス様。私が『運命の番』であるばかりに……」
ミリアが申し訳なさそうに言う。
だけど謝っているのは建前で、本音は殿下と結ばれて嬉しそうなのが声色でわかった。
それに、私はミリアに嫌がらせの一つもしていない。
それでも話は小説の通りに進んで——小説の中のアイリスはこんなに太っていなかったけれど——私は悪役令嬢として役目を果たしたのだ。
「アイリス嬢、涙も流しませんのね」
「なんて冷たい女」
「心も醜いだなんて」
私たちを囲んでいる貴族たちが、ひそひそと話している。
私にわざと聞こえるくらいのトーンで、蔑みの言葉を投げつけてくる。
手が、震える。
心臓も早く鳴るけれど、これは恋をしているからショックを受けただとか、そんな理由じゃない。
私を責めるような視線から早く逃げ出したい焦る気持ちと、今まで耐えて来たことから逃れられる期待の気持ちからだ。
「では、こちらの学園も退学させていただきます。殿下、今までありがとうございました」
私は制服のスカートを翻し、ローファーを鳴らしてホールから出て行く。
学園の護衛に呼ばれ、学園長室に行くと退学届に同意書を署名してくれと言われて、万年筆で適当に書いて退出した。
殿下には、全く未練はなかった。
元々愛のない政略結婚だった。
彼氏いない歴年齢の私に婚約者ができて勝手に舞い上がって、プレゼントも貰ってこの人は一緒に愛を育もうとしてくれているんだなんて、都合の良い解釈をしていただけなのだ。
「ミリアと、お幸せに」
校門をくぐって、後ろを振り返る。
白亜の豪奢な学園を見て、特に思い出はなかったなと前を向く。
殿下が告げたのか学園の外には侍女が待機していて、馬車に乗って帰宅した。
この学園は成人する十八歳で卒業となる。
あと数ヶ月で卒業……そんな時期の中、授業が終わった頃に殿下から話があると学園のホールに呼び出された。
ホールにはたくさんの令嬢と令息が集まり、私がやってくると刺すような視線を向けてくる。
……ああ、このときがきてしまったんだ。
「アイリス・ヴィーレイナ! 俺はお前との婚約を破棄する!」
殿下がホール中に響くような大きな声で告げる。
私と殿下、そして殿下にくっついているミリアをぐるっと貴族が囲んでいたけれど、誰も反論することはなかった。
「理由を訊いてもよろしいですか?」
「そんなことも言わないとわからないのか?」
わかっているけれど、念のためだ。
殿下は『運命の番』であるミリアと共にいたいからだろう。
だけど、殿下は怒りを滲ませた声音で……予想外のことも口にした。
「俺とミリアは『運命の番』だ。それが一番の理由だ。だが……お前は優秀な女だから、第二夫人に迎えようかと思っていた。思っていたが、こんな豚のような女と婚約するつもりはない」
殿下がビシッと指をさしているのは、私のお腹。
私のお腹は殿下とお会いしたときよりも、学園に入学して少し経った頃よりも、たっぷりと贅肉がついている。
おかげで学園の制服はオーダーメイドにしてもらわないと入ることができず、だとしてもぱっつんぱっつんでブラウスのボタンが吹っ飛びそうだ。
「お前を第二夫人に迎える気もない。豚もどきが俺に近寄るな。お前のことは学園長とルージェ公爵に話してある。王太子にふさわしい婚約者になれなかったお前は、もうこの学園に二度と足を踏み入れるな」
「……」
「返事すらもできないのか?」
「……はい、わかりました」
「アイリス様、私が突然殿下のことを奪ってしまってごめんなさい。でも、『運命の番』でしたから……。それに、アイリス様は私に嫉妬して、嫌がらせもされていましたよね。殿下はそれにも呆れておりましたわ」
「そうだ。ミリアに散々のことをしていたそうじゃないか」
「本当に申し訳ありません、アイリス様。私が『運命の番』であるばかりに……」
ミリアが申し訳なさそうに言う。
だけど謝っているのは建前で、本音は殿下と結ばれて嬉しそうなのが声色でわかった。
それに、私はミリアに嫌がらせの一つもしていない。
それでも話は小説の通りに進んで——小説の中のアイリスはこんなに太っていなかったけれど——私は悪役令嬢として役目を果たしたのだ。
「アイリス嬢、涙も流しませんのね」
「なんて冷たい女」
「心も醜いだなんて」
私たちを囲んでいる貴族たちが、ひそひそと話している。
私にわざと聞こえるくらいのトーンで、蔑みの言葉を投げつけてくる。
手が、震える。
心臓も早く鳴るけれど、これは恋をしているからショックを受けただとか、そんな理由じゃない。
私を責めるような視線から早く逃げ出したい焦る気持ちと、今まで耐えて来たことから逃れられる期待の気持ちからだ。
「では、こちらの学園も退学させていただきます。殿下、今までありがとうございました」
私は制服のスカートを翻し、ローファーを鳴らしてホールから出て行く。
学園の護衛に呼ばれ、学園長室に行くと退学届に同意書を署名してくれと言われて、万年筆で適当に書いて退出した。
殿下には、全く未練はなかった。
元々愛のない政略結婚だった。
彼氏いない歴年齢の私に婚約者ができて勝手に舞い上がって、プレゼントも貰ってこの人は一緒に愛を育もうとしてくれているんだなんて、都合の良い解釈をしていただけなのだ。
「ミリアと、お幸せに」
校門をくぐって、後ろを振り返る。
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殿下が告げたのか学園の外には侍女が待機していて、馬車に乗って帰宅した。
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