32 / 49
第三十二話「模擬戦、見に行きたいです!」
しおりを挟む◇◇◇
ミルさんたちに散々エリオットとの話を聞かれ、たくさん喋ったあと日も暮れてきたので帰宅した。
部屋の埃が気になって掃除しているころ、鍵が開く音がして、エリオットが帰ってきた。
私も部屋から出て一階に降り、エリオットの帰りを迎える。
「おかえり、エリオット」
「ただいま、アイリス」
なんだかエリオットがいつもより疲れている気がする。
コートを脱ぎ手を洗ってリビングの椅子に腰かけると、エリオットは向かい側に座る私に微笑みかけた。
「弁当、すごく美味かった。ありがとう」
「……! 良かった! 不味かったらどうしようかと思ってたの」
「アイリスの作る料理で美味くないものなんてない。本当に作ってくれてありがとう。それで、団員たちがさ……」
エリオットはため息まじりに今日のことを話し始めた。
護衛が終わって交代したあと、訓練棟の食堂で私が作ったお弁当を開いたら、フレッドとルギルという人が寄ってきたらしい。
勝手にエリオットのお弁当を食べたうえに、私に自分の分も作ってくれと頼んでほしいと言われたのだとか。
それほどお弁当が美味しかったらしく、二人が美味い美味いと食べている間に他の団員も寄ってきてしまい。
その人たちも、「そんなに美味いなら俺たちにも作ってほしい」と言ってきて、さすがのエリオットも怒ったそうだ。
「作ってほしいのであれば、お作りしますよ」
「いや、そんなのしなくていい。調子に乗るだけだ」
「でも……」
「俺の大事な人が作った弁当を、他の人に食べさせたくない」
……大事な人、という言葉にきゅんと心臓が跳ねた。
真っ直ぐ見つめてくるものだから、思わず目を逸らしてしまう。
そういうことを言うのは、ずるいと思います……。
「もうすぐ暖かい季節になるから、服を買いに行かない?」
「あ……そう、ね」
冬用の服はこの服とエリオットと出かけたときに購入したものをいくつか持っているけれど、涼しい洋服を持ってない。
もうこの国は春の季節だ。
さすがにこの分厚いコートや洋服じゃ暑いだろう。
「じゃあ、お給料が出たときに買いに行くわ」
「俺が買うよ」
「いえ、自分のものなので、私が」
私が胸に手をあてて自分で買うことを示す。
エリオットは「こうなるとアイリスは頑固だからなぁ……」と肩を竦め、一緒に買いにいくけれど自分の洋服のお金は私が払うということになった。
「そういえば、エリオットは騎士団の中で模擬戦を行ってるの?」
「ああ、行っているよ」
「それじゃあ、その……見に行ってもいい?」
「……!」
エリオットが嬉しそうに瞳を輝かせる。
「いいよ、来て」
「ありがとう!」
「五日後朝一で模擬戦の予定があるから、一緒に行こう。アイリスも休みだろう?」
「ええ。行く! 絶対行くわ!」
エリオットはどういう風に戦うのだろう。
確か、獣人騎士団は魔物も倒していると言っていた。
エリオットは副団長だ。
ミルさんたちから聞いた話だと、エリオットは団長と同じくらい剣技に長けているらしい。
五日後が楽しみだと思いながら、夕食の時間まで二人でいろんな話をして笑い合った。
33
あなたにおすすめの小説
【読切短編】婚約破棄された令嬢ですが、帳簿があれば辺境でも無双できます ~追い出した公爵家は、私がいないと破産するらしい~
Lihito
ファンタジー
公爵令嬢アイリスは、身に覚えのない罪で婚約破棄され、辺境へ追放された。
だが彼女には秘密がある。
前世は経理OL。そして今世では、物や土地の「価値」が数字で見える能力を持っていた。
公爵家の帳簿を一手に管理していたのは、実は彼女。
追い出した側は、それを知らない。
「三ヶ月で破産すると思うけど……まあ、私には関係ないわね」
荒れ果てた辺境領。誰も気づかなかった資源。無口な護衛騎士。
アイリスは数字を武器に、この土地を立て直すことを決意する。
これは、一人の令嬢が「価値」を証明する物語。
——追い出したこと、後悔させてあげる。
醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした
きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。
顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。
しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
「ときめかない」ものなど捨てておしまいなさい
megane-san
ファンタジー
私、クリスティーナは、前世で国税調査官として残業漬けの日々を送っていましたが、どうやら過労でぶっ倒れそのまま今の世界に転生してきたようです。
転生先のグリモード伯爵家は表向きは普通の商会を営んでおりますが裏では何やら諜報や暗部の仕事をしているらしく…。そんな表と裏の家業を手伝いながら、前世で汚部屋生活をしていた私は、今世で断捨離に挑戦することにしたのですが、なんと断捨離中に光魔法が使えることが発覚!
魔力があることを国にバレないようにしながら、魔術師の最高峰である特級魔術師を目指します!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる