面倒くさがり屋の異世界転生

自由人

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第4章 新たなる旅立ち

第102話 アリの巣コロリ

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 ゴブリンキングダムを後にして、ケンは森の中を散策する。オークのところまではまだ距離はあるが、今のペースなら夕方には街に戻れているだろうと予測する。

 オークのところへ向かう中、所々で出会うモンスターを綺麗に倒しては、【無限収納】へと収めていく。

「オークってどんなやつかな? やっぱりイノシシ人間みたいなやつか? ブタ人間だったら“オーク”じゃなくて“ポーク”って命名したいな。どっちにしろ倒すんだが」

 ケンはぶらり1人旅を楽しんでいると、オークのところまでやってきた。見た目、ブタなのかイノシシなのかよく分からない顔だった。

 牙がある以上イノシシ寄りか? ともかく安定の綺麗狩りで倒してみることにするか。

(ドサッ)

「ピクピクしてるが、死んだよな?」

 ケンは未だ動いているオークに、若干ビビりながらも近づいていくと、まだピクピクはしていたが、死にかけているみたいで安堵するのであった。

「やっぱり個体によっては、しぶといのとかいるみたいだな。これは気をつけないと、うっかり反撃されたら、たまったもんじゃない」

 それからオークが死んだのを確認して、収納する。オークもゴブリン並に繁殖するから、気をつけないといけないのだが、ここら辺にいる個体はどうやら数が足りていないらしい。

 纏めあげる個体がいないのか、バラバラに森の中を獲物を探し彷徨っている。ケンはこれ幸いと、次々に倒しては収納していく。

「もう少しでキラーアントの巣だな。巣には手を出すなって言われたけど、アリの巣コロリのアント版とか売ってないのかな? 売ってたら楽に駆除できたのに」

 そんなありえないことを思いつつも、目的の洞窟へとやってきた。好奇心は猫を殺すと言われているが、アントの巣がどうなっているのかが気になり、好奇心を抑えきれなかった。

 遠目から見る限り兵隊アリ(?)みたいなのと、門番アリ(?)みたいなものが入口で屯していて、他のアントは餌を探しているか、洞窟の中で働いてるみたいであった。

「ゴブリンみたいにメイジとかいないだろうから、普通に魔法を使っていくかな。とりあえずは入口で屯している奴らから」

 範囲指定した《酸素消失》を入口に放つ。

「そういえば、昆虫って確か肺とかないよな。これ効くのかな? 生きている以上、酸素は必要としてるはずだから、問題ないとは思うけど」

 入口の観察を続けていたら、アントたちはひっくり返って、脚をピクピクさせていた。

「良かった……やっぱり酸素は必要なんだな。効かなかったらどうしようかと思った」

 周辺に他のアントがいないことを確認したら、入口に近づいていき【マップ】を使って、洞窟の中の見取り図を確認する。

「うわぁ……これまんまアリの巣じゃん。“洞窟に住みついた”を通り越して、地中にコロニー形成してるじゃん! これ駆除するのが面倒くさいな。さすがにこの範囲は広すぎて、《酸素消失》じゃ無理だし部屋数が多過ぎる」

 早くも行き詰まったアントの巣の駆除。【並列思考】のおかげで色々と考えることが出来るようになり、最適な駆除方法を導き出すために試行錯誤を繰り返す。

「1番簡単なのは、洞窟を押し潰すことだけど、それだと地中の中までは潰れないし、素材が手に入らない上に、別のところに出入り口を作りそうだな。火を放つのも素材がダメになる……何でこんなになるまで放っといたんだよ。かなり面倒くさいじゃないか!! 何かいい方法……」

 そもそも森の奥深くまで冒険者が来ないことを知らず、八つ当たり気味に愚痴るが、さらに言えば、巣の駆除はBランククエストなので、Dランクのケンが愚痴るのはお門違いというものである。

 しなくてもいい駆除作業の原因は、好奇心でこの場にやってきた、自身の責任であることなど既に頭の中にはない。

 無論、放置して帰る手もあるが、端からその考えには至っていないようである。

 ケンは手持ちの魔法で、使えそうなものがないか思考を巡らせるが、そもそもこの世界の魔法自体知らなかった。

「ダメだ……こんなところで記憶がないことへの弊害が出るとは。何となくで使ってた《エアカッター》は、もしかして創造で作られたやつなのか? そうなってくると、いちから魔法を覚えていくより、自分で作っていった方が早い気がするな」

 ケンはそれを踏まえた上で、今回の駆除に適した魔法を模索する。そして1つの仮説を立てる。

 窒息させるのは、何も風を操ることだけではない。そう、水で溺れさせても窒息するはずだと。

「よし、水魔法で攻めよう。問題はどんな魔法にするかだが……チョロチョロ流してたんじゃ、中から敵が一気に押し寄せてくるよな……想像するだけでも寒イボが立つんだが……一気に水で満たすような感じで、かつ被害最小限に水を送り込む……」

 ケンは、粗方のイメージが出来上がったら、魔法を構築していった。

「《河川の氾濫リバーズフラッド》」

 ケンが魔法を唱えると、入口に向かって大きな魔法陣が浮かびあがり、その空中に浮かぶ魔法陣から一気に水が注ぎ込まれる。

 その勢いはまるで大滝のごとく、もし飲み込まれたなら、確実に脱出不可能な水流を生み出していた。

 イメージとしては物理法則を無視して、滝を横向きにした状態を眺めている感じだ。

(ゴオォォォォ……)

(中のモンスターが、溢れてこないようにイメージしたのだが、これはちょっと……)

 魔法を放った張本人が若干引きつつも、水がどんどん注ぎ込まれていく。魔法を解除しない限り止まらないようで、その水量は留まるところを知らない。

「とりあえず、【マップ】で確認しながら待つとするか」

 流れ込んだ水は物理法則に従い、コロニーの下層から溜まっていき、次第に中層、上層へと溜まっていく。

 上層に留まっていたアントたちは下層へと流されるか、部屋の中で水埋めになるかのどちらかだった。

 地上の洞窟内部はコロニーに入るまでの通路にされており、その階層に部屋はなく、わざわざ中に入る必要もなさそうだ。

 もし部屋があったら水攻めが使えず、中に入って《酸素消失》で倒して回らなければいけないところだった。

「そろそろ洞窟内に溢れそうだな。一旦止めて様子を見るか」

 河川の氾濫リバーズフラッドを解除して、ようやく注水が終わると、辺りは静かになった。

「滝っぽい轟音が鳴り響いてたし、魔物が近づくかもしれないから、警戒を怠らないようにしないとな。外に出てた働きアントが戻ってくるだろうし」

 ケンは【マップ】スキルの画面を二分割し、コロニーと周辺地図に切り替えた。

 何となく出来ないかなぁと思って、やってみたことが出来てしまったので、深くは考えずにラッキーと思うだけに留めた。

 予想は的中し、外に出ていたアントたちが戻ってきたので、片手間で倒していく。

 他の魔物は、ここがアントの巣だと認識しているのか、近づこうともしなかった。

「コロニー内は終わりだな。生存しているのは……ん? 何だこれ? 下層に生体反応が残っているな。えぇっと……アントの卵? 気持ちわるっ!! 後は……アントの蛹? どっちも外殻に覆われていて守られているのか。生きてる以上、収納は出来ないし……放っておいてもいいんだろうけど、地中にコロニーがある以上、水もいつかは吸収されて無くなるだろうし。どうしたもんか……」

 しばし物思いに耽けりながら、思考を巡らせていくと1つの解答を導き出した。

(凍結させてみて、死んだかどうか判定させてみるか。さすがに直接倒しに行きたくないし)

「まずは、死んだアントの回収をして、仕方ないからコロニーの入口まで行こう」

 ケンは洞窟内へと足を踏み入れ、コロニー入口へと近付いていく。

(ピチャン……ピチャン……)

「やっぱり中は水浸しだな。滑らないように気をつけるか」

 目的の場所へと辿り着くと、しゃがんで様子を見る。入口のすぐ傍まで水で埋もれており、中々に壮観な見た目で思わず溜息をつく程であった。

(これがアントの巣じゃなかったら、洞窟内の水場として感慨深いんだろうけど)

 いつまでも惚けているわけにもいかないので、ケンは水溜まりに手をかざして魔法を唱える。

氷結変転フリージングチェンジ

 見る見るうちに、水溜まりは冷気を発して氷結していく。余波を受けたのだろうか? 周りの水分をも凍りつかせていった。

 コロニーが次第に凍りつくその様子を、【マップ】で追いながら下層まで到達するのを待つことにした。

「寒っ!!」

 気温が下がり寒さに耐えながらも、【マップ】上の氷を示している部分が、最下層まで到達するのを確認すると、とりあえず急いで外に出ることにした。

 やがて外に出ると、太陽の光を浴びながら一息つく。

「はぁ……ぽかぽかして暖かい……」

 ケンは、寒くて体温の下がった体を、暫く温めてから作業を再開する事にしたのだった。

「よし、卵と蛹も死亡判定になったな。回収し終わったら帰ろう」

 ケンは洞窟を魔法で押し潰して、とりあえず再利用できないように処置を施した。

 地中のコロニーまでは面倒が見切れないと、放置することに決めたのだった。

 何だかんだで時間を掛けたせいか、辺りは夕方に差し掛かろうとしていたので、ギルドへの報告のため帰路につく。

「今からだとギルドに着くのは夕方頃かな? そういえば、時計を持ってないから時間が分からないな。【マップ】の機能に追加しとくか」

 ケンは【創造】に関しては手馴れたもんで、【マップ】にぱぱっと時計機能を付け加えると時刻が表示された。

「今は3時過ぎか。合わす間もなく勝手に時間が表示されてるけど、電波時計なの? それともそういうもんか?」

 異世界に電波塔があるわけもなく、電波時計の案は捨ててそういうもんだと納得するのだった。

 時刻が5時に差し迫ろうかとしたときに、漸くギルドに辿り着いて、今日は朝から夕方まで、よく働いたものだと感慨に耽けり、中へと入っていくのだった。
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