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裏切り、そして……
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侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョジョ7世と婚約をした。その事を親友で幼馴染だったマルタに報告をする事にした。マルタは一番の友達。マルタならきっと喜んでくれる。
アントニーナはマルタの部屋をノックした。
「はい」
マルタのアルトのハスキーボイスが部屋の中からした。
「マルタ、いい?」
アントニーナはマルタの部屋のドアを開けた。
キィという音を立ててドアは開いた。
桃色の髪をポニーテールに縛り、周りにリボンをあしらっている。ルビー色の目に大ぶりのピアス。
「アントニーナじゃない。どうしたの? 急に」
アントニーナは上機嫌だった。
「実はね。王太子殿下と婚約指したの」
とサファイアの婚約指輪を見せた。
「あら~。おめでとう!」
そう言ってアントニーナの手を取り、飛び跳ねて喜んだ。
「マルタ、ありがとう」
「アントニーナに先越されちゃったけど、でも、我が事のように嬉しいわ」
と言ってきつく抱きしめてくれた。
やはり、幼馴染みの親友だ。やはりマルタは喜んでくれた。
しかし
喜びはそう長続きしなかた。
ある王室主催の晩餐会だった。
「あ、マルタ!」
マルタがピンクの蛍光色のドレスに身を包んでいた。
「ふふふっ」
どこか嬉しそうだ。
左手の薬指に指輪が嵌められている。
「いいお話があるの」
「いいお話?」
何か秘密めかしているようだ。
「私もね、婚約者を紹介したくて。ちょっとそこの客間に来てもらえないかしら?」
マルタの婚約者とは? アントニーナは気になって仕方なかった。
客間に連れて行かれる事小一時間。
「王太子殿下ーーー!」
え!?
アントニーナは我が目を疑った。
ーー嘘。嘘よ
「実はね、私は王太子殿下と婚約したの」
「ね、ちょっと待ってよ! 王太子殿下もマルタも。ね? これ、どういう事なの?」
アントニーナは居ても立ってもいられなくなった。
金髪をカールして、赤い服を着た王太子ことジョルジョ7世。
「これは俺が説明する。アントニーナ・ミルラ・ミネルヴィーノ。きみとは婚約は今ここにて破棄させて頂く! これは私が将来の王妃に誰が相応しいかよく吟味しての上の決断だ。きみは侯爵であるのに対し、マルタは公爵だ。その辺の身分差も考えた方がいい」
王太子は無表情で言葉を発してくる。
「マルタ、どういう事なの?」
「マルタ、きみは黙っていなさい! とにかく、婚約破棄は破棄だ。俺の事は諦めてくれたまえ」
諦めろ、と言われてもにわかには受け入れられない。
「王太子殿下。私とマルタは初等教育の時からの幼馴染みで親友です。どうしてなんですか?」
「あのね、アントニーナ。王太子殿下とあなたが既に婚約していた事は知っていた。でも、将来の王妃候補に王太子殿下は私を選んでくれたの。あなたより私が良い、と。それにあなたみたいに魔法も中途半端、運動神経の鈍い人を王妃になんてしたら大変よ」
運動神経が鈍い事は言わない約束だった。
「いいこと? 私は王太子殿下に選ばれたのよ。アントニーナ。元親友としてあなたとの縁を切らせてもらうわ」
そんな……。
「マルタ。私が王太子殿下と婚約が決まった時、あんなに喜んでくれたじゃない」
涙がとめどなく溢れてくる。
「あの時はあの時よ。気持ちなんかいくらでも変わるわ」
「とにもかくにも、友情に軋轢を生んだ事は申し訳ないとは思う。しかし、時期王妃に相応しいのは紛れもなくマルタなのだ。それに、今回の晩餐会はマルタと俺の婚約を発表する晩餐会なのだ」
王太子は相変わらず無表情だ。
「いいです、もう。二人で仲良くして下さい。お幸せに。そして、これ、お返しします」
と言って婚約指輪をテーブルの上に乗せた。
「忌まわしい。こんなもの」
王太子が指輪を手に取り、踏みつけた。何という乱暴な態度。見切りをつけた方が良い。
初等教育の頃よりこの14年間親友だったマルタ。運動神経が鈍く、マラソン大会毎年ビリ。かけっこがとにかく苦手だった。そのため、運動オンチとクラスでいじめに遭っていた。
それに対してマルタは運動神経が抜群だった。アントニーナとは正反対だったのに、アントニーナの味方をしてくれた。アントニーナに味方したゆえにクラスのいじめの標的にもなった。それにもめげずにマルタはアントニーナと仲良くしてくれた。
唯一無二の親友だった。
王太子ともまた幼馴染みであった。王太子もいじめから守ってくれた。王太子は男子からのいじめから守ってくれた。
しかし、王太子とマルタが婚約した事により、王太子からは婚約破棄をされ、マルタからは縁を切られた。
そんな理不尽な事が許される世の中。
「さようなら」
と言い残し、部屋を出た。
外ではしんしんと雪が降り積もっている。
今冬は寒冬の予報だった。
長い冬になりそうだ。
アントニーナはマルタの部屋をノックした。
「はい」
マルタのアルトのハスキーボイスが部屋の中からした。
「マルタ、いい?」
アントニーナはマルタの部屋のドアを開けた。
キィという音を立ててドアは開いた。
桃色の髪をポニーテールに縛り、周りにリボンをあしらっている。ルビー色の目に大ぶりのピアス。
「アントニーナじゃない。どうしたの? 急に」
アントニーナは上機嫌だった。
「実はね。王太子殿下と婚約指したの」
とサファイアの婚約指輪を見せた。
「あら~。おめでとう!」
そう言ってアントニーナの手を取り、飛び跳ねて喜んだ。
「マルタ、ありがとう」
「アントニーナに先越されちゃったけど、でも、我が事のように嬉しいわ」
と言ってきつく抱きしめてくれた。
やはり、幼馴染みの親友だ。やはりマルタは喜んでくれた。
しかし
喜びはそう長続きしなかた。
ある王室主催の晩餐会だった。
「あ、マルタ!」
マルタがピンクの蛍光色のドレスに身を包んでいた。
「ふふふっ」
どこか嬉しそうだ。
左手の薬指に指輪が嵌められている。
「いいお話があるの」
「いいお話?」
何か秘密めかしているようだ。
「私もね、婚約者を紹介したくて。ちょっとそこの客間に来てもらえないかしら?」
マルタの婚約者とは? アントニーナは気になって仕方なかった。
客間に連れて行かれる事小一時間。
「王太子殿下ーーー!」
え!?
アントニーナは我が目を疑った。
ーー嘘。嘘よ
「実はね、私は王太子殿下と婚約したの」
「ね、ちょっと待ってよ! 王太子殿下もマルタも。ね? これ、どういう事なの?」
アントニーナは居ても立ってもいられなくなった。
金髪をカールして、赤い服を着た王太子ことジョルジョ7世。
「これは俺が説明する。アントニーナ・ミルラ・ミネルヴィーノ。きみとは婚約は今ここにて破棄させて頂く! これは私が将来の王妃に誰が相応しいかよく吟味しての上の決断だ。きみは侯爵であるのに対し、マルタは公爵だ。その辺の身分差も考えた方がいい」
王太子は無表情で言葉を発してくる。
「マルタ、どういう事なの?」
「マルタ、きみは黙っていなさい! とにかく、婚約破棄は破棄だ。俺の事は諦めてくれたまえ」
諦めろ、と言われてもにわかには受け入れられない。
「王太子殿下。私とマルタは初等教育の時からの幼馴染みで親友です。どうしてなんですか?」
「あのね、アントニーナ。王太子殿下とあなたが既に婚約していた事は知っていた。でも、将来の王妃候補に王太子殿下は私を選んでくれたの。あなたより私が良い、と。それにあなたみたいに魔法も中途半端、運動神経の鈍い人を王妃になんてしたら大変よ」
運動神経が鈍い事は言わない約束だった。
「いいこと? 私は王太子殿下に選ばれたのよ。アントニーナ。元親友としてあなたとの縁を切らせてもらうわ」
そんな……。
「マルタ。私が王太子殿下と婚約が決まった時、あんなに喜んでくれたじゃない」
涙がとめどなく溢れてくる。
「あの時はあの時よ。気持ちなんかいくらでも変わるわ」
「とにもかくにも、友情に軋轢を生んだ事は申し訳ないとは思う。しかし、時期王妃に相応しいのは紛れもなくマルタなのだ。それに、今回の晩餐会はマルタと俺の婚約を発表する晩餐会なのだ」
王太子は相変わらず無表情だ。
「いいです、もう。二人で仲良くして下さい。お幸せに。そして、これ、お返しします」
と言って婚約指輪をテーブルの上に乗せた。
「忌まわしい。こんなもの」
王太子が指輪を手に取り、踏みつけた。何という乱暴な態度。見切りをつけた方が良い。
初等教育の頃よりこの14年間親友だったマルタ。運動神経が鈍く、マラソン大会毎年ビリ。かけっこがとにかく苦手だった。そのため、運動オンチとクラスでいじめに遭っていた。
それに対してマルタは運動神経が抜群だった。アントニーナとは正反対だったのに、アントニーナの味方をしてくれた。アントニーナに味方したゆえにクラスのいじめの標的にもなった。それにもめげずにマルタはアントニーナと仲良くしてくれた。
唯一無二の親友だった。
王太子ともまた幼馴染みであった。王太子もいじめから守ってくれた。王太子は男子からのいじめから守ってくれた。
しかし、王太子とマルタが婚約した事により、王太子からは婚約破棄をされ、マルタからは縁を切られた。
そんな理不尽な事が許される世の中。
「さようなら」
と言い残し、部屋を出た。
外ではしんしんと雪が降り積もっている。
今冬は寒冬の予報だった。
長い冬になりそうだ。
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