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第5話
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家に帰ると、ルイが待っていた。
「ナタリーが王太子殿下と結婚するんだってよ」
私は何事? と思いました。
流石はゲーム『貴族の花嫁』のヒロインのナタリー。
見事に王太子殿下を射止めた。
そしてやはり私は悪役令嬢。
「結婚式の日取りは決まっているの?」
「まだ決まっていないみたいだよ」
そうか……。
『貴族の花嫁』はコンスタン王太子殿下と結婚してめでたし、めでたしになっています。
そして、悪役令嬢の姉のクリスティアーノは完全に除け者に。
というか後半はほぼ空気。
仕方がない。
だって脇役だもの。
脇役はヒロインを引き立てるために存在しているわけだけど、やはり、理不尽な役回り。
素直に手放しでナタリーの結婚を祝えるわけがない。
しかし、コンスタン王太子殿下は軟派。
学園の女子や王室に仕える女性にまで口説いてやがる。
そんなコンスタン王太子殿下が果たしてナタリーで満足できるのだろうか?
よく言うよね。
浮気する男はまた浮気するって。
ナタリーも誰かに浮気すされれば良いのに。
そう思いました。
そう。やはり、自分がナタリーに婚約者を奪われたのだから、ナタリーも誰かに浮気されれば良いのよ。
「ねぇ、ルイ。結婚するって本当にするの?」
「するってよ。コンスタン王太子殿下も本気みたいで」
「あの軽い男が本当にナタリーが本命なの? 他にも好きな人いるの?」
私はここで「いる」という言葉を待ちたかったです。
「いや。ナタリーに一途みたいだよ」
悔しい……。
「結婚式はまだ日にちが決まっていない、と言ったわよね?」
「でも、国民の前で結婚を誓ったんだ」
私は目の前が真っ暗になりました。
私の時はまだ国民の前で結婚を誓う段階ではありませんでした。
やはり、コンスタン王太子殿下はナタリーと結婚するつもりなんだ。
私は落胆しました。
私は部屋へ戻り、泣きました。
どうして?
どうして?
私はふとコンスタン王太子殿下からもらった婚約指輪を思い出しました。
捨てずになぜか保管してありました。
机の引き出しを開けた。
そこには眩いばかりのダイヤモンドが輝いていました。
「こんなのくれたけど、裏切り者! 売っぱらってやる!」
私は確固たる決意でいました。
私は家を飛び出し、婚約指輪を売りに行くことにしました。
「お嬢様。どこへ行くのですか?」
執事のハンスが声をかけてきました。
「ちょっと散歩へ」
「しかし、外は危険ですぞ」
確かにゴロツキや与太者がそんじょそこいらウヨウヨいるのはわかっています。
ですが、コンスタン王太子殿下の事を闇に葬りたいから、婚約指輪を売りにいきたい。
「一人にさせて下さい!」
私はハンスにそう言うと勢いよく外に飛び出した。
実はカロリング領地治安があまり良くありません。
追い剥ぎもいるし、スリもいたりします。
かつては通り魔なんかもいました。
やはり、ランダルシア王国1を誇るカジノがあるからでしょう。
と、その時
「きゃあ!」
男の人がぶつかってきたのです。
「お嬢さん。何しているんですか。今のはスリですよ。無防備ですよ」
スリ?
私はバッグの中身を確かめた。
指輪がない!
「すみません! 先程のスリに指輪を盗まれました」
「指輪?」
先程声をあげた中年の女性が
「指輪を盗まれたのかい?」
と言った。
「はい。バッグの中に指輪を入れていました」
さあ、大変!
犯人は急ぎ足で逃げていきました。
「指輪が盗まれたぞ~」
しかし、すぐ先で
「スリを捕まえたぞ」
と男性の声がしました。
「ありがとうございます」
私は深くお辞儀をしました。
「もっと用心深く歩かないと。コイツはスリの常習犯だからな」
スリは逃げようと必死にもがいていた。
「おい、お前。盗んだ物を返しなさい」
「俺、何にも盗んでいないもん」
年齢は私と同じ位。
間違い無く貴族ではない。
「嘘をつくな」
と言って男性はスリの右手を叩いた。
すると、指輪がポロリとこぼれ落ちたのです。
私は指輪を拾った。
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます」
執拗にありがとうございますを繰り返しました。
そして街中を彷徨った。
一人で街中を歩くのは滅多に無い。
街中がどうなっているのか私にはわかりません。
スリにまた遭わないよう、私は用心深くバッグを持った。
すると、看板が見えてきました。
「宝石高価買取」
私はそのお店に向かって足を進めました。
お店は煉瓦づくりでレトロな感じでした。
「お嬢ちゃん。何を売りたいんだい?」
店主は白髪で鬚を伸ばしていた。
「これ……ですが」
私はおもむろに指輪をバッグから取り出した。
すると、店主が目を大きくした。
マンガで言うなら目をまんまるにした感じ。
「これは~!!」
と言って品定めをしました。
「これね、すっごく貴重だよ。うちでは買い取れない」
え!?
一瞬時間が止まった。
しかし、コンスタン王太子殿下との思い出を完全に葬り去りたい私は何としてでも手放したかった。
「安く引き取ってもらっても結構です」
「いやいや。これはお目が高い品だかならねぇ」
「もしかして呪われているんですか?」
私は突飛なことを言ってみせました。
「いやいや、違うんだよ。本当に高価なんだ」
「お願いします。呪われていないなら引き取って下さい。私はこの指輪を手放したいのです」
すると店主は
「お嬢ちゃん、もしかして婚約指輪を売りにきたんだね?」
と言ってきた。
図星!
「はい、そうです」
「よくいるんだよ。婚約破棄になって婚約指輪を売りに来る人が」
やはり……と思ったわ。
皆、結婚には慎重。
エーヴェ教は離婚してはいけない決まりがあるのだから。
「では、100,000ソトでどうかな?」
「はい。ありがとうございます」
かくして婚約指輪は見事に手放す事に成功しました。
「ナタリーが王太子殿下と結婚するんだってよ」
私は何事? と思いました。
流石はゲーム『貴族の花嫁』のヒロインのナタリー。
見事に王太子殿下を射止めた。
そしてやはり私は悪役令嬢。
「結婚式の日取りは決まっているの?」
「まだ決まっていないみたいだよ」
そうか……。
『貴族の花嫁』はコンスタン王太子殿下と結婚してめでたし、めでたしになっています。
そして、悪役令嬢の姉のクリスティアーノは完全に除け者に。
というか後半はほぼ空気。
仕方がない。
だって脇役だもの。
脇役はヒロインを引き立てるために存在しているわけだけど、やはり、理不尽な役回り。
素直に手放しでナタリーの結婚を祝えるわけがない。
しかし、コンスタン王太子殿下は軟派。
学園の女子や王室に仕える女性にまで口説いてやがる。
そんなコンスタン王太子殿下が果たしてナタリーで満足できるのだろうか?
よく言うよね。
浮気する男はまた浮気するって。
ナタリーも誰かに浮気すされれば良いのに。
そう思いました。
そう。やはり、自分がナタリーに婚約者を奪われたのだから、ナタリーも誰かに浮気されれば良いのよ。
「ねぇ、ルイ。結婚するって本当にするの?」
「するってよ。コンスタン王太子殿下も本気みたいで」
「あの軽い男が本当にナタリーが本命なの? 他にも好きな人いるの?」
私はここで「いる」という言葉を待ちたかったです。
「いや。ナタリーに一途みたいだよ」
悔しい……。
「結婚式はまだ日にちが決まっていない、と言ったわよね?」
「でも、国民の前で結婚を誓ったんだ」
私は目の前が真っ暗になりました。
私の時はまだ国民の前で結婚を誓う段階ではありませんでした。
やはり、コンスタン王太子殿下はナタリーと結婚するつもりなんだ。
私は落胆しました。
私は部屋へ戻り、泣きました。
どうして?
どうして?
私はふとコンスタン王太子殿下からもらった婚約指輪を思い出しました。
捨てずになぜか保管してありました。
机の引き出しを開けた。
そこには眩いばかりのダイヤモンドが輝いていました。
「こんなのくれたけど、裏切り者! 売っぱらってやる!」
私は確固たる決意でいました。
私は家を飛び出し、婚約指輪を売りに行くことにしました。
「お嬢様。どこへ行くのですか?」
執事のハンスが声をかけてきました。
「ちょっと散歩へ」
「しかし、外は危険ですぞ」
確かにゴロツキや与太者がそんじょそこいらウヨウヨいるのはわかっています。
ですが、コンスタン王太子殿下の事を闇に葬りたいから、婚約指輪を売りにいきたい。
「一人にさせて下さい!」
私はハンスにそう言うと勢いよく外に飛び出した。
実はカロリング領地治安があまり良くありません。
追い剥ぎもいるし、スリもいたりします。
かつては通り魔なんかもいました。
やはり、ランダルシア王国1を誇るカジノがあるからでしょう。
と、その時
「きゃあ!」
男の人がぶつかってきたのです。
「お嬢さん。何しているんですか。今のはスリですよ。無防備ですよ」
スリ?
私はバッグの中身を確かめた。
指輪がない!
「すみません! 先程のスリに指輪を盗まれました」
「指輪?」
先程声をあげた中年の女性が
「指輪を盗まれたのかい?」
と言った。
「はい。バッグの中に指輪を入れていました」
さあ、大変!
犯人は急ぎ足で逃げていきました。
「指輪が盗まれたぞ~」
しかし、すぐ先で
「スリを捕まえたぞ」
と男性の声がしました。
「ありがとうございます」
私は深くお辞儀をしました。
「もっと用心深く歩かないと。コイツはスリの常習犯だからな」
スリは逃げようと必死にもがいていた。
「おい、お前。盗んだ物を返しなさい」
「俺、何にも盗んでいないもん」
年齢は私と同じ位。
間違い無く貴族ではない。
「嘘をつくな」
と言って男性はスリの右手を叩いた。
すると、指輪がポロリとこぼれ落ちたのです。
私は指輪を拾った。
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます」
執拗にありがとうございますを繰り返しました。
そして街中を彷徨った。
一人で街中を歩くのは滅多に無い。
街中がどうなっているのか私にはわかりません。
スリにまた遭わないよう、私は用心深くバッグを持った。
すると、看板が見えてきました。
「宝石高価買取」
私はそのお店に向かって足を進めました。
お店は煉瓦づくりでレトロな感じでした。
「お嬢ちゃん。何を売りたいんだい?」
店主は白髪で鬚を伸ばしていた。
「これ……ですが」
私はおもむろに指輪をバッグから取り出した。
すると、店主が目を大きくした。
マンガで言うなら目をまんまるにした感じ。
「これは~!!」
と言って品定めをしました。
「これね、すっごく貴重だよ。うちでは買い取れない」
え!?
一瞬時間が止まった。
しかし、コンスタン王太子殿下との思い出を完全に葬り去りたい私は何としてでも手放したかった。
「安く引き取ってもらっても結構です」
「いやいや。これはお目が高い品だかならねぇ」
「もしかして呪われているんですか?」
私は突飛なことを言ってみせました。
「いやいや、違うんだよ。本当に高価なんだ」
「お願いします。呪われていないなら引き取って下さい。私はこの指輪を手放したいのです」
すると店主は
「お嬢ちゃん、もしかして婚約指輪を売りにきたんだね?」
と言ってきた。
図星!
「はい、そうです」
「よくいるんだよ。婚約破棄になって婚約指輪を売りに来る人が」
やはり……と思ったわ。
皆、結婚には慎重。
エーヴェ教は離婚してはいけない決まりがあるのだから。
「では、100,000ソトでどうかな?」
「はい。ありがとうございます」
かくして婚約指輪は見事に手放す事に成功しました。
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