従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari

文字の大きさ
1 / 14

1 婚約破棄

しおりを挟む
私はクライン公爵の次期当主、アルフレッドに呼び出されました。

唐突な話でした。



一体なんのためでしょう?


執務室の近くに来ると声がした。

声はの主はどうやらアルフレッドだけではないようだ。

もう一人誰かいる……。

もう一人の声はどこかで聞き覚えのある声だった。

「!!」

あ、そうだ。従姉妹のルイーズだわ。


しかし、なぜアルフレッドの部屋にルイーズがいるのかしら?

私は怪訝に思いました。


執務室の前に来ると、私はドアをノックしました。

「はい。どうぞ」

と中からアルフレッドのハリのあるバリトンの声がしました。

私はドアノブをそっと回した。


執務室の中にはアルフレッドとルイーズがいました。


「カトリーヌ。話がある」

アルフレッドは手をこまねいてきました。

緑の髪に紫色の瞳。長い髪を後ろで束ねている。


「何の御用でしょうか?」

その横でルイーズが腕を組み、何やら偉そうな格好(ポーズ)をしています。

私は普通でない空気を悟りました。

「俺はこの度きみの従姉妹、ルイーズと婚約することになった」

と言って立ち上がった。

「そうさ。よくよく考えた。俺より背が高い女なんか連れて歩いたら不格好だからな。女は程よいおチビちゃんがいいのさ」

と言ってクスリと笑い私に指を指してきました。

「そうさ。だから。俺はカトリーヌ・ジョアンナ・アルファン! お前との婚約は破棄にする!」

何ですって?

この期に及んで婚約破棄ですって?


「どういう事なのですか? アルフレッド様」

アルフレッドは餌にありついた獣のような顔をしています。

「お前に飽きただけだ」

すると、ルイーズがこちらへ向かってきた。

腰まである長い黒髪。黒い瞳。背が低く、だがしかし背筋はしゃんとしている。

「あんたは男爵でしょ? 私は伯爵なの。あんたが公爵と結婚? 笑わせないでよね。あんたに公爵夫人なんて分不相応だわ。あんたは平民と結婚するのが妥当なとこよ」

「そーれーにー」

ルイーズは髪をかき上げた。

「私は伯爵なの。あんたとは違うわ」

私の心はルイーズに抉られました。

確かに男爵令嬢の大半は平民と結婚する事が多いです。

しかし、それでも私は王立学園にいた時に、アルフレッドに見初められたのです。

そう。私は頭脳明晰だ、と。

私は哲学が得意でした。

哲学に於いては群を抜いて成績優秀でした。

余談ですが、セルジオ王国の第五王子も同級生にいました。



「ふん。同じアトス家の人間の孫とは思えないな」

アルフレッドは鼻の下を擦りながら言った。

「そうよ。アルフレッド様は私を見初めてくれたのよ」

ルイーズはきつい目で私を睨んできました。

「飽きたから……ってすぐには受け入れられないですわ」

しかし、アルフレッドは首を左右に振る。

「ええい! 婚約破棄と言ったら婚約破棄なのだ。潔く認めてくれ」

「事情を……」

アルフレッドはテーブルを勢いよく叩いた。

「いい加減諦めてくれないかね? 俺はもうお前のものじゃない。ルイーズのものなのだ。うゎかったか~!」

と怒鳴りつけるように言うと椅子に座った。

「それと……お前はもう破門だ。公爵家の関係者ではない。実家に帰れ。この話はアルファン男爵家にも伝えてある」

「そして」と言ってアルフレッドは続けた。

「もう用は済んだ。部屋から出てってくれ。それと、俺があげた婚約指輪は売るなり捨てるなりなんなりするといい」

私は理不尽に思いましたが、婚約破棄を受け入れる事にしました。


あの二人にはその内罰が当たるでしょう。

神様は全てお見通しなのだから。


外ではなごり雪が降っていました。

まるで、私の婚約破棄を嘆き悲しむかのように。

そして、冷たいアルフレッドとルイーズの心を投影するかのように、雨は凍り雪となったのでしょう。


私は

「失礼しました」

と言って外に出ました。

およそ品行方正とは思えないなアルフレッドの態度。

よもや、このような事態になるなど想像にもしていなかった。

やはり、男爵令嬢が次期公爵夫人となるのは大変おこがましい話なのでしょう。



とても寒い。

手も凍りつきそう。

吐く息が白く濁る。

廊下に出ると、窓が曇っている。

私は寒い廊下を1人歩いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

醜いと虐げられていた私を本当の家族が迎えに来ました

マチバリ
恋愛
家族とひとりだけ姿が違うことで醜いと虐げられていた女の子が本当の家族に見つけてもらう物語

(完結)無能なふりを強要された公爵令嬢の私、その訳は?(全3話)

青空一夏
恋愛
私は公爵家の長女で幼い頃から優秀だった。けれどもお母様はそんな私をいつも窘めた。 「いいですか? フローレンス。男性より優れたところを見せてはなりませんよ。女性は一歩、いいえ三歩後ろを下がって男性の背中を見て歩きなさい」 ですって!! そんなのこれからの時代にはそぐわないと思う。だから、お母様のおっしゃることは貴族学園では無視していた。そうしたら家柄と才覚を見込まれて王太子妃になることに決まってしまい・・・・・・ これは、男勝りの公爵令嬢が、愚か者と有名な王太子と愛?を育む話です。(多分、あまり甘々ではない) 前編・中編・後編の3話。お話の長さは均一ではありません。異世界のお話で、言葉遣いやところどころ現代的部分あり。コメディー調。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

両親に溺愛されて育った妹の顛末

葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。 オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。 「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」 「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」 「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」 妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

処理中です...